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耐久性を考慮した木製土木構造物の設計について
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耐久性を考慮した木製土木構造物の設計について

性能部 耐朽性能科 森 満範


 はじめに

 木材の用途が拡大し,治山工事などで見られる土留工や柵工などに木材が積極的に使われるようになってきました。これら木製の土木構造物の設置を検討する段階で,「設置した構造物は何年もつのか?」,あるいは「目標の耐用年数まで機能させるためにどのような設計をすればよいのか?」ということが問題になります。これは木材の耐久性や腐朽というものが抽象的で,どのように捉えたらよいのか,あるいは何を目安にしたらよいのか,という情報が乏しいためと考えられます。そこで,残存強度(木材に残っている強度)によって耐久性の指標を明確にし,耐久性を考慮した木製土木構造物の設計方法を提案するための研究を行いました1,2)。この成果は平成16年9月,北海道が発行する「土木用木材・木製品設計マニュアル」WEB版※1に追加版「耐久性を考慮した木製土木構造物の設計」として掲載されましたので,この研究の取り組み内容,および追加されたマニュアルの概略についてご紹介します。
※1:北海道水産林務部木材振興課のホームページから「土木用木材・木製品設計マニュアル」を閲覧できます。
URL: http://www.pref.hokkaido.lg.jp/sr/rrm/t-manual.htm

 現状の耐久性(腐朽)評価方法

 木材の腐朽状態を判定するための最も簡単でよく利用されている方法は被害度評価法です3,4)。これは,目視によって木材の腐朽による劣化状況を,健全(「被害度0」)から崩壊(「被害度5」)までの6段階で評価するものです(表1)。一般的に,被害度が2.5に達した年数を耐用年数とし,この耐用年数により木材の耐朽性(耐久性)が区分されています(表2)。カラマツ心材の場合,野外環境において土壌に接している状態での耐用年数は5~6.5年とされています5,6)
表1 目視による被害度評価法とその判定基準

表2 各樹種の心材の耐朽性

 被害度評価法の問題点

 このように一般的となっている被害度評価法ですが,実はこれは関東地域での試験をもとにしているため,北海道において,あるいは土木資材として使用した場合などに当てはめることができるのかどうかを確認する必要がありました。また,「被害度2.5」という基準もスギの強度試験結果を目安にしたもので7),北海道で土木資材として利用されているカラマツについても適用できるものなのかを確認する必要がありました。

 耐久性・耐用年数という概念がわかりづらい

 林産試験場も含め,木材保存の研究に従事している研究機関では,「この木材は何年もつか?」という質問に対し,一般的には被害度評価法によって決められた「耐用年数」,つまり被害度が2.5に達する年数を答えています。しかし,質問している人が指している「何年もつか?」という意味が,「変色してしまうまで」であったり,「腐朽が始まるまで」,あるいは「壊れてしまうまで」であったりと,耐用限界の考え方が一致していないことも少なくありません。また,木製土木構造物としての耐用年数を問われた場合も,それを構成している部材の樹種の耐用年数を答えるにとどまります。このような背景から,木材の「耐用年数」に関する情報を提供しても,理解が得られないというのが現状です。

 耐久性をわかりやすく表現する(取り組み内容)

 そこで,「腐朽」を「強度」という性能に置きかえて,耐久性を予測するための検討を行いました。図1は,研究の流れ,および取り組み内容を示したものです。図1に示したように,カラマツを用いた土木構造物の腐朽調査から「腐朽と経過年数の関係」を明らかにし,また暴露試験を行ったカラマツ丸太材の強度試験により「腐朽と強度の関係」を明らかにしました。これらの結果から,土木構造物として使用されているカラマツの「残存強度と経過年数の関係」を推定し,さらに構造物全体としての耐力の経年変化を予測しました。以下にその概要を記します。
図1 研究の流れ・取り組み内容


①腐朽と経過年数の関係
 北海道内で土木構造物として使用されているカラマツ丸太(主に防腐剤で処理をしていないもの)の腐朽と経過年数の関係を把握するために,道内の12か所・38地点に設置された土木構造物の約2,000の部位について調査を行いました。目視による被害度およびピロディン※2写真1)の打ち込み深さ(以下,Pe)を劣化の指標とし,地際部分や接合部分などにおける腐朽と経過年数の関係を明らかにしました。
写真1 ピロディン

※2:ピロディンとは木材の腐朽を評価する機器の一つで,金属製のピン(直径2.5 mm)をバネの力で木材に打ち込み,その打ち込み深さによって腐朽状況を判断するものです。

②腐朽と強度の関係8,9)

 林産試験場の野外暴露試験地に設置したカラマツ剥皮丸太(直径11~17cm×長さ約200cm)を試験体として使用し,最も腐朽しやすい地際部分の被害度,Pe,曲げ強さ,および残存している断面積を評価・測定し,試験体における腐朽と強度の関係を求めました。
 また,道産材の腐朽(劣化)を室内で促進させる方法を開発し,ファンガスセラー(腐朽を促進させるための槽)に設置したカラマツ杭材(2×2×10cm)の被害度および縦圧縮強さを所定期間ごとに評価・測定して,試験体における腐朽と強度の関係を求めました。

③残存強度と経過年数の関係(残存強度の経年変化の推定)
 これらの試験で得られた結果から,土木構造物の部材として使用されているカラマツ丸太の残存強度の経年変化を,4つの部位に分けて推定しました(図2)。

図2 木製土木構造物の各部材における残存強度の経年変化


④構造物としての耐力の経年変化の推定および耐久性を考慮した設計方法の提示
 現在,公共工事などで利用されている木製土木構造物のなかから,いくつかの代表的なモデル構造物を選定しました。それらについて,経過年数と部材の強度低下の関係式を適用し,腐朽による強度性能の低下を考慮に入れた,土木構造物における耐力の経年変化の試算を行いました。その一例を図3に示します。ここでは安全率が1となる時点を耐用限界としました。また,推定に用いた関係式が,経過年数が12年前後までの調査データに基づいて求められたものなので,安定計算の適用範囲を12年までに限定しました。
 図3の②に示したように,部位ごとの安全率を示す直線が,最も小さくなる部位により構造物としての耐力が決定します。これは設計段階で推定できることから,部材断面などの変更(図3の③,④)や防腐処理材を使用することにより,耐用限界をある程度調節できます。また,設置する前に部材交換やメンテナンスのスケジュールを予測できることから,コスト試算を行う上でも有用な資料となります。

図3 耐久性を考慮した安定計算例(耐用限界を安全率=1とした場合,防風工)


 おわりに

 この成果によって,今まで木材単体の「耐用年数」しか情報がなかった耐久性という概念をより具体的に表現でき,使用状況に応じた強度的な耐用限界を構造物単位で予測できるようになりました。この考え方を取り入れた木製土木構造物の試験施工も北海道水産林務部により進められています。今後も,データを追加して充実させることにより,この設計方法の信頼性の向上を図っていく予定です。

 参考資料

1)森 満範ほか5名:第54回日本木材学会大会研究発表要旨集,684 (2004).
2)前田典昭ほか5名:第54回日本木材学会大会研究発表要旨集,685 (2004).
3)木材防腐研究室:林試研報,103,155-158 (1957).
4)木材防腐研究室:林試研報,103,159-166 (1957).
5)松岡昭四郎ほか5名:林試研報,232,109-135(1970).
6)“木材保存学入門”,木材保存協会発行(1992).
7)雨宮昭二:林試研報,150,143-156 (1963).
8)森 満範ほか4名:第52回日本木材学会大会研究発表要旨集,416 (2002).
9)森 満範,宮内輝久,杉山智昭:第53回日本木材学会大会研究発表要旨集,688 (2003).
 
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