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林産試だより2005年1月号 北海道のバイオマスの概要と展開
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北海道のバイオマスの概要と展開

北海道水産林務部 木材振興課 需要推進グループ 上島 信彦


● 木質バイオマスエネルギーとは

 バイオマスエネルギーって何?

 最近,「バイオマスエネルギー」という言葉をよく耳にします。「バイオマス」とは生物体,つまり木や草や動物のこと。それらを加工した干草や,ごみとなった端切れや糞尿までもが含まれます。これらの「バイオマス」から得られる熱や電気が「バイオマスエネルギー」で,たとえば木を燃やして暖を取ることも立派なバイオマスエネルギー利用です。
 そんな古くからの利用方法がなぜ今注目されてきたのか,その理由は,バイオマスエネルギーは大気中に二酸化炭素を増加させないからです。
 石油を燃やせば二酸化炭素が出ます。木を燃やしても二酸化炭素が出ます。ここまでは同じ。しかし,木は生長するときに大気中の二酸化炭素を吸収して枝や幹を形作ります。つまり,木を燃やして出てきた二酸化炭素は,もともと大気中にあったものを木が吸収したもの。木の一生で見れば,大気中の二酸化炭素の量は変わっていません。一方,石油を燃やすことは地面の奥深くにあった炭素を大気中に放出することですから,大気中の二酸化炭素が増えてしまいます。
 バイオマスのエネルギー利用はそれ自体ではプラスにもマイナスにもなりませんが,バイオマスエネルギーの利用によって,石油などのエネルギーの使用量を減らすことができたら,全体としては“二酸化炭素の放出量は減った”といえるでしょう。そのため,近年,後述の地球温暖化防止の観点から,バイオマスエネルギーの利用が推進されてきています。


図1 バイオマスエネルギーとは(平成14年度 森林・林業白書より引用)


 バイオマスエネルギーの利用方法

 現代は,ボタンひとつで暖房や明かりがつけられる時代。いくら環境のためだとは言っても,焚き火をしたりたいまつをともしたりするのはできません。現代のバイオマスエネルギー利用は,やはり,ボタンひとつで動くものを目指しています。
 たとえば,発電所で木を燃やして発電する方法。使う側は今までどおりの使い勝手で何の不自由もありません。さまざまな用途に利用することもできます。
 また,液体にしてしまう方法もあります。車の燃料ならこの方が向いています。
 また,固体のままでもペレット状に加工して,灯油ストーブと変わらない使用方法(自動着火,自動供給など)を実現したものもあります。


● 地球温暖化防止の枠組

 世界各国の合意『京都議定書』

 地球温暖化は,1国のみならず,全世界に共通する課題です。地球温暖化に関し科学的な議論を行う「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」では,21世紀末までに大気中の二酸化炭素の上昇により,地球全体の平均表面気温が1.4~5.8℃上昇,海上水位が0.09~0.88m上昇すると予測しています。
 この状況を少しでも改善するため,「気候変動に関する国際連合枠組条約(気候変動枠組条約)」が締結されました。また,京都で開催された気候変動枠組条約第3回締結国会議(COP3)では,京都議定書が制定され,各国の具体的な削減目標や削減の方法等について定められました。京都議定書は,平成16年11月のロシアの批准により,平成17年2月16日に発効することとなり,地球温暖化防止対策の推進が期待されています。
 しかし,現在のところ,二酸化炭素を大量に放出しているアメリカが不参加を表明しており,そもそも京都議定書は排出を抑制するだけで改善にまではいたらないなどの課題があり,気候変動枠組条約第10回締結国会議(COP10)では,2005年に次の段階(2013年以降)の対策を協議することに決まりました。

 国内の動き

 京都議定書によれば,日本は2010年度までに1990年に比べて6%地球温暖化物質を削減しなければなりません。この目標値を達成するためにはエネルギー使用量の削減と新エネルギーによる化石燃料からの脱却が必要で,木質資源や家畜糞尿からなるバイオマスから33万kWの発電と,67万kl(原油換算)の熱利用を進める必要があるとされています(新たな地球温暖化対策推進大綱)。
 北海道では,平成15年度に「北海道森林づくり基本計画」を定め,平成24年度までに,木質バイオマスのエネルギー利用量を現在の2倍の40万m3にする計画を立てています。
 また,地球温暖化防止対策以外にも,木質バイオマスのエネルギー利用にはさまざまな効果が期待されています。これまで利用度合いの低かった小径木等の未利用木質資源で木質バイオマスエネルギー利用が進めば,その収益が山側に回り,切捨て間伐の解消や,間伐遅れ林分の解消など,森林整備の促進につながります。
 また,木質バイオマスは地域にある資源であり,かつ,地域でエネルギーに変換できる資源なので,木質バイオマスのエネルギー利用は地域の産業の活性化をもたらします。


● 具体化に向けて

 1970年代のオイルショックでは,石油の代替として,日本でも,ペレットやオガライトなどの木質バイオマスエネルギーが使われました。
 しかし,需要量に対して供給量が多かったこと,オイルショックの収束により需要が減ってしまったことなどにより,ペレットやオガライトなどの工場はどんどん閉鎖され,岩手県の葛巻林業など,ほんの数社が残るのみとなってしまいました。
 北海道でも同様に,オイルショックの収束後,ペレットやオガライトの需要は減少し,メーカーも次々と撤退,ついには家庭用の木質燃料は生産されなくなってしまいました。
 現在の木質バイオマスのエネルギー利用は,当時の反省を踏まえ,より低価格で,より効率的に行われることが求められており,低コストで木質燃料を供給する方法や,ガス化により効率を上げたりする試みが進められています。

 道内での取り組み事例

 道内では,オイルショック以降初めて滝上町でペレットの生産が始まりました(写真1)。規模は年産300トンで,道内の木質バイオマスエネルギー利用の火付け役となり,確実に利用者が拡大してきております。
 また,従来から製材工場などでは,樹皮や端材を燃料として木材乾燥等の熱源に利用しています。
 そのほか,全道各地で木質バイオマスエネルギー利用の検討が行われています(図2)。


写真1 滝上町ペレット生産組合

図2 木質バイオマスエネルギー取組状況(平成16年8月現在)

● 明るい未来に向けて

 さまざまな効果が期待され,着実に進んできている木質バイオマスのエネルギー利用ですが,まだまだ少ないというのが現状です。
 皆さんが,少しでもバイオマスエネルギーに理解をいただき,できればご自宅の暖房など,ご自身でご活用いただければ,きっと,木質バイオマスのエネルギー利用が進み,地球温暖化の防止やそのほかの効果が期待できます。

 
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