試験研究は今 No.559「道南太平洋シシャモの河川遡上期予測」(2005年12月2日)

道南太平洋シシャモの河川遡上期予測

  今年も胆振・日高管内では10月からシシャモ漁業が行われ、11月中旬で約40日間の漁期が終わりました。近年は秋の風物詩としてシシャモがマスコミ等に取り上げられる機会も増えたためか、輸入品である「カラフトシシャモ」との違いに対する認知度も高まり、北海道のブランド食材としての全国的な地位が確立されつつあります。

  シシャモは世界でも北海道の太平洋沿岸にしか生息しない希少な魚ですから、漁獲量が減ってしまっても輸入等による代替はききません。地域の重要な漁業・観光資源であるシシャモを末永く利用していくためには、漁業による減耗を資源の維持存続に悪影響が及ばないレベルに押さえる必要があるのです。そういった意味では、シシャモには他の魚にも増して資源管理型漁業の推進が必要であると言えるかもしれません。

  函館水産試験場室蘭支場では、鵡川町の鵡川及び門別町の沙流川に遡上する群を対象に、シシャモの河川への遡上時期を予測するための調査を実施しています。

  これは河川への遡上盛期前に漁業を終漁することにより、十分な量の親魚を遡上・産卵させて、次年度以降の資源を確保していこうという考えに基づいた取り組みです。今年度も10~11月に調査を実施しましたので、以下にその概要を紹介します。

調査の内容

  平成17年10月12日から11月11日にかけて、鵡川沖(鵡川遡上群)、門別富浜沖(沙流川遡上群)で漁獲されたシシャモメスの成熟度調査を計9回(16標本)実施しました。鵡川及び沙流川に産卵回帰するシシャモは、メスの卵巣の生殖腺重量指数(GSI=卵巣重量÷体重×100)の平均が25、すなわち卵巣重量が体重の1/4に達したころに河川への遡上を開始することがこれまでの調査からわかっています。

  今年度の調査でも漁獲物のGSI値の変化を経日的に観察し、GSI値が25に達する日を推定することで「遡上開始日」及び「遡上盛期」を予測しました。

遡上日の予測

  図1に11月1日までの平均GSI値の推移と今年度の遡上予測を示しました。10月24日までのGSI値は前年に比べ低い値で推移し、成熟が遅れていることを示していましたが、10月27日ころからGSI値が上昇し、成熟速度が速くなりました。それでも例年に比べると成熟のスピードはかなり遅く、11月に入ってもGSI値が20以下というのはこれまであまりなかったことです。今年の秋は海水温の高い状態が続いていましたが、これがシシャモの成熟にも影響を与えたのかもしれません。

  GSI値が20を超えない段階で遡上予測を出すことに多少不安もありましたが、あまり時間をかけすぎて予測の発表が実際の遡上に間に合わなければ、「資源管理型漁業の推進」という当初の目的を逸してしまいます。

  そこで、GSI値の上昇速度が変化した10月27日~11月1日のデータを用いて計算を行い、河川への遡上開始日は11月9日ころになるのではないかと推定しました。一方、遡上盛期については、過去の調査で遡上開始予測日から数えて2~8日後に河川でのふくべ網の漁獲ピークがみられていることから、11月11日~17日ころと予測しました。

  以上の結果を11月4日付けで管内の関係漁業協同組合に報告し、終漁日設定の際の参考としてもらうよう依頼しました。

  さて、その後の成熟の状況や実際の遡上の様子はどうだったのでしょうか?
    • 図1
      図1 GSI値の変化から予測したシシャモの遡上日開始日及び遡上盛期

遡上日予測後の検証

  図2に遡上予測発表後のデータも加えた今年度の全調査結果を、図3に10月27日以降の漁獲物のGSI値組成の推移を示しました。

  11月1日以降、門別の漁獲物は順調に成熟が進み、11月11日段階で平均GSI値は25を超えていました。もういつ遡上してもおかしくない魚です。一方、鵡川の漁獲物はしばらく成熟が止まった状態でしたが、11月4日以降に再度成熟速度が上昇して、調査最終日の11月10日には約23にまで達していました。11月1日までは鵡川、門別ともGSI値はほぼ同じ傾向で推移していましたが、鵡川の魚の成熟が途中で足踏みした分だけ、最終的には門別の魚の方が成熟が進んだ状態で遡上時期を迎えたようです。

  水産孵化場が鵡川で実施しているふくべ網による遡上親魚捕獲調査の情報によると、メスが初めて漁獲されたのが11月9日で、漁獲のピークは11月15日だったそうです。現在のところ沙流川への遡上に関する情報はありませんが、門別の魚は鵡川よりも成熟が進んでいましたので、鵡川よりは若干早かったかもしれません。全体としてほぼ予測どおりの結果となったようで、取りあえずほっとしました。

  遡上日を的中させること自体がこの調査の第一目標ではありませんが、「資源管理型漁業の推進」という目的と照らせば、予測の精度は高ければ高いほど良いはずです。今後も調査方法やデータの解析方法の検討を続け、予測精度の向上を模索してきたいと考えています。
(函館水産試験場 室蘭支場 筒井大輔)
    • 図2
      図2 鵡川、門別漁獲物の平均GSI値の推移(17年度全調査データ)
    • 図3
      図3 鵡川、門別漁獲物のGSI値組成の推移

      (左:鵡川、右:門別 10月27日~11月11日分)

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