試験研究は今 No.313「網走湖の環境とヤマトシジミの生態について」(1997年7月25日)

網走湖の環境とヤマトシジミの生態について -最近わかってきたこと-

網走湖の環境について

  網走湖は湖(みずうみ)ですが海の近くにあって、海水の影響を受けているため完全な淡水ではなく、ちょっとしょっぱい水(汽水と呼ばれる)でできています。網走湖では、この汽水ということが漁業にとって非常に重要な役割をしているのです。網幸湖の主要な漁業対象種の1つであるヤマトシジミも、汽水でなくては繁殖できません。ここで網走湖の環境に関して、青潮とアオコについて少し触れておきたいと思います。青潮という現象は世間では悪者扱いされがちですが、底層の塩分を表層に供給するという役割を果たしており、網走湖が汽水湖として機能するための重要な役割を担っていると最近では考えられています。単に青潮を悪者にはできないのです。アオコに関しでもかなりの誤解があるようです。もともとアオコは淡水産の植物プランクトンであるため、網走湖の表層の塩分濃度が高い年にはそれほど大規模には発生していないと報告されています。

  現在は、このように複雑な環境の網走湖の中で、バランスを保ちながら高いレベルの漁業生産が行われています。

ヤマトシジミの生態について

1.ヤマトシジミの産卵条件について
  網走湖のヤマトシジミは毎年産卵しているのではなく、塩分濃度や水温が低い年には産卵していないことがわかってきました。水槽での産卵誘発試験によると、ヤマトシジミの産卵に必要な条件は、水温が22.5度では塩分3.4PSU(0.34パーセント)以上、23.5度では塩分2.3PSU(0.23パーセント)以上等であることがわかりました。この水槽実験の結果からの産卵有無の予想と過去の網走湖の環境及び浮遊幼生調査の結果を一覧表にしました(表1)。

表1:水槽実験による産卵有無の予想と過去の網走湖の環境及び浮遊幼生調査の結果
最高水温 塩分
(パーセント)
水槽実験による
産卵予想
浮遊幼生
調査結果
H8 23.3 0.11 × ×
H7 23.6 0.14 × ×
H6 27.9 0.22
H5 18.9 0.14 ×  
H4 21.5 0.32 ×  
H3 24.3 0.29  
H2 27.9 0.30
H1 26.0 0.34
S63 22.7 0.44  
S62 23.3 0.53
S61 23.9 0.62  
S60 24.0 0.00 ×  
S59 20.6 0.62 ×  
S58 22.9 0.50  
S57 26.5 0.19  
S56 21.5 0.04 ×  
S55 22.3 0.12 ×  
S54 23.5 0.08 ×  
S53 28.4 0.08 ×  
S52 24.9 0.08 ×  
2.浮遊幼生の沈着条件
  網走湖ではシルト分の多い底質では稚貝がほとんど見られず、砂地の底質のところには沢山の稚貝が見られます。その境界地点の環境を表2にまとめました。この境界点のシルト分は24パーセントです。稚貝が沈着するためにはシルト分が24パーセント以下であることが必要です。

  表2:浮遊幼生の沈着条件
    上限
底質環境 単位 平均値 95パーセント信頼区間 備考
有機炭素量 パーセント 0.77 ±0.14 乾燥泥当たり
有機炭素量 パーセント 0.12 ±0.02 乾燥泥当たり
有機炭素/窒素比   6.34 ±0.66 乾燥泥当たり
水分含量 パーセント 37.71 ±3.79 乾燥泥当たり
強熱減量 パーセント 3.20 ±0.58 乾燥泥当たり
中位粒径 ファイ 2.49 ±0.24  
第1四分位粒径 ファイ 1.75 ±0.50  
第3四分位粒径 ファイ 3.47 ±0.20  
シルト含量 パーセント 24.04 乾燥泥当たり
3.ヤマトシジミの初期成長について
  今までは網走湖のヤマトシジミは生まれてから1年で約5ミリメートルまで成長するといわれていましたが、どうも実際はそれより遅いことがわかってきました。初期成長の概要を写真(図1)に示しました。この写真を見てもわかるように1年ではとても5ミリメートルまでは成長しません。今まで考えられていたよりも実際の成長は2~3年は遅いであろうと考えています。このことについては現在調査中なので、はっきりした結果については後日機会がありましたら報告したいと思います。
    • 図1

(網走水試 資源増殖部 馬場 勝寿)

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