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平成16年度 林産試験場の試験研究の紹介
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平成16年度 林産試験場の試験研究の紹介
 
 今年度は,新規課題15,継続課題23の計38課題の研究に取り組んでいます(平成16年6月16日現在)。これらの内訳は,重点領域特別研究5課題,農林水産省など国からの補助研究4課題,民間企業との共同研究6課題,民間企業からの受託研究1課題および一般試験研究22課題となっています(重複を含む)。ここでは,林産試験場で定めている中長期ビジョンの分類に従って研究内容を紹介します。
(重点:重点領域特別研究, 外部:国からの補助研究, 一般:一般試験研究)
 
I.木質材料の需要拡大を図る技術開発 (新規8課題,継続10課題)
北海道における住宅等の室内空気質の調査と改善方法の検討(重点:H16〜17)
 住宅のように私たちが常に身を置く空間の空気に含まれる物質(室内空気質)は私たちの健康に大きな影響があります。平成15年7月より施行された改正建築基準法によって,内装建材の使用制限および換気装置設置が義務付けられたため,室内空気質がこれまでの住宅とは大きく変わる可能性があります。また,今後新たな規制物質が追加される可能性も高く,これに対する対策も必要です。そこで,全道で建設される新築住宅等を対象として,室内空気質,使用建材,換気方法・換気量などの調査を行います。この中で今後問題となり得る物質についての検証も行い,濃度低減のための改善方法を検討します。
室内空気質の測定装置
薄鋼板を用いたモーメント抵抗接合工法の開発(一般:H16)
 住宅やホールなどを造るときには必ず,柱と柱,柱と梁,梁と梁などのつなぎ目(接合部)があります。この接合部を強く確実にするためにさまざまな研究が行われています。住宅の接合部は@つないでいる材料同士が引っ張られることやA接合部から折り曲げられることで壊れます。林産試験場では今までにない薄鋼板による接合方法を15年に検討し,@の引っ張られる場合について強さを確かめ,耐震性が高い上,十分な強度があり,施工性・作業性の大幅な向上が期待できるという,様々なメリットを見出しました。この研究ではAの折り曲げられる場合について検討し,この方法を改良していきます。
薄鋼板を用いて接合した柱の写真
木造軸組工法による寒地仕様準耐火構造外壁の開発(一般:H14〜16)
 準耐火構造とは,火災にあっても建物が崩れる前に逃げ出せる十分な余裕があると認められた造りであるということです。木造建築にこの性能,さらにこれ以上の性能を持たせるために全国で研究が進められています。この研究では道立北方建築総合研究所と共同で,北海道の住宅で,壁の中に使われている断熱材の遮熱性能(火事による高熱の通りにくさ)や,高断熱仕様外壁の耐火性能(高熱に対する崩れにくさ)を正確に調べ,一般住宅で使われることを目的とした準耐火構造の外壁を開発します。
耐火性能試験に供された柱材
耐火被覆材としての難燃処理木材の利用(一般:H16)
 平成12年に建築基準法が変わり,木造でも4階建てのアパートやホールなどの大きな建物が建てられるようになりました。しかし,この場合,耐火性能を上げて火事に強くすることが求められます。耐火性能を上げる方法として燃えにくい薬品をしみこませる方法などの難燃処理がありますが,コストや環境へのやさしさを考えて,難燃処理をした板で柱や梁を覆うことで必要な性能を持たせることを検討します。
水性高分子イソシアネート系接着剤の接着層の変色防止(一般:H16)
 最近,家具や内装材から出るホルムアルデヒドなどを減らすために水性高分子イソシアネート系接着剤(API)が広く使われています。しかしミズナラをこの接着剤で接着して乾燥すると,接着剤が黄みがかったり褐色に変色したりすることがあります。そのため,内装材や家具のメーカーから変色を防止する方法が求められています。林産試験場ではミズナラが持つ化学成分を分析して変色のメカニズムを探るとともに,変色防止策を検討します。
道産構造部材の長期強度性能に関する研究(一般:H16〜18)
 木製の大きな梁は長く使っているうちに少しずつたわみます。これをクリープと呼んでいます。また,条件によってはわずかに強度が落ちることがあります。これらは設計時に見込まれていますが,その程度は経験に頼るところが大きいと言えます。そこで,道産のムク材,集成材,I形梁について主にクリープを正確に把握するための研究を行います。
長期荷重試験の様子
カラマツ堆肥舎の管理基準の検討(重点:H15〜16)
 酪農家から出る大量の家畜排泄物が河川や土壌を汚染することが問題となり,16年からは堆肥舎などの施設を使って汚染を防止することが義務づけられました。この堆肥舎をカラマツで建てることでカラマツの利用を促進する取り組みが進められています。これを後押しし,より長い期間安心して利用してもらうため,主に割れに着目して完成後の補修,補強方法についての判断基準を作成するための研究を行っています。
熱処理による木質複合化材料
積雪に対応した可動式木製エクステリアの技術開発(一般:H16〜17)
 木製デッキは新築住宅のエクステリアとして,あるいは既存住宅を対象としたDIYキットとして販売されており,需要が大幅に伸びています。しかし北海道のような積雪地では,デッキ上の除排雪負担や,落雪に対する配置上の制限等の課題を抱えています。そこで,夏期には展開して使用し,冬期にはコンパクトに収納等ができる可動式木製デッキについて検討し,その問題点を探ります。
熱処理による木質複合化材料製造技術の開発(一般:H15〜17)
 林産試験場ではこれまでに木材に熱をかけることでさまざまな使い方ができることを明らかにしています。この研究では,熱をかけて有害ガスや臭いの元となる化学物質の吸着能力を高めた木材とセラミックス,プラスチックスを複合化した新しい材料を開発します。最近需要が減ってきているチップ(木材を細かい板状に砕いた物,主に紙の原料)の新しい用途や,今後も大量に出てくる間伐材(苗木を植えて育てている林を健全に育てるため間引きされた木材)の用途として期待できます。
発熱合板
導電性物質を利用した発熱合板の開発と木質系暖房用製品への応用(外部:H15〜17)
 住宅の床下や壁に広く使われている合板は薄くかつらむきにした木材に接着剤をつけ,熱をかけながら強く押して張り合わせて作ります。この接着剤にカーボン・グラファイトなどの電気を通す物質を適量混ぜることで発熱合板を作ることができます。発熱合板は電気を通すことで板全体がむら無く発熱するので,床暖房や屋根の融雪などさまざまな使い道が考えられます。しかし,製品に応用するには,長い期間通電した時に安全であることを確かめる必要があります。また,電気絶縁が破れてショートしないようにする工夫も必要です。この研究ではこれらの点を解決するとともに,新しい暖房用製品の開発を目指します。
腐朽した木材のDNA分析
シックハウス対策としての特定の木質建材に関する化学物質の放散特性の解明(外部:H14〜16)
 最近よく耳にする「シックハウス症候群」。この原因の一つであり,家具や内装材などから出るさまざまな化学物質(VOC)について,複数の建材が共存している場合のVOC濃度やそれぞれの建材がどの程度VOCに汚染されるかなどについて調べます。この成果はVOC対策がされた内装材や建具などの正しい保管方法や室内に施工する合板,フローリング,腰板などの木質建材の使い分け,使用量などの指針として活用できると考えています。
分子生物学的手法を用いた腐朽判定技術の開発(一般:H14〜17)
 木造住宅の床下などにある木材の腐朽(材の腐れ)に関して林産試験場には多くの相談が寄せられています。腐朽が進んだ木材は壊れやすくなるため,できるだけ早い時期に危険であるかどうかを正しく見極め,対策することが建物の寿命を延ばすことになります。腐朽の危険性はナミダタケやイドタケなどの木材腐朽菌が木材中にあるかどうかで見極めることができます。しかし,現在使われている方法では多くの日数と労力が必要なため,早期発見,早期予防には向きません。この研究ではDNA分析に着目して,木材腐朽菌の検出を迅速に行う方法を開発します。この方法が確立すれば,見た目には腐朽の始まっていない木材についても腐朽を予測することができると考えています。
腐朽した木材のDNA分析
木材からの香りが作業能率に与える影響(一般:H15〜16)
 在宅勤務やSOHO(Small Office Home Office)といった新しい形の仕事スタイルが出てきたように,これからは住宅が“働きの場”となることが多くなるものと思われます。住宅を“働きの場”と考えたとき,“香り”をどのように感じるかと“香り”が作業能率に与える影響を知ることで,より快適で仕事がはかどる部屋が提案できると考えます。この研究ではフローリングや壁の板張りなどの木質内装材を使った部屋を用意し,木材から発生する香りが事務作業効率にどのような影響を与えるかを調べます。そして,快適で事務作業の効率がよくなる木質内装材の使用方法を提案します。
木材の香りを嗅ぐ実験
トドマツ育種種苗の普及率向上を目指した材質検定(一般:H15〜16)
 北海道ではトドマツの種を全道に供給するための採種園を新冠に造っています。この採種園において14年から数年間,いくつもの精英樹(特に成長が良く曲がりが少ない木)を接ぎ木して増やした樹木(クローン)が伐採されます。この研究ではこれらの材質と強さを調べ,材質や強さに優れるクローンを選別します。これによって,より優れた遺伝子を持つ種が得られるようになり,将来生産されるトドマツの材質が向上し
ます。
二酸化炭素固定能の高いカラマツ類の品種開発(重点:H15〜17)
 二酸化炭素の排出を抑えるには地球規模の対策が必要ですが,その有効な手段として樹木を育ててこれを吸収してもらう方法があります。育てる樹木には成長が早く,できるだけ重く,成長後に大量に有効利用できることが要求されます。このため北海道においては,針葉樹のグイマツ雑種F1が有望な樹種と考えられます。この研究ではグイマツ雑種F1の中でも二酸化炭素固定能が高い家系を選抜するとともに,品種開発に使う親木として優れた個体を明らかにします。研究の成果は,北海道の今後の造林計画に反映される予定
です。
 
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