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林産試だより2005年1月号 木材のサーマルリサイクル-バイオマスエネルギー利用方法-
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木材のサーマルリサイクル
-バイオマスエネルギー利用方法-

性能部 防火性能科 由田 茂一


 はじめに

 「サーマルリサイクル」とは,廃棄物から熱エネルギーを回収して有効利用するという意味です。木材の場合には,あえて製材等に使えるものを熱エネルギーに変えるということではなく,製材工場から出る端材や住宅解体時の廃木材,さらには林地残材(伐採時に林地から出材されずに残る末木など)などを木質燃料として有効利用しようということになります。日曜大工等で余った端材を敷地内でただ腐らせるのではなく,もったいないから薪に使い,灰は植木にあげようということです。


 どのような利用方法があるのか?

1.ストーブ
 身近な木質燃料の利用を考えると,まず思い浮かぶのは薪ストーブや暖炉ではないでしょうか。薪ストーブといっても,最近では鋳鉄などを使って意匠性や蓄熱性を高めたものだけではなく,供給空気や燃焼ガスの流路を工夫したり触媒を使って燃焼効率を良くし灰やススの量を抑えるものがあります。写真1は,薪だけではなく,ペレットやおが粉・鉋屑でも効率よく燃焼できるストーブです。このようなストーブのほかに,暖をとるためだけではなく上部をオーブンなどにして調理など利用範囲を広げたものもあります。

 しかし,ほとんどの人は燃料の確保や自動点火など簡単・便利な石油ストーブに慣れ親しんでいるため,薪ストーブを主たる暖房設備にするとは考えにくくなっていると思います。これに対応できるものの一つに,木質ペレットを燃料にするペレットストーブがあります。FF方式で操作方法は石油ストーブと遜色ありません。ペレットは輸入品のほかに道産品があり,入手は簡単です。あえて改良が必要と思われる点を挙げると,石油の場合は屋内・外に設置したタンクからポンプでどこにでも供給できますが,ペレットはストーブ内のタンクに自分で供給する必要があります。このため,大きなスペースではありませんが,ペレットの保管場所とストーブ内のタンクへの供給の手間が必要です。また,現在のペレットストーブはがっしりとした重量のあるものが多いため,既製の住宅の場合,ストーブの置き場所に補強が必要な場合もあります。しかし,重量のあるストーブ本体が暖まるため蓄熱性がよく,これに起因する遠赤外線の効果と思われますが,石油ストーブからペレットストーブに替えたら暖かく,またランニングコストが下がったという声もあるようです。

2.ボイラ
 ストーブは暖をとることを主目的に木質燃料を利用していますが,熱エネルギーを生産の現場に利用しているのがペレットボイラやチップボイラ,木屑だきボイラなどです(写真2)。製材工場などでは暖房や製材品の乾燥に利用しています。なお,写真3はペレットボイラに使われるバーナです。また,最近は銭湯の前を通ると廃木材が山積みになっているところもあります。木屑だきボイラとして多いのは煙管ボイラ(水部ドラム内を通過する多数の煙管により加熱する方式)ですが,これより効率を良くしたものに大型の水管式(燃焼室内を通過する多数の水管により加熱する方式)のものがあります。また,ボイラのタイプが異なるだけではなく,バーナを石油用とペレット用に交換可能なものもあります。

3.コ・ジェネレーションシステム
 ストーブやボイラは熱だけを利用するもので,ボイラの効率は,タイプや使い方によっても異なりますが,40~60%のものが多いようです。この効率をもっと高めようというのが,よく耳にするようになったコジェネ(コ・ジェネレーションシステム)です。これは,一つのエネルギー源から二つ以上のエネルギーを取り出し,利用しないで排出するエネルギーを減らすという考えで,現状は熱と電気として取り出す方法がほとんどのため「熱電併給」と訳されています。この利用方法では,効率は70~80%になると言われています。

 木質燃料から電気エネルギー・・・ということから連想されるのは火力発電だと思います。火力発電所ではボイラで発生させた過熱蒸気で蒸気タービンを回転させ発電機を回しています。この方法をとる場合の問題点は,一般的な蒸気タービンの容量が数百kW以上と大きいことや蒸気タービンを通過した蒸気を復水する装置など設備が大がかりになるということです。このため,個人や小規模での利用は困難です。また,使用する木質燃料も膨大で,安定的な確保は難しいと考えられます。これを小型の装置で実施できる方法として,ガス発電や後で説明するスターリングエンジンの利用が考えられています。

4.ガス発電
 ガス発電とは,木質燃料を熱分解して発生した可燃性ガスでエンジンを動かし発電機を回すというものです。また,その際のエンジンの冷却水や排気からも熱エネルギーを回収し,併せて利用しようというのがコジェネです。フローの一例を図1に示します。ガス発生炉で発生したガスは塵灰やタールを含んでいるため,これらの除去が必要です。また,エンジンの回転に必要なガス量を供給するために常温まで冷却する必要があります。なお,ここで利用する主な可燃性ガスは一酸化炭素です。

 ガス発生炉の形式には,発生ガスの流れる向きなどにより多くの種類があります。図2に一例を示しました。aは発生ガスを燃焼部の上部から取り出す方式で上向き通風式(アップドラフトタイプ),bは燃焼部下部から取り出す方式で下向き通風式(ダウンドラフトタイプ)と呼ばれています。aは一般的に利用されてきたタイプで,ガスの発生量が多く,また燃料の形状や含水率に対して大きな自由度があります。しかし,発生ガスにタールが多く含まれるため,このまま利用すると内壁に付着しトラブルの元になるのでフィルタで除去したり,燃料にタールがほとんど発生しない木炭を用いフィルタの簡素化を図る必要があります。これに対して,bは大部分のタールが温度の高い部分を通過する際に分解されるので,内燃機関に利用するには有利ですが,aに比べて発生ガス量が少なく,また燃料の形状や含水率への要求が高いというデメリットもあります。

 林産試験場では,木質系バイオマスのサーマルリサイクルの一例として,木質ペレットを燃料にまずダウンドラフトタイプのガス発生炉を製作して163ccの発電機を動かし,次いでコジェネに改造しようと現在試作中です。この文章が掲載されるまでには試運転したいと思っています。本州では,民間団体や公設の研究機関などで小規模なガス発生炉によるデモンストレーションが行われていますが,北海道でも実施したいと考えています。

5.スターリングエンジン
 スターリングエンジンとは,閉じた系内に加圧封入した水素などの作動媒体を外部から加熱・冷却することで動作する外燃機関です(図3)。燃料は加熱用に使われるので種類を選びません。この点で,木質燃料の利用には向いていると思います。これまではメンテナンスが容易で長期間運転できるスターリングエンジン自体の開発が難しかったようですが,ドイツやアメリカなどで改良され,スペインでは稼働しているとの報告もあります。国内では,林野庁の補助事業の中で研究開発がなされています。

6.その他
 ②に木質燃料をボイラ燃料とし,熱エネルギーを利用する例を記しましたが,それ以外の利用方法としてボイラで発生させた蒸気で小型の蒸気タービンを動かし,工場の動力としているところがあります。目的が発電ではないため,小型の蒸気タービンは独自に開発したようです。この他に,家畜の糞尿処理などで発生させたメタンガスのコジェネ利用として検討されている,マイクロガスタービンの流用も考えられると思います。燃料の利用方法としてはガス発電と同様です。しかし,マイクロガスタービンは,硫化水素などの不純物の通過に対しては,軸受けの構造から,一般的なエンジンより強いとも言われます。木質燃料のコジェネにも利用できるのではないかと考えます。


写真1 ストーブ

写真2 チップボイラ

写真3 バーナ

図1 ガス発電のフロー例

図2 ガス発生炉の例

図3 スターリングエンジンの原理(ディスプレーサ型)
作動媒体は封入されており,外部からの加熱で動くので,燃料を問わない。

 おわりに

 木材のサーマルリサイクルについて紹介しましたが,薪・チップ・ペレットなどを使用するストーブ・ボイラ・バーナは,残念ながら外国製品が先行しています。また,ガス化発電については古くからある完成された技術といわれながら長時間の連続運転が難しく,5年ほど前までは実用装置は日本では1台,世界中でも数台と言われていました。現在,商用稼働している台数はよくわかりませんが,環境意識の向上や持続可能なバイオマスエネルギーの利用方法としてガス発電が色々なところで,また色々な規模で試作や実用化試験が進められています。それらの結果がここ1~2年に報告されることでしょう。結果が楽しみです。

 
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