試験研究は今 No.321「海底のケガニを見る」(1997年10月17日)

底のケガニを見る -ROVによる資源調査は可能か?-

はじめに

生物を研究する者にとって、自然の状態での生物を観察することは基本です。ところが、海洋の生物となるとその自然の生態を垣間見ることさえ一筋縄ではいきません。

  今は亡きクストーがアクアラングを発明して依頼、かなりの海洋生物を自然状態で観察できるようになりましたが、これは人間自らが海に潜るのですから限界があります。そこで登場するのが、今回ご紹介するROVです。

  では、ROVとは何なのでしょう?

  ROVとは聞き慣れない言葉だと思います。これはRemotely Operated Vehicleの略です。日本語にすると有索無人潜水機となります。簡単にいいますと、写真撮影装置や各種海洋センサを搭載し、船からケーブルを通じて操作できる無人の海中作業機器のことです。つまり、テレビカメラが付いていてリモコンで海の中を動くことのできるロボットだと思ってください。実際は、図1のようなものです。現在では、魚礁の調査などに良く活用されています。
    • 図1

ケガニが見えた!

  さて、私はもうかれこれ10年くらいケガニの研究にたずさわって来ましたが、実際に海底のケガニを見る機会はめったにありませんでした。幸運にも今年の7月、稚内水試の調査船.「北洋丸」でROVによるケガニ調査を行う機会があり、オホーツク海のケガニを観察し、映像として記録することができました。

  ケガニが観察されたのは、雄武沖の水深82メートル地点でした。岩盤に砂がかぶったような海底のくぼみに多数のケガニが見られました(図2)。ここの海底は流れが遠く、流れに逆らってROVを静止させることは困難で、ケガ二の行動をゆっくり観察することはできませんでした。しかし、ROVをうまく流れに乗せるだけでも十分に海洋生物の種類や海底の様子を見ることができることがわかりました。今後、これらの知見をこれからの研究に生かしたいと思います。
    • 図2

ROVによるケガニ資源調査は可能か?

  今回の北洋丸での調査から、海底の流れが遅い場合、ケガニの生態を観察するのは難しいにしても、数をかぞえるのは十分可能なことがわかりました。ケガニの密度などを調査するには、どのように調査点を設定するか?、つまり、いかにROVを走らせるかという問題などをクリアすれば何とかなりそうです。直接海底のケガニをかぞえるのですから、これほど確実で説得力のある方法は他にないでしょう。あとは、映像のケガニの大きさまでわかれぱ言うことないのですが、そのためにはもうひと工夫する必要がありそうです。

おわりに

良い事ずくめのようなROVですが、実は欠点もたくさんあります。
1.操縦に熟練を要する。
2.本体の他にも多くの陸上機器が必要で機動性が低い。
3.ケーブルが機動性のネックになる。
4.運用に多くの人員が必要。
実際、北洋丸の優秀なスタッフなしでは調査は成り立たなかったことでしょう。まだまだ改良の余地があるROVですが、これからの新しい調査の戦力として活躍する日はそう遠くない気がします。特に、海洋生物を研究する者にとってこれほど魅力的な機器はありません。

(網走水試 資源管理部 佐々木 潤)

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