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視覚障害者用方位指示装置
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●工業所有権等の紹介

視覚障害者用方位指示装置

技術部 成形科 澤田 哲則


 はじめに

 今日ではバリアフリーやユニバーサルデザイン,ノーマライゼーションといった言葉が当たり前に使われ,街中でも車いすを利用されている方や,盲導犬と一緒に歩いたり白杖を手にして歩行されている目の不自由な方を見かける機会が増えました。テレビでも耳の不自由な方向けに字幕や手話通訳がついたり,目の不自由な方向けに副音声を設ける番組もずいぶん増えたように思います。また長野で開催されたパラリンピック以降,国内においても障害のある方の運動競技人口が増えており,今年のアテネ大会でもご承知の通り,トップアスリートクラスの記録が続出し,障害は個性であることを実感させられます。

 我が国では1982年に政府が障害者施策推進本部を発足させ,1993年には“障害者基本法”を公布,また1995年からは“障害者プラン・ノーマライゼーション7か年戦略”,2003年からは“新障害者プラン(5か年)”をスタートさせています。
 北海道では1993年に「障害者に関する新北海道行動計画」,1998年に「北海道障害者プラン」を策定するとともに,1996~2000年度の5年間に渡り「北国型福祉社会における住生活環境整備に関する研究」を4つの道立研究機関が協力して実施し,障害者福祉に関する様々な研究を行いました。その中で木質材料による視覚障害者用誘導ブロックの研究に取り組み,それを糸口に利用者の様々なニーズを調査・検討した結果,得られた成果の一つが,視覚障害者用方位指示装置1)です。


 視覚障害者歩行支援システム2)

 視覚障害者用方位指示装置は,視覚障害者に方位を知らせるために開発したもので,現在特許出願中です。同時に開発した,木材を使用した視覚障害者用誘導ブロック3),視覚障害者用歩行補助装置4)とあわせて,“視覚障害者用歩行支援システム(以下「支援システム」)”となります。これらは冬の外出を望まれる方々の手助けとなるように考えたもので,屋外での歩行をより安全・安心にするものです。そこで,まずこの支援システムについて簡単に説明します。

 視覚障害者にとって誘導ブロックは歩道を歩くときに頼りになる道しるべです。ところが冬に雪が積もって埋もれてしまうと,どこにあるのかわからなくなってしまいます(写真1)。そこで誘導ブロック(ブロックのない場所では歩道)に安価なマグネットを埋め込み,利用者にはマグネットの位置,極性(N,S)を検出する磁気センサーや電子回路,音や振動でそれらの情報を知らせる報知装置を身につけてもらい,さらに方位指示装置を用いることによって自分の位置を確認する手助けとなるシステムとすることができます(図1)。なお誘導ブロックにはぬれても乾いても滑り抵抗性が安定しており,耐久性に優れ,マグネットの磁気に悪い影響を及ぼさない硬質木片セメント板を用いています。

写真1 雪に埋もれて見えなくなった誘導ブロック図1 支援システムの概要


 方位指示装置

 視覚障害者が方位(どちらが北か)を知る手段としては,視覚障害者用コンパス(方位磁石:写真2)があります。しかしコンパスでは振れている磁針が静止してから固定し,その上で磁針に触れないと正しい方位がわかりません。また磁針が止まるまでの時間,コンパスを水平にしたままじっとしていなくてはなりません。冬の寒い中では,手先がかじかむなどして正しい方位がわからなくなってしまうこともあります。
写真2 視覚障害者用コンパス

 そこでボタンを押して,体の向きを変えると,北向きに近づくに従って断続音(または振動)が「ピッピッピッ・・・」と鳴り出し,真北に近づくにつれて「ピピピ・・・」と音の間隔が短くなり,真北に向いた時には「ピー」と連続音が鳴る(図2)という簡単な方位を知るための装置を考案しました(写真3)。方位指示装置というより,むしろ電子方位磁石といった方が理解しやすいかもしれません。
写真3 方位指示装置の概観図2 方位指示装置の報知例


 おわりに

 これらの方位指示装置や支援システムは,それを使用するだけで利用者を目的地まで誘導するものではありません。あくまで雪がない時期に外出して蓄えられた土地勘を,雪が積もっている冬季に生かしてもらうための補助装置です。
 視覚障害者に対する基盤整備には,国土交通省の視覚障害者誘導用ブロック設置指針やハートビル法・新ハートビル法,交通バリアフリー法などがあります。またJIS T 9251“視覚障害者誘導用ブロック等の突起・寸法及びその配置”が制定されたことによって誘導ブロックの標準化も進められてきました。しかしながら,それらが首都圏を基準として検討されたものであるため,積雪寒冷といった地域性には自治体が独自に対応しなければなりません。
 この支援システムが視覚障害者の冬季外出の一助となり,積雪寒冷地における地域格差の是正に寄与でき,冬季の生活が少しでも豊かなものとなることに貢献できれば幸いです。

 参考資料

1)特開2001-178765「視覚障害者用方位指示装置」
2)澤田哲則,林産試だより,11月号,8-9(2001).
3)特許第3510169号「視覚障害者用誘導ブロック」
4)特許第3410412号「視覚障害者用歩行補助装置」
 
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