試験研究は今 No.468「キタムラサキウニ肥育用飼料の開発について」(2002年2月22日)

キタムラサキウニ肥育用飼料の開発について

はじめに

  磯焼けは、北海道では主に日本海沿岸にみられる現象ですが、その原因の一つにキタムラサキウニによる食害があげられます。そこで、海藻を繁茂させるため、秋季には産卵終了後のキタムラサキウニを駆除するなどの対策が取られてきました。一方、駆除したキタムラサキウニを有効利用する目的で、すなわちウニが高値で取り引きされる春先に出荷できるようにするために、移植した場所で冬季間に身入りさせる試験が数多く行われてきました。過去の試験では、冬季間に魚肉や大豆タンパクを配合した人工飼料を給餌した場合、飼育したウニの生殖腺は著しい苦みを与えることが知られています。このようなウニを出荷できるようにするためには、春先から数ヶ月間コンブを給餌して、生殖腺の味を調節しなければならないのが現状です。そのため、冬季間に給餌してもウニの生殖腺に苦みを与えず、身入りが良くなる人工飼料の開発が求められています。

  ここでは、中央水産試験場加工利用部が行ってきた試験の中から、キタムラサキウニに冬季間給餌し、生殖腺の歩留りを高めることに加え、苦みを与えない人工飼料の開発について紹介します。

試験方法

  過去の試験では、人工飼料のタンパク源に大豆タンパクを用いてきましたが、著しい苦みを発現するため、代表的な動物性タンパクであるカゼインを用いて飼料を調製し、以下の飼育試験を行いました。
飼育試験1
  2パーセントアルギン酸溶液にタンパク質含量が無水物換算で10パーセントとなるようにカゼインを添加した飼料で、平成9年11月下旬より9週間飼育(水温5.2~12.1度)しました。
飼育試験2
  2パーセントアルギン酸溶液にタンパク質含量が10~25パーセントとなるようにカゼインを添加した飼料(表1)で、平成11年9月下旬から約2ヶ月間飼育(水温11.7~20.9度)しました。
    • 写真1 ウニの飼育環境(左)と摂餌状態(右)
    • 表1 試験飼料の配合割合

結果の概要

飼育試験1
  ウニ生殖腺の遊離アミノ酸組成は、コンブペーストで調製した飼料で飼育した場合に類似し(図1)、味覚的にも苦みの発現は認められませんでした。しかし、飼育期間中の生殖腺歩留りは2.3~3.6パーセントで、高められませんでした。
    • 図1 飼育ウニ生殖腺の遊離アミノ酸組成
飼育試験2
  飼料に添加するカゼインの割合にかかわらず、ウニの生殖腺に苦みが生じませんでした。また、生殖腺歩留りは、飼料のタンパク質含量が高いほど増加しました(図2)。
    • 図2 飼育ウニの生殖腺歩留り
    • 写真2 飼育開始時(左)および終了時(右)における固体別ウニの生殖腺

おわりに

  今回行った試験から、キタムラサキウニの人工飼料による飼育に当たって、生殖腺の苦みを減少させ、歩留りを高めるためには、タンパク源にカゼインを用いてタンパク質含量を20パーセント以上に調整した飼料で、2ヶ月以上飼育することが有効と考えられました。今後は、キタムラサキウニを4、5月の漁獲端境期に出荷するために、本試験結果をもとに生殖腺歩留りを16パーセント(出荷目安値)以上にできる適切な給餌開始時期を把握する必要があります。また、本試験では屋内水槽を使用したため、ここで得た結果を屋外などの施設で応用するためには、実用化に向けた試験が必要です。
(中央水産試験場 加工利用部 菅原 玲)

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