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木の曲がりを測る-雪害木調査の中で-
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木の曲がりを測る-雪害木調査の中で-

企画指導部 普及課 近藤 佳秀


 北海道の森林はたびたび台風や雪の被害にあっています。風や雪でなぎ倒された樹木が製材としてどこまで使えるかについて,林産試験場では折に触れて紹介してきました1-6)。このような被害にあった木の利用を考える上で大切なのは,それぞれの木がどれだけのダメージを受けたかということです。折れてしまった木はともかく,曲がった程度の木は製材として使える可能性もあります。このとき,曲がりの大きさが,木材が受けたダメージの大きさに関係していることに異論はないと思います。もちろん,曲がりの大きさだけを見てダメージを推測することはできません。というのは,曲がった状態になるまでの履歴,たとえば,雪の重みで少しずつ曲がっていったのか,あるいは風に吹かれて何度も揺れながら曲がったのかによって受けるダメージが大きく違うからです。これらを総合した判断については時間をかけて詳しく調査する必要があります。

 それでも,立っている木の曲がりを測ることができれば,最終的な判断に対しても大きな助力になります。平成16年2月22日から23日にかけての雪で被害を受けたカラマツ(写真1)について曲がりを測ることにしました。ところが,曲がっていても木の梢頭(最も先端にあたる所)まで15m以上ありましたので,直接測ることは困難でした。そこで,写真測量を使えないかと考えました。初めての試みのため問題点もいくつかありましたが,目的には十分な精度で測定ができましたので,この方法について詳しく紹介します。

写真1 雪害を受けて曲がった木


 測定原理

 今回の雪で曲がったカラマツを実際に見てきたところ,一つの林の中でさまざまな方向に曲がったり,折れたりしていましたが,一本一本の木についてみると曲がり方は単純でした。したがって,一本の木の曲がりは写真2のように,2か所から撮った写真をもとに正面から見た時の形を再現すればよいことになります。もっとも,正確な正面図は必要ありません,幹の曲がり具合(写真中の幹に上書きした線)がわかればいいのです。このとき,カメラのレンズによる写真のゆがみが問題となります。また,曲がりを測りたい木から見た撮影位置も正確に測れているとは限りません。資料7,8)からこのような場合に適した計算方法として,単写真測量法の一つであるバンドル調整法を選びました。
写真2 写真測定の原理


 現地での測定

 正しく曲がりを測るためには写真の中に長さの基準となる物を写しておかなければなりません。今回は,1.5mの棒を用意しましたが,これはもっと長い必要があり,できれば5mは欲しかったと反省しています。棒は振り下げを使って垂直に立てました。カメラはCOOLPIX885(NIKON社製)を使いました。撮影場所と木の位置関係は巻き尺で測定するつもりでしたが,地面が平坦でなく,折れた枝なども散らばっていたため,うまく測れず時間もかかったので,超音波を利用した樹高測定器VERTEX III(Haglof社製)の距離測定機能を使い,撮影場所から木の根元まで,撮影場所から木の梢の真下まで,木の根元から梢の真下までの3つの距離を測定しました。ちなみに,樹高測定器で測定した樹高データでは精度が十分でなく,曲がりは測れませんでした。この測定に加えて,木の根元からのカメラの高さも重要なのですが,地面が平坦でなかったため十分な精度で測ることができませんでした。
 このようにして測量データと写真(1本の木について2枚ずつ)を撮りました。このときの反省点は3枚撮った方が良かったということと,ねらった木の前にある他の木がじゃまして,写真2のように正面右と正面左ではなく,正面左で角度の違う2枚となってしまった木があったことでした。これらはデータ処理するときの精度を低下させる要因になります。

 データ処理

 バンドル調整法は,酒井佳治氏が作成したフリーソフト3D_photo Version2.12を使って計算しました。通常の使い方であれば,レンズのゆがみ補正のパラメータは自動的に計算してくれますが,今回は写真2枚で計算する上,ズーム機能を使ったため焦点距離が変わっているのでパラメータを指定しなければなりません。そこで,木を写したときとほぼ同じ条件で写した建物の写真とその建物の実測値を使ってパラメータを調節し,この値を使いました。ヘルプファイルに従って2枚の写真を比べながら目印となる点をマウスで指定して,計算させます。計算した結果が,測量した距離やカメラの高さなどの位置関係を正しく表すまで,試行錯誤します。初めから,目印を意識して写真を撮っていればと反省しました。納得がいったところで,根元から木の幹に沿って50cm間隔程度で小刻みに位置を計算しました。その結果の一例が写真3表1です。
写真3 計測した結果表1 雪害木の3次元測定データ


 結果

図1 再現された木のプロフィール 表1をグラフにしたのが図1です。各点をなめらかに結んでそれぞれの点の間の値を推定(補間といいます)することで,木のプロフィール(形)が決まります。梢の方は測定精度が低くなりましたが,製材として使えるのは根元から10m程度までですので,今回の方法で十分な精度の測定ができたと考えています。山で伐採した木(原木)は通常,3.65mごと(北海道の場合)に切って運ぶため,根元から3.65mごとの矢高(原木の曲がり具合の目安,原木の両端を結ぶ直線からのずれの最も大きいもの)を計算して,測定結果としました。矢高の算出方法にはいくつか考えられますが,今回は3.65mごとに曲率9)の平均値を計算し,この平均値から換算しました(表2)。

 図1のプロフィールからはわかりにくい,曲がりの細かな変化(根元に近い方は曲がりが小さく,梢に行くに従って曲がりが大きくなるなど)がわかると思います。曲がりが大きい木のうちの1本は2番目の矢高が小さくなっていますが,これは根元と中程の高さの2か所で大きく曲がっていることを示します。また,曲がりの大きい木は1番目の矢高が違うことから,生えぎわが折れているのではなく,幹が曲がっていることがわかります。このような曲がりの解析が木のダメージを検討する上で参考になると考えています。

表2 雪害木の3.65mごとの曲がり矢高

 おわりに

 市販のデジタルカメラと距離計だけで,十分実用に耐えられる測定ができたと思います。しかし,現地での測定方法に工夫が必要なこともわかりましたので,今後の測定などに活かしたいと考えています。なお,雪害木の総合的な調査報告については,後日本誌 などでお知らせする予定です。

 参考資料

1)北沢暢夫ほか3名:林業指導所月報,101号,1-4  (1960).
2)山本宏:林産試だより,11月号,1-3(1981).
3)飯田信男ほか5名:林産試月報,364号,1-8(1982).
4)中田欣作ほか4名:林産試月報,366号,7-11    (1982).
5)森泉周:林産試だより,8月号,15-18(1985).
6)丹所俊博:林産試だより,9月号,3-5(2003).
7)村木広和ほか5名:“デジカメ活用によるデジタル  測量入門”,森北出版(2000).
8)酒井佳治:“3D_photo Version2.12 ヘルプファイ  ル”(2003).
9)たとえば,岡部恒治:微分・積分のしくみ,日本  実業出版社(1998).
 
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