試験研究は今 No.387「川を直すと魚が増える!?」(1999年6月11日)

川を直すと魚が増える!?

はじめに

  最近、「魚が減った」という話をよく耳にするようになりました。産業発展が最優先だった高度経済成長期以降、人間は開発によって大きく自然を変えてきました。河川改修工事はコンクリートブロックなどで川岸や川底をなめらかに固定し、出水をスムーズに排水するのがねらいです。しかしその反面、河川改修工事によって単調となった流れは多様な生息環境を必要とする魚類の生息空間を著しく狭め、生息数の減少や種の構成が変わったといった事例もあります。改変された環境に順応できない魚類はどんどん減り続けています。河川環境の悪化が大きな社会問題として取り上げられ、漁業者や釣り人などから魚類の生息環境改善に向けた問題が提起されるようになりました。

川とサクラマスのかかわり

  北海道の遡河性魚類(川と海を往復して生活する魚類)として代表的なサケの仲間であるサクラマスは、日本では北海道と本州に分布し、特に本道のサクラマスは雌のすべてと雄の一部が春にスモルト(海洋生活に適応できるよう銀色に変態した幼魚、体長15センチメートルほど)となって海へ降ります。河川生活期はヤマベとして釣り人に、降海後の沿岸回遊期には重要な漁業資源として利用されています。サクラマスは浮上後、生息空間を徐々に河川全体へと広げながら成長し、スモルトになるまでの約1年半を河川で生活しなければなりません。したがって、サケやカラフトマスのように浮上後直ぐに海に降る魚種とは違い、川とのかかわりがとても強い魚種なのです。

  道立水産孵化場と道立林業試験場では共同研究(山地渓流における魚類増殖と河畔林整備に関する研究、平成6~9年度)の一環として、小樽土木現業所の協力を得て、積丹川の既存護岸部にサクラマスの生息空間を考慮した改良区を施工しました。今回は施工したサクラマス生息空間の効果について紹介します。

改良工事について

  1996年7月から8月にかけて北海道西部に位置する積丹川本流の一部に改良区(流路延長約200・)を設けました(図-1)。施工区間は1969年から1975年にかけて開発局の河川改修工事によって川岸や川底は護岸されていました。改良工事では既設のコンクリートブロックを剥がし、礫を投入することでより自然に近い河床環境に変更したほか、木製工作物(ログダム)やワンド(写真-1)の設置などにより流況にも変化をつけました。さらに、ヤナギ類などの木本を移植して河畔林も整備しました。
    • 図1
    • 写真1
    • 写真

効果はあったのか?

  1999年6月に0+(当歳魚)と1+(1年魚)以上のサクラマス幼魚を採捕し、その現存量を図-2に示しました。最も現存量が高かった区間はいずれも改良区に出現しました。総じて、0+及び1+以上の現存量は改良区で高く護岸区で低い傾向にあり、特に100~140・区間の護岸区では、調査期間中の現存量が他の区間より著しく低いことなどが分かりました。各区間で採捕した0+及び1+以上の平均体重には差がなかったことから、生息空間造成を図った改良工事はサクラマスの生息個体数を増加させることで現存量を向上させ、改良区は護岸区よりサクラマスにとっての至適空間を提供していると考えられました。
    • 図2

おわりに

  河川改修工事によって単調な流路に改変された区間に改良工事を施すことによって河川構造を変化させることができました。そして、その結果サクラマスの定着を促進させ、高い現存量を維持したと考えられました。今後は水辺の植生が再生されることにより、カバーがもたらす役割についても検討を加え、よりよい河川環境造成の一助としたいと思います。

(水産孵化場資源管理部 大森 始)

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