試験研究は今 No.117「日本海側では今年は海草類の育成が良かったのですが、原因は何だったのですか。」(1992年9月11日)

Q&A? 日本海側では今年は海藻類の成育が良かったのですが、原因は何だったのですか。

  本年の日本海側の海藻類の繁茂と水温との関係については、すでに本紙「No.106号」に掲載されておりますが、ここでは、水温以外の関係も含め、この問題にお答えします。

  今年の海藻類の成育について、5月と6月に後志管内島牧村、古平町、余市町において沖だし100メートルまでの調査を行いました。その結果、海藻類の現存量(平均湿重量)は216キログラム/平米でした。この量は、一昨年の同じ時期に比べ1.2から2倍にあたり、海藻類の育成が非常に良かったことを示しています。また、檜山管内大成町の海藻量は、非常に良一く繁茂した昭和59年の1.5倍に達したことも調査の結果明らかになりました。

  海藻類が繁茂しない、すなわち「磯焼け」の原因については以前にも書きましたが、最近の調査で、(1)冬期間の水温、(2)ウニ類の密度が大きく関係していることが明らかになりました。このことについて少し詳しく述べますと、(1)の冬期間の水温の低下は、ウニ類の摂餌活動を押さえることになり、その結果ウニの摂餌量は減少し、海藻類の群落形成に一番重要な、海藻が芽を出す時期に食害を受けにくくなります。また、暖流と寒流の影響を交互に受ける太平洋側とは異なり、本道日本海側は対馬暖流の影響を受けています。このため、海水中の栄養塩類の供給は、秋、冬に気温の低下により対馬暖流の表面海水が冷やされ比重がなるため沈み、一方、深層の栄養豊富な海水の方が水温が高く比重が小さいため浮き上がるという、いわいる鉛直混合に大きく頼っています。そのため冬期間の水温の低下は、海水中の栄養塩類を豊富にすると考えられます。
    • 図
  (2)のウニ類の密度についてですが、ウニ類は、海藻を食べて生活していることはご存じのとおりです。しかし、季節により食べる餌の量は、大きく異なることが明らかになってきました。5月から7月の海藻類の最も多く繁茂している時期に最も多く食べることが知られ、冬期間の水温が下がる時期には、あまり餌をとらないことが明らかになってきました。

  海藻類が群落を形成した後の5月から7月にウニ類が海藻を摂餌しても海藻類も盛んに成長するので、それほど大きな問題にはなりません。しかし、(1)でも触れたように冬期間の海藻が芽吹く時期のウニ類による摂餌は、海藻群落の形成を大きく左右します。ですからウニ類の密度が高ければ、海藻群落の形成は阻害され、「磯焼け」になる可能性がでてきます。

  では、(1)、(2)について、本年と一昨年とを比較するとどうでしょう。

  (1)に関し、中央水産試験場(余市)の観測結果では、本年の冬期間の海水温は、一昨年に比べ平均約1度も低かったことが明らかになりました。また、(2)に関し、海藻類の生育につて調査した地点でのウニ類の現存量は、本年は一昨年に比べ40パーセント減少していることが明らかになりました。

  このように海水温は低く、ウニ類の密度が低くなっているのが本年の海藻群落の形成を支えた原因であると考えています。(中央水試 増殖部 松山 恵二)

トピックス 北海道スケトウダラ研究シンポジウムの開催について

  平成4年9月28日(月曜日)午前9時30分から札幌市のかでる2・7で標記シンポジウムが開催されます。
 
  主催は、道水産部で(事務局:中央水試)、水産海洋学会、北大水産学部、北海道東海大工学部の共催と、系統各連や業界団体などから協賛をいただきました。

  テーマは「北海道周辺海域におけるスケトウダラの資源・生態研究の現状と展望」で、9月29日まで2日間行われます。

  本道の主要魚種の一つであるスケトウダラは、漁業をはじめ水産加工業にとっても重要な資源です。この資源の研究を組織的に行うため、水試の研究者達が「北海道スケトウダラ研究グループ」を発足させてから今年は25周年目にあたります。そこで。この機会にこれまでの研究成果や最新の研究を発表し、今後の研究の方向性を定めることを目的に、今回開催されることとなりました。

  第1日目(28日)は、北大の前田辰昭名誉教授の「スケトウダラ調査研究の歴史と問題点」と題する基調講演や、スケトウダラの生態・資源に関する5つの講演のほか、「これからのスケトウダラ研究に求められるものは!」と題してパネルディスカッションが行われます。

  第2日目(29日)には、太平洋漁業海洋研究所サハリン支所からズヴェリコーワ副所長を招いて、招待講演が行われたあと、北大、水研、水試などの研究者から研究発表が行われ、最後に、研究談話会も行われる予定です。

  なお、一般参加も自由ですので、皆さんの多数の参加をお待ちしています。(中央水試 企画情報室)

ページのトップへ