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スギを使って楽々イチゴ栽培
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スギを使って,楽々イチゴ栽培

利用部 成分利用科 佐藤 真由美


 北海道のイチゴ栽培

 イチゴは農作物の中でも価格が安定し,高収入が期待できる作物です。とくに,夏秋季にはきわめて高値で流通しています。北海道の夏季の冷涼な気候を活かして栽培を行えば,夏秋季の国内の生産を独占できる可能性もあり,高収入が期待できます。しかし,近年の北海道におけるイチゴ作付面積は減少傾向を示しています。平成2年度の作付面積は419haでしたが,13年度には290haに減っています1)。この理由として,一般的に行われてきた土耕栽培は,中腰やしゃがんだ姿勢による作業が多く生産者の負担が大きいこと,生産者が高齢化していることが挙げられます。
 ところで,北海道内において近年高設栽培(写真1)が普及し始めています。これは,発泡スチロール製の魚箱などの栽培槽に苗を植え,箱ごとハウス内の架台の上に載せて栽培する方法です。この栽培方法は立った姿勢で作業ができるため,作業が楽になります(写真2)。この設備をさらに有効利用する栽培方法として,北海道立道南農業試験場が高設二期どり栽培を開発しました。


写真1 イチゴの高設栽培

写真2 高設栽培における収穫作業

 高設二期どり栽培と課題

 高設二期どり栽培とは,春に収穫できる品種と夏から秋にかけて収穫できる品種を同時に栽培する方法です(図1)。この栽培は,露地栽培とビニールハウス内での高設栽培の2つの方法を使用するため,栽培槽を搬入・搬出する作業が必要となります。この際,従来のイチゴ栽培用の培土(以下,培土)1つの栽培槽が約12kgと重たく,重労働であることが課題となっていました。
 イチゴ栽培が盛んな道南では,スギの人工林が多いことが知られています。しかし,地元の製材工場などで排出されるスギ樹皮は燃料として使う以外はお金をかけて捨てている部分もあります。また,間伐された中小径材の有効利用を図る必要があります。そこで,スギ樹皮やおがくずはイチゴ栽培用培土(以下培土)よりも軽いことに注目し,これらをイチゴ栽培用培地として使用できないかと考えました。もし,ごみが減らせて,作業が楽なうえにイチゴがたくさん収穫できれば,製材工場もイチゴ生産者も助かります。林産試験場では,培土の代わりにスギを使う場合の材料・形状の適性調査と成分分析を行い,スギ樹皮を使ったイチゴの栽培方法を北海道立道南農業試験場が開発しました。

図1 イチゴの高設二期どり栽培

 どのくらい楽になるのか

 それでは,スギ粉砕物を使用すると,どのくらい作業が楽になるのでしょうか。そこで,実際に20代の男性に作業をしてもらいました。培土と樹皮粉砕物それぞれを培地として10箱の栽培層に苗を植えた後,ハウス外からハウス内へ移動して,架台に設置する作業をしてもらい,作業前後の心拍数を測定しました。4株の苗を植えた状態の栽培槽1箱の重さは,培土,樹皮と培土の二層について,それぞれ12kg,10kgでした。樹皮と培土の二層にした栽培槽の運搬は,培土の栽培槽よりも作業前後の心拍増加率は約4%低く,培地が軽くなることによって作業が楽になっていることが確認されました。これは10箱の運搬結果ですが,実際の栽培では1日に数百箱運搬する必要があることから,この効果はさらに大きいと考えられます。参考までに,材粉砕物の栽培槽1箱の重さは8kgでした。材粉砕物は単独でもイチゴの収量と糖度は良好であり,樹皮と培土の二層よりも軽いことから,よりいっそう作業が楽になると考えられます。

写真3 スギ粉砕物
左:樹皮粉砕物,右:材粉砕物
写真4 栽培試験
左:イチゴ用培土,右:スギ樹皮粉砕物

 おわりに

 未利用林産資源であるスギ粉砕物を利用したイチゴの栽培方法の開発は,農業と林業が協力しあうことにより実現しました。この栽培方法は既に一部の地域で実用化されており,さらに道南地方を中心に広がっていくでしょう。今後は,イチゴ以外の作物に対しても,応用していきたいと考えています。


 参考資料

1)北海道農林水産統計年報(総合編),農林水産省  北海道統計・情報事務所(2003).
 
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