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林産試だより2004年10月号3
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らせん形積層材の製造装置

技術部 主任研究員 田口 崇


 写真1は西興部村森の美術館「木夢」にある木製のらせんすべり台です。このすべり台は林産試験場で製作しました。ちょうどバネの一部のような形をしています。このようならせん形のすべり台を作るためにはどのような技術が必要になるか考えてみてください。
 正解は,「接着剤を付けた木の板を何枚も重ね,型に締め付けて作る」です。しかし,単純な型では様々な問題があって正確な形に作ることはできません。型の工夫がこの技術のミソです。この技術は平成12年2月10日に 特許第3030546号として登録されています。

らせん形積層材の特徴

 らせん形は上から見ると一つの円に見えますが,横から見ると両端の高さが違うというコイルバネのような形をしています。つまり単純な平面上(二次元)の曲線ではなく,立体的な三次元の曲線ということです。写真2を見てその形の複雑さがわかっていただけるでしょうか。上の写真がすべり台の底板,下の写真が手すりとなる側板になります。底板の幅は40cmあり,3枚の板を重ねて接着してあります。


写真1 西興部村のらせんすべり台(右旋回)


写真2 らせん形積層材

一般的ならせん形の作り方と問題点

 一般的ならせん形の積層材は写真3のように作りたい半径と両端の高さのある型を用意して,素材となる板(ラミナと呼んでいます)に接着剤を塗ったものを型に添わせながら必要な枚数重ね,写真4のように締め付けることで形を固定し,接着します。型には鉄板がよく使われます。
 ところがこの方法では半径,両端の高さのどちらかが変わるだけでも型を作り直さなければならないのでコストが高くなります。また,ラミナは曲げようとするとはね戻るので,重ねる枚数が増えてくるときっちりと幅をそろえながら,型から浮き上がるのを押さえて形を整えなければならず,締め付ける作業が非常に難しくなります。すべり台の底板のような形を作るにはこのような作り方では難しいことが理解できると思います。


写真3 らせん形の型(鉄板を使用した例)

写真4 型に締め付け成形,接着

林産試験場で開発した装置

 このような問題点を解決するために一般的な型のかわりに 写真5のような骨組みを作りました。障害物競走のハードルに似た型を横材の高さを変えて,円に沿って並べて固定してあります。これが特許となった装置の基本形です。一般的な型と違い写真の赤い斜線で示した角材は全て水平で,高さはらせんに沿って一定の間隔で取り付けてあります。また,上から見るとらせん形の円の中心を通る放射線上にならんでいます。この横材がすべり台の底板の型になります。
 らせん形積層材の高さを変えずに上から見た円の大きさ,あるいは円以外の形にしたいときは一つ一つの型を移動すれば調整できます。また,横材の上に細い角棒(スペーサー)等を載せることで多少の微調整は可能です。写真6はらせんすべり台の内側の側板を、写真7はその底板を作っている所です。底板の内側と、内側板の外側を正確に組み合わせるために,側板の厚さ分のスペーサーを入れて,底板の内側の半径を調整しています。


写真5 特許装置原型

写真6 側板の積層,接着

写真7 底板の積層,接着

おわりに

 写真8は千葉県の原木幼稚園に設置されたらせんすべり台です。このすべり台は林産試験場が取得した特許を使って北見市の大型木製遊具メーカーである(株)北樹が製作・設置しました。最初に紹介したすべり台はすべり降りるにしたがって右に回る右旋回,このすべり台は左に回る左旋回です。どちらのすべり台も優雅で華麗な,らせん形積層材の特長が活かされた,そして木材にしかないあたたかい感触の大型木製遊具です。
 最後になりますが,開発に携わった関係者としては,今後更に種々の大型木製遊具が広く普及する社会が来ることを祈念しています。


写真8 原木幼稚園のらせんすべり台(左旋回)

-コラム 特許の出願にあたって-

 平成7~8年度に,「わん曲集成材の製造技術と用途開発」という課題名で研究を行いました。この研究の成果として,ネジ式クランプという小型で取扱いが楽な締め付け器具を使って,厚さが5cm程度までの小型のわん曲集成材を製造する技術を確立し、わん曲集成材の特長を生かした製品として写真9に示す円形の木球砂場の枠などを提案しました。また平成8年度に「わん曲集成材による木製遊具の開発」という研究課題のなかで、らせんすべり台を作成しらせん形積層材の製造にかかる問題点とその解決方法を明らかにしました。
 これらの成果は、細部技術の説明が難しく,通り一遍の研究報告には馴染まないと考えました。しかし,ここで得た技術を将来にわたって記録しておくことの必要性を痛感していました。結局,最良の方法は特許であると考え,平成9年8月に出願したものです。


写真9 木球砂場の枠
 
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