試験研究は今 No.291「北太平洋の海洋科学に関する国際研究機構(PICES)第5回年次総会に出席して」(1997年1月24日)

太平洋の海洋科学に関する国際研究機構(PICES) 第5回年次総会に出席して

はじめに

  1996年10月にカナダのナナイモ市(地図参照)で開催された北太平洋の海洋科学に関する国際研究機構(PICES)の第5回年次総会に出席しました。13日から19日まで、あいにく寒く小雨の降りしきる、バンクーバ島の海辺の小さな街で、研究成果の発表をしたり、海洋科学研究に関する情報交換をしたりと、天候とは逆に熱い毎日を過ごしました。

PICESとは

  PICESは正式にはNorth Pacific Marine Science Organizationという名称で、国家間の国際条約で設立された政府機関です。現在のところ条約締結国は日本のほか、中国、カナダ、米国、韓国およびロシアで、北太平洋海域およびその生物資源に関する海洋科学研究を促進し、かつ調整すること、および同海域における海洋科学研究に関連した情報や資料の収集・交換を促進することなどを目的に1992年3月に正式に発足しました。

  第1回の年次総会は1992年にカナダのビクトリア市で開催されています。各総会研究発表には加盟国以外にも相当数が参加し、全体では200名前後になります。

  今回の総会には日本から外務省、水産庁を初めとする行政府、研究組織として水産庁水産研究所、大学そして水産試験場と、全体で数十名規模になりました。北海道からは中央水産試験場海洋部の八木、田中、中多の3名が北海道-サハリン研究交流で得られた成果を携えて参加しました。

研究発表

  研究発表会場は、生物海洋学、海洋環境、海洋物理と気候、漁業、政府機関などいくつかの分科会会場に分かれ、私たちは16日午前に「海洋物理と気候」部門で「宗谷海峡および周辺海域における冷水帯の季節変動とその科学的、生物的特性」、「1995~1996年に行った宗谷海峡における直接測流結果」、「宗谷海峡に出現する冷水帯の起源」3題の研究成果を発表しました。

  いずれも1995年から北海道-サハリン研究交流の一環として行われている、日韓共同海洋観測(予備調査)で得られた成果で、サハリン海洋漁業研究所から提供されたデータを用いて解析した結果です。

  オホーツク海の研究は、ソ連がロシアに変わるまでは閉ざされた海域で、本格的な研究は開始されたばかりです。北海道とサハリンの共同研究は、まだロシアがソ連だった頃の1989年から始まっており、研究結果は貴重なデータであるばかりでなく、北太平洋を取り巻く各国に先駆けて行ったものでもあり、環太平洋諸
国、とくにアジア諸国にとっては興味深い結果として評価されました。

  たとえば、日本海とくに対馬暖流の研究には日韓で対馬海峡の調査が行われ、対馬暖流の「入り」の部分の研究は行われているのに、「出」の部分は日本だけで津軽海峡を調査していたに過ぎず、日韓共同観測があって初めて宗谷海峡からの「出」が観測されたものです。また、北海道沿岸のオホーツク海の豊かな生産性が日本海からの深層水により支えられているのではないかとの推測は、ロシア、韓国、中国の研究者らには大きな興味を持たれたようです。

おわりに

  6日間にわたった120近い研究発表と30以上のポスター発表も終わり、ナナイモからバンクーバー経由で帰ってきました。総会も終わりに近づいてから吹き荒れた、バンクーバー島では30数年ぶりの大嵐と、帰りの飛行機便を心配する多くの人たち、毎日食べても余りある種類のサンドイッチが思い出です。

  1997年は韓国がホスト国で、第6回年次総会は釜山で開催されるそうです。海洋や資源管理部門で得られた成果は、ぜひこういう機会に世界に向って示していくことが重要だと考えます。 (中央水試海洋部 八木 宏樹)
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