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木材の優しさと金属の強さの融合-木材・金属複合パイプ-
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 ●工業所有権等の紹介
 木材の優しさと金属の強さの融合 
-木材・金属複合パイプ-
利用部化学加工科 重枝 哲夫
・近年,触り心地の良さや,見た目の暖かさといった木材の長所が見直され,遊具や福祉機器,内・外装などに木材が使われる機会が多くなってきています。しかし,木材を遊具や手すりなどに用いる場合,安全性を考慮して太くて握りにくいものになってしまいます。
・一方,金属は比較的細い材料でも必要な強さを得られるので,握りやすい太さや軽量感のあるデザインの製品を作ることができますが,金属は木材と比べて熱伝導率が大きいので,高温下や低温下などでは熱すぎたり冷たすぎたりして不快感を生じるという欠点があります。
・そこで,木材と金属を組み合わせることで,双方の長所を併せ持った材料が製作できないかと考え,開発したのが「木材・金属複合パイプ」です。
 今回,木材・金属複合パイプを用いて遊具の試作を行いましたので,製造方法などとあわせて紹介します。

※幼児や高齢者でも握りやすい手すりの太さは32mm前後といわれています。また,歩行補助手すりのBL(優良住宅部品)認定基準では,スパン当たり1150N(ニュートン)の鉛直荷重に耐えられることが条件になっていますが,スパン1000mmにおいて,外径32mm・内径28mmのステンレスパイプ(SUS304A)の耐荷重は約1250N,直径32mmのカラマツ円柱棒の耐荷重は約320Nとなります(基準材料強度ベース)。

写真1 接着剤の塗布
製造方法


①単板の軟化処理
 所定の大きさに切った単板に,霧吹きなどで柔軟剤を塗布し,軟化させておきます。


②接着剤の塗布(写真1
 ローラーなどを用いて,単板に接着剤を塗布します。今回は接着剤に水性ビニルウレタン系のものを用いました。


写真2 単板の巻き付け

③単板の巻き付け(写真2
 単板を金属パイプに巻き付けます。その際,パイプと単板の間にすき間が出来ないよう絞るように力を加えながら巻くのがポイントです。試験の結果,厚さ0.2mmの単板であれば直径6mm程度のパイプにも巻き付けられることがわかっています。
 また,巻き付ける樹種は広葉樹ではミズナラなどの環孔材より,組織が比較的均一なカンバなどの散孔材の方が巻き付けやすく,針葉樹では早・晩材がはっきりしていない樹種が適しています。


写真3 サンディング

写真4 塗装

④硬化・養生
 治具を用いて単板を巻き付けたままの状態で固定し,接着剤を硬化・養生させます(3日程度)。

⑤サンディング(写真3
 巻き終わりの凸部分を中心に,断面形状が円に近くなるようにサンディングします。

⑥塗装(写真4
 仕上げとして必要に応じ塗装をし,完成です(写真5)。今回は,元の木材の質感を残すため,透明な塗料を用いました。

写真5 木材・金属複合パイプの完成例

特徴と用途
 金属パイプに単板を巻き付けることで,木材の触り心地・見た目の良さと,金属の強度をあわせもった材料となりました。なお,この技術は「木質複合化パイプ・棒の製造方法」(特許第2689237号)として,特許取得済みです。
 現在のところ,への字型に曲がったパイプなど複雑な形状には上手く巻き付けられない事が課題です。また,耐候性が低いため,用途は主にインテリア用に限定されますが,次のような使い方が考えられます。

◎福祉器具や遊具,手すりなどに木材・金属複合パイプを使用することで,見た目や触り心地を向上させることができるとともに,強度を生かして木製では難しかったデザインも可能になります。
◎木材・金属複合パイプは,外から見ると木材ですが,内部は中空です。この特長を生かし,内部に配線や配管を通して柱などに見せるといった使い方が考えられます。
◎柱や家具の足などにムクの広葉樹材を使うと高価になってしまう場合がありますが,木材・金属複合パイプを使用することで,コストを下げられる可能性があります。


遊具の試作

写真6 今回試作した遊具

写真7 2004 あさひかわ工業技術交流会にて

 木材・金属複合パイプを用いてジャングルジムを試作しました(写真6)。パイプにアルミ,単板にエゾマツを使用して製作した木材・金属複合パイプを,タモの木球を用いてジョイントし,組み上げています。
 金属製のものに比べて触り心地が良く,見た目がやわらかで,木製のものに比べて細く作れるため握りやすいという,木材・金属複合パイプの特長を生かした遊具に仕上がりました。

 今回試作したジャングルジムは,「'04 あさひかわ工業技術交流会」に出展し,好評を得ました(写真7)。

参考資料
1)今泉英恵:金属の強さと木材の優しさを合わせ持つパイプ,林産試だより,3月号,1-4(1997 ).
2)今泉英恵,藤本英人,本間千晶,長谷川祐:単板巻き異種材料パイプの製造に関する研究(I),第28回日本木材学会北海道支部講演集,51-54(1996).
3)藤本英人,今泉英恵:木材・金属複合パイプの開発,北海道開発局技術研究発表会発表概要集(1),113-120(1998).
4)優良住宅部品認定基準 歩行・動作補助手すり,RW:2003②.
5)佐藤平,島田武彦:肢体不自由者(児)の使用する設備寸法に関する研究(その3),日本建築学会大会講演梗概集 建築計画,937-938(1992).
 
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