本文へ移動
林産試だより2005年1月号 ペレット燃料ふたたび
トップ>木に関する情報>林産試だより>

ペレット燃料ふたたび

利用部 物性利用科 山田 敦


 はじめに

 平成16年1月,網走管内滝上町の滝上町木質バイオマス生産組合(眞貝眞佐喜理事長)がトドマツおが粉を原料としたペレット燃料の商業生産に着手しました(写真1)。


  写真1 滝上町のペレット燃料

 ペレット燃料とはおが粉などの木材の粉砕物を熱と圧力で径6~8mm,長さ1~2㎝の円筒状に成形したものです。木質成形燃料としては日本独自の技術であるオガライト(通称オガタン(オガタンは本来,オガライトを炭化したもの))が有名ですが,ペレット燃料は粒が小さいため自動供給や細かい温度調整ができます。
 1970年代の石油ショック以来,道内においても3件のペレット燃料工場が設立され,業務用ボイラー向けに細々と生産を続けてきましたが,原油の値下がりにともない灯油などの便利な液体燃料に駆逐され平成3年にはすべての工場が生産を停止しています。


 なぜペレット燃料なのか

 1997年の京都会議(COP3)以来,地球温暖化防止のために温室効果ガス(二酸化炭素,メタンなど)の発生抑制が世界的な命題となっています。木材などのバイオマスは光合成により空気中の二酸化炭素を固定し再生産が可能なので,石油等の化石燃料の代替とすることにより二酸化炭素発生抑制に効果を持つと期待されています。我が国においても「バイオマスニッポン」の名のもとに種々の取り組みがなされています。
 しかし,バイオマスは単位体積当たりのエネルギー量が化石燃料等に比べて低く,山林や農地などに分散して存在しているため,収集や輸送にコストがかかる燃料です。また,利用技術も開発途上の部分が多く,数十億円もの設備投資を行っても十分な利益回収が出来ている事例はあまりありません。
 滝上町では当初,地域の森林資源を活用したバイオマス発電を検討したようですが,施設整備や収集にかかるコストを考慮し断念しました。

 一方,北海道では冬季の暖房用として年間400万klもの灯油を消費しており,家庭用の灯油消費量は全国平均の2.7倍と言われています。この一部でもペレットや薪などの木質バイオマスで代替できれば,地球温暖化抑制に大きく貢献することができます。
 しかし,スイッチ一つで部屋が暖まる灯油ストーブに慣れている世代に「環境のために良いから薪ストーブを使え」と言っても理解が得られません。そこで滝上町は,灯油ストーブと同じように自動運転が可能で,薪などに比べて高比重で貯蔵や運搬コストがかからない(ハンドリングに優れた)ペレット燃料に着目しました。

 岩手県葛巻町では現在でも広葉樹バークを原料としてペレット燃料を製造し,町内のボイラー施設等に供給しています。折からのバイオマスブームにのり,その取り組みが全国的に注目されています。 しかし,欧米などで家庭用に使われているペレットストーブは,灰の後始末を楽にし効率的に燃焼させるために,灰分の少ないおが粉を原料としたペレット燃料(ホワイトペレット)を使用するように限定されています(写真2)。


写真2 ペレットストーブとトドマツペレット燃料

 林産試験場では過去にカラマツおが粉を原料としてペレット燃料を試作した経緯があり,当時のペレッティングマシンもそのまま残されていました。そこで眞貝理事長らが林産試験場の指導を受け,町内で産出されるトドマツおが粉を原料としたペレット燃料の試作に取り組んだところ,輸入ホワイトペレットと遜色のない性質を持つペレット燃料を製造できることが明らかになりました。


 ペレット燃料の造り方

 ペレット燃料の造り方を図1に示します。まず林地残材,工場廃材の木質系バイオマスを破砕機によっておが粉状にします。原木など大きくて含水率の高い原料を粉砕する場合は,一度チップ状に粉砕(一次粉砕)し乾燥したのち,再度おが粉状にまで粉砕(二次粉砕)します。


 ペレット燃料を製造する上で一番重要な工程は乾燥です。ペレッティングマシンの能力(圧力・温度)にもよりますが,原料水分が高いと固まらず,原料水分が低いほど比重が高いペレットができます(図2)。
 成形した直後のペレット燃料は,成形時の摩擦熱によって高温状態になっています。冷風により,温度を下げるとともに水分もある程度落として完成します。
 林産試験場で試作したペレット燃料の諸性質を表1に示します。真発熱量は16.5~23.4MJ/kgであり,単位あたりのエネルギー量は灯油の半分程度です。しかし,水分は10%以下で安定しており生木などに比べて燃料として優れています。おが粉を原料としたペレット燃料の灰分は0.3%程度ですが,バークを原料としたものは6%と高く,おが粉の約20倍もあります。

図2 原料水分と製品比重の関係(バーク)表1 各種ペレットの真発熱量および水分・灰分
 

 今後の課題

 滝上町のペレット工場は順調に稼働していますが,北海道においてペレット燃料が確固たる地位を得るためには,次のような課題があります。
(1)需要拡大に向けた技術開発
 ペレットストーブや薪ストーブはペンションの暖房という認識があるようです。マンションなどにも使えるような暖房機器の開発や活用方法の提案等を行い,都市部での需要を確保する必要があります。
(2)低コスト化の推進
 現在は,灯油等に比べて割高なペレット燃料ですが,生産ラインの自動化や生産規模の拡大により価格を下げることが可能です。
(3)規格化の検討
 安定した自動燃焼を可能とするためには燃料の規格化を進めなければなりません。さらに建築廃材を原料とした場合では,燃やした際に有害ガスを発生する可能性があります。安心して使うためには検査体制の確立が望まれます。

 これらの課題を解決することにより,ペレット燃料は豊富な森林資源を持つ北海道の新たなエネルギー源としての活用が期待できます。また,未利用木質資源の新たな用途として林業・林産業界の発展や山村地域における新たな産業の育成にも寄与できると考えます。

 
前のページへ 次のページへ

トップ>木に関する情報>林産試だより>