乳汁体細胞数による乳房炎診断の有効性の検討

平井綱雄・尾上貞雄・工藤卓二・米道裕彌・森 清一、恒光 裕・桜井辰壽

新得畜試研究報告 19.11-17(1992)

 乳汁細菌検査との比較における乳汁体細胞数による乳房炎診断の有効性を検討するために,北海道立新得畜産試験場および十勝管内のバルク乳の体細胞数が 50万(個/ml)を超える10牛群の搾乳牛の分房乳を採取し,体細胞数の測定および細菌検査を行った。
主要な乳房炎起因細菌が検出されない分房乳の平均体細胞数は分娩当日90.5万(個/ml)を示し,その後急速に減少して分娩1週間後には10万(個/ml)未満となった。10万(個/ml)未満の状態は分娩40~42週間後まで続いたが,分娩 6~8週間後以降ゆるやかな上昇傾向が認められた。主要な乳房炎起因細菌であるStaphylococcus aureus,Streptococcus dysgalactiae およびStreptococcus uberisが検出された分房乳の平均体細胞数は新得畜産試験場および十勝管内 10牛群ともに20万(個/ml)以上であった。
これに対してCorynebacterium bovis が検出された分房乳および細菌が検出されなかった分房乳の体細胞数はいずれも10万(個/ml)未満であり,90%以上が20万(個/ml)末満であった。以上の結果から,分娩後1週間以内および乾乳前を除いて体細胞数が 20万(個/ml)を超える分房は主要な乳房炎起因細菌に感染している可能性が高いと考えられた。
しかし,体細胞数が 20万(個/ml)未満であっても主要な乳房炎起因細菌が検出される分房乳がかなり存在したことから,体細胞数による乳房炎の診断には限界があると考えられるが,従来の50万(個/ml)から20万(個/ml)に基準値を下げることによって診断の精度を上昇させることが可能となり,乳房炎防除のより一層の進展が期待できると思われる。