試験研究は今 No.616「アカボヤ採苗技術開発事業がスタートしました」(2008年6月6日) 

はじめに

写真 1 アカボヤ
  アカボヤ(写真1)は主に根室湾や宗谷海峡で漁獲されており、刺身や酢の物、塩辛として食べられています。1997年以降の全道の漁獲量は1999年の900トンを最高に、わずか3年後の2002年には350トンに減少し、その後低位な状態が続いています(図1)。このため道内漁獲量の70~80パーセント程度が水揚げされている根室湾の沿岸地区からは、アカボヤの資源増大に向けた早急な増養殖技術の開発が要望されています。また、太平洋沿岸の地域においても、カキやコンブなどの養殖施設や定置網などにアカボヤが着生することが確認されているため、この海域においても採苗・育成技術の開発が望まれています。このような背景から、道立釧路水産試験場(以後釧路水試と記す)では、道立栽培水産試験場と共同で、2008~2010年の3年間で「アカボヤの採苗技術開発と稚ボヤの育成に関する研究」という事業を実施します。
    • 図1
      図1 支庁別のアカボヤ漁獲量の経年変化

      (※非表示の支庁は漁獲なし)

これまでの知見

  釧路水試では2001~2004年までの4年間、根室湾に生息するアカボヤの漁業実態や生態、原料特性を調査し、漁獲物のサイズや漁場の位置、その水深や底質、年齢と体サイズの関係、産卵時期や初めて産卵するサイズや年齢、体サイズや時期による成分の変化などを明らかにしました。この中で、この海域におけるアカボヤの産卵期は9月から翌年1月頃までであり、その盛期は海水温が13~15度となる10月中旬~11月上旬であると推定されました。また、人工受精卵の発生試験により、産卵盛期の水温では、産卵から2日後に孵化することや、浮遊幼生は13~15度で生き残りが最も良く、この水温では2~3日で付着することが明らかになりました。さらに、アカボヤはホタテ貝殻や石などの天然のものはもちろんのこと、金属の蓋や軍手、ロープなどの人工物にも付着しているのが確認されました(写真2)。
    • 写真2 アカボヤの付着基質

試験研究の内容

  今回の新規事業では、このような知見を活用し、産卵盛期の前後の期間に根室湾のアカボヤ漁場近くに5~6点の調査点を設定し、そこに採苗器を投入して、時期別や場所別、深度別のアカボヤの付着数を把握すると同時に、現場海域の水温、塩分、植物プランクトン量、流速を調査し、採苗を効率的に実施できる時期、場所、深度を明らかにします。また、現場海域において貝殻やロープなどの材質の異なる採苗器を用いて採苗を行うとともに、水槽を使って同様の試験を行い、採苗器に適した材質を明らかにします。さらに、野外で採苗されたアカボヤは、そのまま現場海域で育成し、養成方法の検討もしていきたいと考えております。

終わりに

  釧路水試では、この研究で得られる研究成果を、将来的にアカボヤの増養殖に取り組みたいと考えている漁業者の方々に提供して、アカボヤ資源の回復や生産の増大による漁業の振興に役立てていきたいと考えていますので、われわれの成果にご期待ください。

(釧路水産試験場 資源増殖部 桑田 稔) 

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