ウシ体外受精においてピルビン酸,グルコースおよび乳酸が精子の侵入および受精に及ぼす影響

南橋  昭・森安  悟・陰山 聡一・山本 裕介・伊東 季春

新得畜試研究報告 21.1-7

 ウシ体外受精において受精培地に添加したピルビン酸,グルコースおよび乳酸が精子の侵入,精子頭部の膨化および雄性前核の形成に及ぼす影響を検討した。受精培地にはBRACKETT and OLlPHANTの培養液(BO液)からピルビン験およびグルコースを除き,ヘパリンを加え,ウシ血清アルブミン(BSA)の濃度を変更したもの(mBO液)を用いた。mBO液のみを対照区(mBO区)とし,mBO液にピルピン酸を添加した区(mBO+P区),グルコースを添加した区(mBO+G区),乳酸を添加した区(mBO+L区),ピルビン酸とグルコースを添加した区(mBO+PG区),ピルビン酸と乳酸を添加した区(mBO+PL区),グルコースと乳酸を添加した区(mB0+GL区)およびピルビン酸とグルコースと乳酸を添加した区(mBO+PGL区)の合計8処理の受精培地を作成して体外受精を行った。
 精子の侵入,精子頭部の膨化および雄性前核の形成はいずれの区においても授精後3時間目,5時間目および7時間目に見られた。授精後18時間目の精子侵入率,精子頭部膨化率および雄性前核形成率はmBO区のそれぞれ47.5%,47.5%および45.9%に比べ,mBO+G区,mBO+L区,mBO+PG区,mBO+GL区およびmBO+PGL区でそれぞれ84.6~90.9%.84.6~90.9%および82.3~87.3%と有意(P<0.05)に高く,有意差の見られなかったmBO+P区およびmBo+PL区においてもそれぞれ71.9%と73.0%,71.9%と73.0%および65.6%と73.0%とmBO区よりも高かった。また,mBO区を除いて,単独区と併用区の間には有意差は見られなかった。
 以上から,ヘパリンを含むmBO液を受精培地として用いたときには,受精培地へのピルビン酸,グルコースおよび乳酸の添加の有無にかかわらずウシ精子の受精能獲得誘起および先体反応は授精後3時間以内に起こることが示された。また,受精培地に添加されたピルビン酸,グルコースおよび乳酸はそれぞれ単独でウシ精子の受精能獲得誘起または先体反応を促進させるが,それらを併用しても協力作用のないことが示された。