試験研究は今 No.293「津軽暖流の流量を計る」(1997年2月7日)

津軽暖流の流量を測る

1.はじめに

  津軽暖流の流量の変化を的確に把握し、その変動を予測することは、この海域で再生産を行っている生物の資源量変動や回遊魚の移動経路の解明には重要です。

  このような観点で、函館水試では1993年秋から青森県水試と共同で「津軽海峡流量調査」を行っています。今回はこの共同調査で得られた成果の一部を紹介します。

2.対馬暖流と津軽暖流

  対馬暖流は黒潮の一部が九州の対馬海峡から日本海に流入し、本州沿いに北上する流れです。その多くは津軽海峡と宗谷海峡から流出しています。津軽海峡から太平洋に流出する海流は津軽暖流、また、宗谷海峡からオホーツク海に流出するのは宗谷暖流と名を変えます。その後、津軽暖流は三陸沿岸を南下しますが、夏以降は襟裳岬方向へ東進する流れがあります。さらに、その一部は噴火湾へも流入しています。10年ほど前までは、対馬暖流の流量は夏に増加し、冬に減少すると考えられ、津軽暖流の流量もそれと同じような季節変化をしているものと考えられていました。しかし、最近の研究によれば、「水温・塩分の値に基づき青森県西沖と本道桧山西沖の対馬暖流の流量を計算し、それらの差から津軽暖流の流量を算出した結果、その流量は季節的にも経年的にもそれほど顕著な変化はしていない(大西・大谷1997)」ことが分かりました。

3.調査方法

  流量を求めるためには、深度別の流向流速の測定が必要です。このため当水試の金星丸と青森県水試の東奥丸に装備されているADCP(ドップラー式多層測流計)を用いました。この装置は、船底から超音波を海底方向に発信することにより、ある深度毎の流向流速を測定します。また、航行しながらでも潮流することができます。今回の調査では10,50,90メートルの3層の流向流速を測定しました。流量の季節(月曜日)変化や年変化を把握するためには、潮流成分(潮の満ち引きの影響)を取り除いた「1日の平均流量」を求める必要があります。そのための手法として近年開発された「24時間50分4往復調査法(加藤1998)」を採用しました。

  潮流定線は津軽海峡西口の白神岬と権現崎との間に設定しました(図1)。この定線上をADCPで流れを測りながら6時間12分かけて1往復し、これを4回繰り返しました。調査終了後、ADCPにより得られたデータから津軽暖流の1日の平均流量を求めました。

  なお、このあとの文章中で流量の単位としてSv(スベルドラップ)を用いていますが、これは10の6乗m3/秒に等しく、たとえば、.海峡の幅を20,000メートル、平均の深さを50メートルとした場合、その断面を海水が秒速1メートルで通過すれば1Svとなります。
    • 図1

4.調査結果

(1)津軽暖流流量の月変化
  図2に1993年11月から1996年3月までの暖流成分を除去した津軽暖流の流量を示しました。黒丸の横に付けた数字は調査年です。流量がもっとも多かったのは1995年12月の1.7Svでしたが、全体的には夏(9月)に多く春(3月)に少ない傾向を示しました。しかし、その変動の幅は0-5Sv程度と小さく、明確な季節(月曜日)変化は認められませんでした。
(2)水位差と津軽暖流流量との関係
  津軽海峡から流出する津軽暖流は日本海と太平洋の水位差で流れる、つまり太平洋の海面よりも日本海の海面の方が高いために、川が流れるように、日本海から太平洋に流れていると言われています。そこで、日本海側の青森県深浦の水位から太平洋側の函館の水位を引き算して求めた「水位差」と今回ADCPで実測した流量との関係について検討してみました(図3)。図の横軸は深浦と函館の水位差(25時間の平均値)を、縦軸は津軽暖流の流量(潮流成分を除去した値)を示しています。両者の間には明らかな直線関係が認められました。つまり、水位差が分かれば、津軽暖流の流量を推定することが可能といえそうです。今後は、津軽暖流の流量と資源生物の量的な変動との関係で研究をすすめて行く必要があります。 (函館水試 資源管理部 鹿又 一良 資源増殖部 西田 芳則)
    • 図2
    • 図3

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