試験研究は今 No.395「サケ・マス精子の凍結保存」(1999年8月27日)

サケ・マス精子の凍結保存

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  魚類の精液の凍結保存は1949年にニシンの精液の保存に成功して以来、多くの研究者によって試みられていますが、サケ・マス類では1970年代後半から凍結保存が試みられ、現在では比較的簡便な方法で良好な成績が示されています。一般的な方法は耐凍剤を含む希釈液で精液を希釈した後、小孔を開けたドライアイス上に分注器を用い50~200マイクロリットルの精液を落として精液の凍結錠剤を作るペレット法です。

精子保存の液体窒素容器と精液のペレット

  このようにして作成したペレットを液体窒素中で保存し、必要に応じて解凍受精を行い発生卵を得るのですが、サケ・マス類では液体窒素中でどのくらいの保存が可能なのか詳細なデータはありません。また、最近は高性能のディープフリーザーも開発され、これらの機器が液体窒素の代替えとなりうるのか否か試験を行いました。用いた機器は-20度、-40度、-80度、-150度のフリーザーと液体窒素です。

  1994年の秋に北海道の河川に回帰した雄サケ3個体から個別に精液を採取し、300mMグルコースに10パーセントDMSOを添加した希釈液を用いて希釈倍率6倍で精液を希釈し、ドライアイス上で100マイクロリットルのペレットを作成し液体窒素中に投入しました。その後、各温度のフリーザーへ移し、一定期間ごとにペレットを取り出して2粒を5シーシーの120mM炭酸水素ナトリウム溶液で解凍し、40グラムの卵に対して受精を行い、その経時変化を観察しました。ペレット作成時と同量の希釈液で混合、同量の解凍液を加えて行った未凍結精子の受精では90パーセント以上の発眼率を示しましたが、凍結直後に受精を行った場合は、発眼率は60パーセント程度と減少しました。

  -20度、-40度のフリーザーで保存したペレットは保存23日後には発眼卵が得られない状態でしたが、-80度、-150度、液体窒素で保存した精子は凍結直後と変わらない発眼率を示しました。-80度で保存した精子は約1年後の344日の受精でも変わらない発眼率を示したが、2年目の701日、766日目では発眼率を低下させました。

  一方、-150度、液体窒素で保存した精子は4年目でも殆ど凍結直後と変わらない発眼率を示しています。
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  以上のことから、-80度のフリーザーでは1年程度の短期の保存は可能ですが、長期にわたる場合にはそれ以下の温度での保存が必要になることが解りました。4年目の詳細な試験結果からは-150度で保存した精液を用いた場合は液体窒素の場合より若干低い発眼率を示すため、遺伝資源の保存のような観点からは液体窒素による保存が望ましいと考えられます。

(水産孵化場養殖技術部 小出展久)

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