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林産試だより2005年2月号 カラマツ材の割れと接合部について
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カラマツ材の割れと接合部について

性能部 主任研究員 前田 典昭


 カラマツも径級30cm以上の大径材が出荷されるようになって,断面が12×30cmといった,ムクの大断面材を見かけるようになりましたが,なかには割れが目立つものもあります。
 木造建築物に使用されている柱や梁などの構造用部材に,施工中あるいは工事完了後に割れが観察された場合,外観上の見栄えはもとより強度的な劣化を懸念するのは当然です。
 特に柱と梁,梁と梁,トラスの部材同士等をつなぐ接合部では,木材の表面に発生する割れが強度におよぼす影響を考える必要があり,現在研究を進めています。今回は,部材を金物を使ってつなぐ場合の割れの影響について紹介します。


 割れはなぜ発生するのか

 木材は,周囲の温湿度が変化すると,それに見合った含水率に変化しますが,このとき,収縮あるいは膨潤といった形状の変化を起こします。例えば,含水率が下がると収縮します(乾燥による収縮)。また,木材内部の含水率にはムラがあるので,形状変化の度合い(ひずみ)が場所によって異なります。人工乾燥時だけでなく,通常の使用状況でも温湿度は変化しますので,ひずみは変化します。さらに,木材中の水分は表面からしか外気に放出されないので,乾燥していく木材では,内側の含水率が高く外側が低い状態になります(水分傾斜)。そのため,乾燥していく木材の表層は,収縮によって,ちょうどたがで締め付けるように内部を締め付けていることになります(図1)。急激な乾燥や,急激な周囲温度の低下などで,表層の収縮が大きくなりすぎて限界を超えると,木口割れや表面割れ(写真1)の発生となるわけです。


図1 割れが発生する原因
 
写真1 乾燥により生じた接合部の割れの状況

 割れの原因にはこのほかに,成長応力によるもの,立木や丸太の状態で傷つけられた場合がありますが,これらは製材時に判別できるので,ここでは対象としません。
 周囲の温湿度により,木材の変形しやすさや,ねばり強さは変化します。また,曲げや引張り等の外力が加わると,表層に強い力が働いて,割れを抑制したり,促進したりすることも考えられます。さらに,時間が経つと木材内部に生じた力が減少するという現象(応力緩和)があります。割れの発生や伸長は,これらの影響を受けますので,現実には多様な割れが発生しています。また,いつ発生するかが予測しにくいだけでなく,いったん発生した割れもずっと同じ形のままではありません。


 規格の上での割れの取り扱われ方

 曲げや圧縮・引張といった木材の強度性能に,割れが及ぼす影響は小さいというのが現在の考え方となっています。このため針葉樹の構造用製材の日本農林規格では,割れに関しては二面以上にまたがる割れ(貫通割れ)のみが等級を決定する上での評価の対象となっていて,一面だけにしかない割れは,強度に影響しないと判断されています。
 もともと曲げ強さやヤング係数の高い,すなわち密度の大きい材は乾燥による収縮量も大きく,このため割れの発生する頻度が高くなります。従って,強い材は割れやすく,弱い材は割れにくいので,全体をながめると見かけ上影響は無いように見えます。だからといって,割れの発生が強度低下に影響しないとは言い切れるものではありません。
 特に,多くの接合部では,ここで紹介するドリフトピン接合(図2)のように,木材がせん断(ある面を境にして互いに反対方向に力が働いている状態)に抵抗する機構になっているので,抵抗に寄与する有効なせん断面積(図2の斜線部)が減少するような割れが入ると,接合部の耐力が低下することが十分に予測されるため配慮が必要です。


図2 ドリフトピン接合と有効せん断面積

 接合部性能へどのような影響を及ぼすか

 少し難しくなりますが,屋外に設置されたカラマツ材使用の屋根トラスで,割れの発生が認められた接合部について,せん断強度試験(写真2)を行なった結果を図3に示します。接合部の形式は,鋼板挿入型のドリフトピン接合です。


写真2 接合部のせん断強度試験
・木材が壊れるまで引っ張って力を加え,力の大きさと変位を測定します。
・壊れたときの力,壊れ方なども調べます。

図3 表面割れの接合耐力への影響

 まず,グラフのそれぞれの軸について説明します。
 Y軸の接合耐力比とは,接合部の強さを表す一つの指標で,値が大きいほど,強い接合であるといえます。
 X軸の割れ深さ比は,試験時にドリフトピンが木材を押している側(荷重負担側)に近接する割れの深さを材幅当りの値に換算したものです。
 ところで,接合耐力と割れの深さや長さ,面積との関係について調べたところ,深さの依存度が一番高いことがわかりました。割れ深さ比の増加に従って接合耐力比の減少が見られるため,ドリフトピンにかかっている割れが深いほど,接合が弱くなるということがわかりました。


 割れを人工的に再現することは可能か

 様々なパターンの割れを自然発生を待つことなく人工的に作り出すことができれば,接合強度への割れの影響をより短期間にかつ適正に検証することが可能になります。
 しかし,表面に見える繊維走向に沿って鋸などを使って類似したものは作り出せそうですが,木材繊維組織の一部が失われてしまう上,すべての繊維に平行な割れ面を作ることは困難で,少なからず加工面に目切れを生じさせてしまいます。
 例えば図4に示したような,抜け節のある板材とドリルによって穴開け加工されたものを考えてみます。どちらも同じような円筒に抜けていますが,その周辺の木材繊維の状態には大きな違いがあります。節周辺の繊維はすべて連続しているのに対して,ドリル加工したものでは繊維が切断されて,内部の応力を伝達する機能を失っています。これと同様に,自然発生的な割れと人為的に形成したものでは,応力の伝達機構に違いが生じることは避けられません。割れを再現するには,この違いを小さくする,あるいは対応関係を明確にすることが不可欠となります。


図4 抜け節とドリル穴の違い

 割れを防止するには

 割れを発生させないためには,使用環境に応じた適正な含水率となるよう材の乾燥を行なうことが大事です。また,雨ざらしや直射日光を受けるような温湿度変化が大きい状態に,木材をおかないような使い方をすることです。
 屋外やそれに近い環境での使用が避けられない場合には,乾燥により含水率を使用環境下で想定される含水率変動の平均的な値に近づけておくことが必要で,これにより割れの発生を最小限に食い止めることが可能になります。
 割れの発生が避けられない状況では,のこなどで前もって割れを入れておく,背割りが有効です(図5)。背割り部分にひずみが集中することによって,乾燥による他の部位の割れを減少させます。背を割るに当っては,どの材面に施すかが重要です。乾燥後に断面形状が変化すること,接合部などで生じるせん断力が背割りの割裂面に一致しないこと(図5右上),仕口加工や補強金物の取付けに支障がないことなどを考慮して決定します。


図5 背割りの効果

 木材乾燥の重要性

 木材は建築構造用をはじめ様々な用途がありますが,材料供給する側で最も重要な点は乾燥です。不適切な乾燥は,ここで述べた割れだけでなく断面寸法の変化やくるいなどを引き起こし,木材を使った住宅や商品の性能や耐久性を低下させるなどの弊害をもたらします。木材を活用する場合に,乾燥が欠くことのできない基本技術であることを改めて認識していただきたいと思います。 

 
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