平成16年 ニシン産卵実態調査速報1

平成16年2月1日早朝に、焼尻港沖でニシンの群来による白濁が見られたと漁業者から連絡があったため、2月19日午前中に、潜水による現地調査を実施しました。
調査の結果を速報に取りまとめたのでお知らせします。

白濁の写真

    • 白濁の写真

焼尻島におけるニシン産卵状況

調査方法

稚内水試2名、留萌北部水産指導所2名が潜水した。卵の付着範囲の端と思われる所に目印を入れ、回収時にGPSでその位置を記録した。現場水温、調査地点の水深、ならびに底質を記録し、あわせて写真撮影した。目視で、付着卵が「濃い」、「平均的」、「薄い」場所で、方形枠を用い、1/4平方メートルの海藻を8枠採集した。また、付着卵が見られた石も採集した。
採集した試料は、水試に持ち帰り、海藻種別に湿重量を測定した。その後、ぬるま湯中で海藻から付着卵をはずしたが、孵化間近であったため、多くの仔魚が卵殻から出た状態となった。ニシン卵と仔魚は、メスシリンダーで100ミリリットル~1にメスアップし、その1/5~1/50を計数して付着海藻種ごとに全数を算出した。平均卵密度と産卵範囲から、総産卵数を推定した。
さらに、2月1日に漁獲されたニシンの測定データと、尾叉長-よう卵数関係(高柳ら, 2003)から、来遊総個体数と総重量を推定した。なお、「濃い」地点の海藻の付着卵数に、石上の付着卵数を加えて計算した。

結果の概要

調査時の水温は、4.5~5度であった。観察した範囲は水深約6~10メートルで、ニシン付着卵密度が高かったのは水深7~9メートルの範囲であった。方形枠での採集は、水深6.5~8.3メートルの範囲で行った。海底は主に岩盤と直径50センチメートル以下の転石から成り、大型海藻の他、無節サンゴモが着生していた。
ニシン付着卵は、焼尻港の北側から中島の崎にかけて海岸線に平行に約120メートル、岸-沖方向に約50~120メートルの範囲で見られ、面積は約7,800平方メートルと推定された。
    • 羽幌町焼尻島産卵範囲
ニシンの群来による海面の白濁が見られたのは、主に焼尻港の沖とのことであったが、それは実際の産卵場所から、白濁が潮流により南側へ流された結果と見られる。
採集した海藻の現存量は、257.4~4,118.1g湿重/平方メートルの範囲にあった。海藻現存量が大きかったのは、主にヨレモクとフシスジモクのホンダワラ類で、他にウラソゾ、イソムラサキ、アナメなどが出現した。ホンダワラ類は時期が早いため、まだあまり成長しておらず、全長約90~120センチメートル程度であった。生育密度は、ヨレモクが8~44個体/平方メートル、フシスジモクが12~32個体/平方メートルであった。

海藻への付着卵数は、2,168.0~460,083.9粒/平方メートルの範囲にあり、平均158,388.5粒/平方メートルで、海域全体の総産卵数は12億2千8百万粒と推定された。
海藻種別の付着卵数は、付着卵数の多い枠順にヨレモク、フシスジモク、アナメ、ウラソゾ、イソムラサキが多く、それぞれ58,482、13,907、5,790、4,318、442粒/平方メートル付着していた。
一方、海藻の単位重量当たりの付着卵数ではウラソゾ、アナメ、イソムラサキ、フシスジモク、ヨレモクの順で多く、それぞれ472.9、434.1、341.3、153.4、138.9粒/グラム湿重であった。

    • 海藻への付着卵
ヨレモク、フシスジモクともに、下部葉が存在する基部から20~40センチメートルの部位で付着卵が多く、過去の知見と一致した。
ニシン卵が付着していた所は、特に周りより低い場所が多く、大きな岩で周りより高い所では、ホンダワラ類が同様に生育していたが、付着卵は少なかった。海底の石に高密度に付着した卵の密度は、184,443.9粒/平方メートルで、無節サンゴモ上に1層で産み付けられていた。
海底には殻径8~10センチメートル程度のキタムラサキウニが、4個体/平方メートル程度分布している所があった。水中の観察では、ウニの居る所のニシン卵が円く無くなっていたことから、ニシン卵を摂食していたと考えられる。
    • 桑谷ら(1978)より抜粋の卵の図
卵は、いずれも桑谷ら(1978)の発生段階の14~15で、胚体腹膜鰭基部の黒色色素叢が見られるものと、見られないものがあった。海藻付着卵、石付着卵ともに発生は順調に進展しているようであった。発生段階の異なる卵は見られず、いずれも2月1日の群来で産卵されたものと考えられた。
漁獲物の平均尾叉長27.71センチメートルであり、高柳ら(2003)の関係式からよう卵数は50,697.9粒/個体と計算され、産卵雌個体数が24,226個体、雄を同数として総来遊個体数は48,452個体と推定された。漁獲物の平均重量が214.6gであったことから、来遊したニシンの総重量は10,395.6キログラムと推定された。 

用語解説

 よう卵数:雌1尾当たりの抱(産)卵数

引用文献

桑谷幸正、渋谷三五郎、和久井卓哉、中西 孝(1978):ニシンの卵発生と稚魚の飼育に関する研究-1
卵発生に及ぼす水温の影響.有用魚類大規模増養殖等実験事業 にしん増養殖技術開発企業
化試験報告 昭和47~49年度 北海道区水産研究所 水産庁研究部研究課 昭和53年12月、11-29.
高柳志朗、石田良太郎(2003):石狩湾系ニシンの繁殖特性.北水試研報62、79-89.

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