試験研究は今 No.333「今秋、留萌管内と稚内地区に豊漁をもたらしたニシンについて」(1998年2月6日)

今秋、留萌管内と稚内地区に豊漁をもたらしたニシンについて

  「試験研究は今」NO.307で報告した通り、昨年の春期に北部日本海沿岸でニシンの漁獲量が増加し漁業関係者のみならず多くの人の関心を呼びました。春期以降、例年通りほぼ漁獲がなくなりましたが、秋に入り再び漁獲量が増加しました。

  水産試験場と水産技術普及指導所では、現在北海道が進めている「日本海沿岸性ニシン資源増大プロジエクト」の一環として、これら秋期のニシンについて資料を収集しました。資料の詳しい解析作業は、これからになりますが、現在得られている結果からこのニシンの特徴などについて紹介したいと思います。

1.漁況について

  図1にニシン漁業が行われている代表的な組合の11月におけるニシン漁獲量を示しました。これらは全で沿岸漁業による漁獲量ですが、礼文島船泊以外の組合では総て昨年より漁獲量が増加しています。船泊以外の組合における昨年の漁獲量は、1989年の稚内(約57トン)、を除き、ここに掲載した総ての組合で過去1ケ年中最高の漁獲量となる見通しです。

  漁業者からの聞き取り調査ではなく各組合とも秋期には量こそ少ないものの、毎年必ずニシンの来遊があるということでした」が、昨年の様にこの時期にまとまって数トン単位で漁獲されることはめずらしいようです。
    • 図1

2.漁獲されたニシンの特徴

  稚内、苫前で11月中旬に漁獲されたニシンの体長(尾叉長)組成と平均脊椎骨数を図2に示しました稚内の漁獲物の尾叉長組成は、26センチメートルをモードにして25~27センチメートルが大部分の単峰形でした。苫前の漁獲物では26センチメートルにモードがあり、26センチメートル前後に1つの山を持つ点では稚内と同じですが、23センチメートル前後にも山がある双峰形をしており、稚内に比べて小型の魚も獲られていました。また、魚体の生殖巣を観察したところ、総ての個体が今年の春に産卵すると推察されました。

  系統群判別の材料となる脊椎骨数と鱗相を調べました。軟X線撮影による脊椎骨数の調査結果では、稚内、苫前とも平均脊椎骨数が54.2でした。また、今回得られたニシンの鱗を見たところ、稚内、苫前双方ともほとんどの個体の輪相が不鮮明でした。
    • 図2

3.系統群について

  留萌管内および稚内沿岸におけるニシンの系統群構造に関する知見は少なく、特に産卵期である春期以外の系統構造や分布・移動に関する知見は非常に少ないのが現状です。

  今回得られた結果をみると、鱗相が不鮮明であるとともに平均脊椎骨数が従来知られているニシン集団の中間的な値を示していました。これらのことから今回得られたニシンはテルペニア系や北海道サハリン系ではなく、昨年の春に漁獲された石狩湾系統群および稚内坂の下から報告された群に近いのではないかと推定されます。ちなみに一昨年の秋期に船泊で多獲されたニシンはテルペニア系であったと考えられています。

  また、年齢査定はまだ行ってませんが、昨年の春に得られた標本の多くがモード23、24センチメートル台であり、秋の標本は26センチメートル台にモ一ドを持っていました。こうした春から秋への体長モードの連

  続性から、今回のニシンは春期と同一の年級群が成長したものではないかと考えられます。

  現在、水試では産卵期以外のニシンについても脩報を集めています。港などの釣りによる情報も重要と考えていますので、情報をお持ちの方はお知らせ下さい。

(稚内水試資源管理部  田中 伸幸)

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