試験研究は今 No.296「中国黒竜江省チョウザメ繁殖事業」(1997年3月7日)

中国黒龍江省のチョウザメ増殖事業

  北海道と中国黒龍江省との水産技術交流は1985年に始まりました。黒龍江省は海の無い内陸の省で、漁業はすべて内水面で行われています。このため、北海道では水産孵化場が実務の窓口になり、毎年1名の技術者を派遣し、1~3名の研修者を受け入れています。そして、12年の間にサケふ化場2ケ所とニジマス養殖場1カ所の適地調査と建設の指導並びに培養殖技術の指導を行いました。しかし、コイ科魚類の培養殖が中心の黒龍江省から北海道が提供してもらう技術や共同研究のテーマはごく限られてしまいます。

  このような中で1992年にチョウザメの共同研究が合意されましたが、チョウザメの国外持ち出しは中国の中央政府が許可せず、まだ実現していません。ところが最近持ち出しが許可されるようになったそうで、当場が供試魚(卵)の提供を受けて研究に取りかかるのも時間の問題という感じになりました。

  1996年はこのような状況下で、チョウザメの勉強も目的に、私が黒龍江省に派遣されチョウザメのふ化場を見学し、チョウザメ養殖の一端を知ることができましたので、概要を紹介します。

  チョウザメのふ化場は、黒龍江省の北東部の同江市勤得利というところ(ロシアのハバロフスクの140km位上流です)の北のはずれのアムール川畔にあり、正式名称は黒龍江省国営農場総局施氏サメ養殖放流試験站です。国営動得利農場の一部門として設立され、業務開始は1988年です。省内にチョウザメのふ化場はここ1ケ所だけです。

  業務はアムールチョウザメ稚魚の放流と培養殖技術の開発のための試験研究です。正式名称の施氏貯はアムールチョウザメの中国名で、アムール川水系には本種の他にタウリアチョウザメ(中国名は鰉魚です)も生息し、両種とも漁業の対象になっている重要魚種ですが、後者は増殖の対象外です。これは、チョウザメの増殖の歴史が浅く、技術的に未熟な現状でタウリアチョウザメまで手が回らないことと、タウリアチョウザメの成魚は自然界では数年に1回しか産卵せず、熟度の鑑別も非常に難しいため、天然親魚を捕獲、蓄養しても現状では人工採卵は困難であるという二つの理由によるものです。

  現在職員8名と作業員6名が勤務し、収容能力70万粒のふ化室、4万尾の稚魚を収容できる円形FRP水槽10基、2年目の魚を飼育するコンクリート水槽8面、親魚蓄養のための円形タイル張り池2面が屋内にあり、屋外には親魚養成用の面積500平方メートルの素振池が8面あります。ふ化飼育用水はアムール川本流からのボンブアップで、水温は夏22度、冬0度、給餌を見合わせる低水温の期間は年間3ケ月位だそうです。

  人工増殖の過程は次のとおりです。
  5月中旬頃アムール川で親魚を捕獲、1ケ月位蓄養し、6月下旬とさらに2、3週間後の2回、開腹法により70万粒ずつ採卵します。親魚の体重の約15パーセント、体重1キログラムあたり4万粒程度の卵が得られるそうです。受精からふ化までは90~120時間と短いので、ふ化室の収容能力の2倍採卵しても、2回目の採卵時はふ化室は開いていて、卵の収容には全く問題無いそうです。しかし、稚魚の飼育能力が40万尾なので、大半はふ化後10~20日、体長2センチメートル位で放流し、数万尾のみ2ケ月飼育し体重10グラム位で放流するそうです。さらに数千尾は放流せず飼育を続け、餌の開発試験と親魚養成試験に供するそうです。稚魚放流数の累計は360万尾に達したそうですが、これは年平均40万尾ということになり、採卵から放流までの成績はあまり良くないようです。それでも自然産卵に任せるより効率は良いそうですが、稚魚生残率と成長率を向上させる餌の開発が緊急の課題だそうです。他にも課題は多いが天然親魚に頼らない池中での完全養殖技術の開発が最終目標だそうです。

  最後に、チョウザメの長寿は有名ですが、国立黒龍江水研から贈られた「黒龍江省魚類誌」の記載からアムール川のチョウザメの年齢組成を紹介します。(水産艀化場 阿刀田 光昭)
チョウザメの年齢組成(1979年アムール川、黒竜江省魚類誌より)
 アムールチョウザメ(126尾)
年齢 6~ 10~ 15~ 20~ 25~ 30~ 35~ 40~
尾数 5 15 33 30 31 8 3 1
(パーセント) 4.0 11.9 26.2 23.8 24.6 6.3 2.4 0.8
 ダウリアチョウザメ(142尾)
年齢 2~ 5~ 10~ 15~ 20~ 25~ 30~ 35~ 40~ 45~ 50~
尾数 1 10 6 9 27 32 30 19 6 1 1
(パーセント) 0.7 7.0 4.2 6.3 19.0 22.5 21.1 13.4 4.2 0.7 0.7

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