試験研究は今 No.256「網走湖産ワカサギ漁業の漁況予測」(1996年3月1日)

網走湖産ワカサギ漁業の漁況予測

はじめに

  網走湖では今、湖面に張った氷に穴を開けて行う氷下引き網漁の最盛期です。
網走湖のワカサギは近年、年間200~400トンの漁獲量によって1億~2億円の水揚げがあります。しかし漁獲量、魚体の大きさともに年による変動が大きく、その年の漁況に対する事前予測が求められていました。そこで今年度初めてこれまで畜積してきた資料をもとに、網走湖産ワカサギ漁業に対する漁況予測を行ってみましたので、その概要を紹介します。

網走湖産ワカサギの生活史

  網走湖産ワカサギの多くは満1年目の春に成熟し、網走湖に流入する河川に遡上して産卵します。産卵後、数週間でふ化した仔魚網走湖で成長し、7~8月にそのまま湖に残留するものと海へ下るものとに分かれます。海1こ下ったものの多くは、その年の11~12月には湖に戻ってきます。しかし、中には翌春の産卵期まで海にいるものや、2年目になってから海に下るものなど様々な生活様式があることが知られています。

網走湖におけるワカサギ漁業

   網走湖におけるワカサギ漁業は、秋から翌春にかけて行われています。中でも重要なのは秋期引き網漁~氷下引き網漁です。これらの漁法と漁獲対象となるワカサギによって以下のように分類することができます。

【秋期引き網漁前期】
漁期:9月中旬~秋期遡上(11~12月)
漁法:船引き網漁
対象:当歳(小型魚)湖内残留群、1歳以上(大型魚)湖内残留群

【秋期引き網漁後期】
漁期:秋期遡上~結氷(12~1月)
漁法:船引き網漁
対象:当歳(小型魚)秋期遡上群

【氷下引き網漁】
漁期:結氷~解氷(3月)
漁法:氷下引き網漁
対象:当歳(小型魚)秋期遡上群

  これらを漁獲対象となるワカサギで分けた場合、湖内残留群だけを漁獲対象とする秋期引き網漁前期と、海から遡上してきた群れを対象とする秋期引き網漁後期から氷下引き網漁までの二つに大きく分けることができます。

漁期・漁獲対象ごとの漁況予測方法

【秋期引き網漁前期】
・湖内残留の当歳魚(小型魚):大きさ、漁獲量ともに漁期直前の湖内での引き網調査結果から推定できます。
・海から遡上する当歳魚(大型魚):小型魚と同様に漁期直前の湖内での引き網調査結果から推定できます。

【秋期引き網漁後期~氷下引き網漁】
・海から遡上する当歳魚(小型魚):魚体の大きさは漁期直前に湖内で行う引き網調査の結果から類推できます。遡上個体数は夏期の降海稚魚調査(湖下流に設置した建て網で降海稚魚の入網数を毎日計数)の結果から推定できます。
漁獲量は推定した体重と遡上個体数のかけ算から得ることができます。
・海から遡上する1歳魚以上(大型魚):例年これに該当するものはほとんどいないため、予測の対象からは除きました。

1988~1994年の予測結果と実際の漁況

  以上のようにして求めた予測結果と実際の漁況を比べてみました。図1は魚体の大きさの一例としての秋期引き網漁前期の小型魚の平均体重、図2は秋期引き網漁前期から氷下引き網漁までの全漁獲量のそれぞれ予測値と実際の値です。予測値と実際の値の差が大きい年もありますが、概ね両者は一致しています。ただし、1993年は異常冷夏でワカサギの成長なども例年と大きく異なったため、ここではデータから除きました。
    • 図1
    • 図2

1995年度の予測と実際の漁況

  この方法を用いて、今年度の漁期前(1995年9月上旬)に漁業者対象に漁況予測を発表しました。結果は「秋漁から氷下漁までを通して、魚体は小型魚では例年に比べてかなり大きく、大型漁ではやや大きい、漁獲量は380トン程度が見込め、好漁でしょう。」というものでした。これまでのところ、予測にほぼ沿った漁況で好漁のようです。ただし小型魚の成長は予測したものよりやや悪く、魚体重が軽い分、全体の漁獲量も予想より少なくなる可能性があります。いずれにせよ網走湖産ワカサギに対する漁況予測は今年度初めての試行であり、今後さらに精度をあげるための検討が必要です。(網走水試資源管理部 鳥澤 雅)

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