試験研究は今 No.365「幻のマツカワと遊漁」(1998年11月20日)

幻(?)のマツニカワ

  3年ほど前から、噴火湾や日高・十勝の太平洋沿岸で、マツガワが釣れたという精報がよく水産試験場や水産技術普及指導所に寄せられるようになりました。

  今年になってからも、何度かスポーツ新聞の釣り場情報、釣り新聞、雑誌等で「幻のタカノハ.(マツカウ)出現」という記事が紙面を賑わしています。

  さらに、今年7月5日には、STVテレビの釣り番組『約一りんぐ北海道』の中で、昨年11月に八雲沖で標識漂流したマツカワが釣り上げられました。

  テレビの影響は大きいもので、その番組を見たというおじさんが、放映翌日の朝6時に番組で紹介した場所へ早速行って、15センチメートルのマツカワを釣り上げたのを始め、その番組の放映翌日から2週間くらいは試験場へ一般の遊漁者からの電話や標識魚の持ち込みが相次ぎ、忙しい思いをしました。

  これらのマツカワは、裏側(無眼側)に薄い墨を流したような部分があったりマツカワの特徴である鰭の縞模様が不鮮明だったりして、一目で人工種苗であることがわかります。

  天然魚であれば、昭和47年に浦河漁協だけで55トン以上漁獲されていたのが、ここ数年間は、えりも以西太平洋全体でも年に10尾程度しか漁獲されていない状況ですので、「幻のタカノハ」かも知れません。

  しかし、函館水試が担当している噴火湾を含むえりも以西太平洋では、昨年の結果だけでも大小約850尾の放流魚が再捕されていますので、幻とは言えないのが実態です。

  北海道におけるマツカワ種苗放流は1987年から行われ、1993年の約5万尾まで順調に放流数が増えていましたが、1994年に発症したウイルス病により、1994年と1995年は全体で1万尾程度しか放流できませんでした。その後、1996年からは約4万尾の放流となり、今年は約11万尾が全道各地で放流される予定です(図1)。ここ数年の放流数の伸びが最近のマツカワ再捕の増加につながっており、新聞・雑誌等におけるマツカワの出現もその現れだと考えています。
    • 図1

マツカワ放流魚と遊漁

  それでは、どれくらい遊漁によって放流したマツカワが釣られているのでしょうか?。まだまだ、実態というのは把握しきれていませんが、昨年噴火湾の胆振海域で再捕されたマツカワの漁法別の内訳を調べてみました。〈図2)
    • 図2
  そうすると、なんと41パーセントが遊漁によることがわかりました。しかも、遊漁によって釣られるのは全長台30センチメートル未満のものがほとんどで、全長20センチメートルに満たないものが約5割もありました。(図3)
    • 図3
  釣人によっては、小型魚はリリースし、標識だけを届けてくれる場合もありますが、私たちのPR不足で「針を飲んだので海へ捨ててきた。」とか、「珍しいから、ちょっと少さくても食べてしまった。」というのも少なくありません。

  噴火湾地域では、漁協と市・町で漁業振興にかかる協議会を構成しており、その協議会の自主規制として、全長30cm未満のマツカワが獲れた場合は再放流することにしており、漁業者による漁獲の半分以上は全長30センチメートル以上で、20センチメートル未満の小型魚は2パーセント程度にすぎません。

  しかし、このような自主規制は遊漁者には適用されていないのが現状です。

  噴火湾の協議会では、ここ数年マツカワの放流事業について、ポスターやチラシでPRを行ってきました。
それが効を奏して再捕報告が多数集まるようになり、噴火湾内で放流したマツカワの移動や成長の状況がわかり、放流の効率も見えてきましたが一方では、遊漁者からの報告も増え、このような遊漁の実態が初めてわかってきたのです。

  遊漁と(栽培を含む)漁業との問題は、他の魚種においても、他県においても出てきており、決しで簡単に解決する問題ではありません。

  これからは、遊漁の実態についてさらに調査するとともに、「てま」・「ひま」・「金」をかけて、種苗生産し、放流しているのですから、せめて小型魚を再放流してくれるよう、遊漁者にPRを行いたいと考えています。

(函館水試資源増殖部 松田 泰平)

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