試験研究は今 No.690「チヂミコンブ養殖試験について」(2011年06月16日)

はじめに

  チヂミコンブの生態やフコイダン含量については「試験研究は今 No.651(チヂミコンブの生態調査について)、No.657(チヂミコンブのフコイダン含量について)」でご紹介しました。その後も調査や分析を続け、チヂミコンブの生態や成分の組成など明らかになってきています。今号では、稚内水産試験場と中央水産試験場で実施した「チヂミコンブ養殖技術開発試験」の中で行った養殖試験の概要と現在行われている養殖試験について少しご紹介したいと思います。

利尻島での養殖試験

  チヂミコンブの養殖試験は利尻島のコンブ養殖施設で行いました。はじめに、コンブの種づくりのために、利尻町仙法志漁港内から天然チヂミコンブを採集しました。実は、利尻島と礼文島ではチヂミコンブの採集例や生育に関する報告はないため、利尻島でチヂミコンブの生育が確認できたことは"小さな発見"でした。採集したチヂミコンブは稚内水産試験場の飼育水槽で養成し、葉状部表面に作られた子嚢斑(「試験研究は今 No.651」の写真参照)から採苗し、種苗を育成しました。チヂミコンブの胞子体が5~10ミリメートルぐらいのサイズになったのを確認して海に沖出しし、その後定期的に養殖チヂミコンブの生長を調べていきました。

  利礼地域で一般的に行われているリシリコンブ養殖と同様に、沖出しして2年目に収穫する「2年養殖」と道南のマコンブ養殖で行われている「促成養殖」の試験を行いました。 

  2年養殖、促成養殖ともに6月には葉長が約180センチメートルまで生長し、どちらも天然のチヂミコンブより大型となりました。 葉状部の湿重量は、6月に採集した2年養殖コンブは約200グラムであったのに対し、促成養殖コンブは約140グラムで、重量は2年養殖の方が高くなりました(図1)。
    • 写真、図1
  また、チヂミコンブに適した養殖条件を明らかにするために、養殖密度や深度を変えて試験を実施しました。その結果、養殖密度は養殖ロープ1メートルあたり約40本で養殖すると収量が最大になると推定されました(図2)。養殖深度は、深度が浅いと生残(1株当たりの本数)が悪い傾向が見られましたが、生長(葉長)は浅いほど良い傾向が見られ、生残と生長を考慮するとチヂミコンブ養殖には深度5~9メートルが適していると考えられました(図3)。
    • 図2
    • 図3

宗谷漁協青年部による促成養殖試験

  現在、宗谷漁協青年部はチヂミコンブの促成養殖試験を行っています。宗谷漁協には利尻島や礼文島のように大規模なコンブ養殖施設がないため、簡易性に優れている「立て縄式」によるチヂミコンブ養殖を試験しています。稚内水産試験場は、平成23年度職員奨励事業(提案部門技術支援型)のなかで、種苗の生産や生育状況の調査を共同で行い、宗谷漁協青年部によるチヂミコンブ促成養殖試験を支援することになりました。 

おわりに

  平成20~22年度に実施した養殖試験の結果、順調に生長することが確認され、チヂミコンブ養殖は可能であることが明らかとなりました。また、チヂミコンブに適した養殖条件も少しずつ分かってきました。今後も、漁業者や漁協の方々と協力して養殖試験行っていき、養殖技術のさらなる改良、発展を目指していきたいと思います。

(稚内水産試験場 合田浩朗)

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