試験研究は今 No.265「つぶあれこれ-「つぶ通」-への一歩」(1996年5月31日)

つぶあれこれ-「つぶ通」への一歩

1.はじめに

  北海道では大型の巻き貝類をつぶと俗称しています。つぶ類は貝類の仲間で、二枚貝やタコ、イカと同じ軟体動物に属していて、中でもつぶ類は寒流系の冷たい海や水温の低い深海に適応した巻き貝の代表的なグループです。

  つぶ類はエゾボラ類とエゾバイ類の2つの主要なグルーブに分けられます。北海道では50種類以上の多くの種類が食用に利用される身近な食用貝類です。全道的に見られるアヤボラ(けつぶ)はエゾバイ科ではないので今回はつぶとして扱いません。北海道水産現勢では種類を区別しないで、一括してつぶ類として集計されています。つぶ類は平成6年度の北海道の貝類漁業生産のうち数量で2位(11,128t)、金額で3位(30億8,055万2,000円)と高い比重を占めています。漁業形態はつぶ篭、桁網、採貝漁業など多岐にわたります。今回、この馴染み深い北の海の生き物の人目につきにくい生活の一部をご紹介します。

2.つぶの食性

  つぶ類はおもに肉食で、二枚貝類、巻き貝類、ゴカイ類、フジツボ類、ナマコ類を食べます。ヨーロッパ産のセイヨウエゾバイでは、貝殻の口の前端部をアサリのような二枚貝の貝殻の隙間に差し込んで、殻を閉じられないようにしてから口吻を挿入して食べる様子が観察されています。この時、しばしばつぶ自身の貝殻が破損するため、殻口に多数の修復跡が見られます。このような行動は肉食性のつぶ類に共通して見られるようです。

  えら水管の基部に鰓と平行に検嗅器(巻き貝の鼻)が発達し、餌を探すのはもっぱら匂いに頼っているようです。
脚注:口吻=口もと、口さき

3.つぶの生殖と成長

  一般に、巻き貝の場合は、貝殻をみただけでは雌雄の区別がつく種は少ないのですが、つぶに限っては例外で、外観上からオス、メスの見分けがつけられることが特徴的です。

  繁殖期には雄と雌が交尾をし、雌が雄から受け取り、貯蔵した精子によって受精が行われます。

  浅瀬にすむヒメエゾボラの産卵は春から夏にかけての期間で、固く丈夫なクチクラ質の卵嚢(卵の入った袋)を岩石や貝殻のような固い基質に多数産み重ねて、大きな卵嚢塊を作ります。
この丈夫な卵嚢の中で十分大きく育ってから孵出するため、種類によっては孵出するまで1年近い期間を費やすこともあります。

  一部の例外を除いて、卵嚢から出た稚貝は親と同じ形の巻き具として這いまわる生活を始めます。このため、幼生期にプランクトン生活をする貝類と比較して、移動性が低く、海域が異なると分布する種類が大きく変化します。また、同じ種類でも貝殻の形や大きさに著しい変異が見られ、種類の見分けが難しい仲間です。

  北海道のつぶ類の成長はほとんど調べられていません。有珠湾のヒメエゾボラが5年で7cm程度となる報告がありますが、大部分のつぶ類の年齢や寿命について分かっておらず、今後の重要な研究課題です。

4.漁獲されるつぶの種類

  北海道水産現勢では一括してつぶ類として集計されていますが、参考のため、海域ごとに、どんな種類が漁獲されているか、まとめてみました。

1太平洋(津軽海峡から根室海域)
エゾボラ類:ヒメエゾボラ、エゾボラ(マツブ)、エゾボラモドキ、クリイロエゾボラ、アツエゾボラ、ウネエゾボラ
エゾバイ類:オオカラフドバイ(トウダイツブ)、クシロバイ、ウスカワバイ、エゾバイ

2オホーツク海
エゾボラ類:ヒメエゾボラ、エゾボラ(マツブ)、ウネエゾボラ、カラフトエゾボラ、チヂミエゾボラ、ヒレエゾボラ
エゾバイ類:アニワバイ、オオカラフトバイ(トウダイツブ)、ウスカワバイ、ロシアバイ、オサガワバイ、ミヤウテバイ、キヌカツキバイ、ヤワハタバイ

3日本海北部(宗谷海峡一留萌)
エゾバイ類:アニワバイ、ツパイ、ミヤウチバイ
エゾボラ類:ヒメエゾボラ、エゾボラ(マツブ)、アツエゾボラ、カラフトエゾボラ、チヂミエゾボラ
その他:オオモロハバイ

4日本海南部(石狩湾から津軽海峡)
エゾバイ類:アニワバイ、ツパイ、オオエツチュウバイ
エゾボラ類:ヒメエゾボラ、エゾボラ(マツブ)、アツエゾボラ、チヂミエゾボラ

その他:モスソガイ
エゾボラ類とエゾバイ類のうちから、代表的な5種類を写真で示しました。区別の難しい貝なので、貝殻を見て名前がわかればかなりの「つぶ通」です。(網走水試 資源増殖部 桑原 康裕)
    • 写真1
    • 写真2

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