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林産試だより2005年2月号 <海外研修報告> カナダ,アメリカにおける乾燥材生産の現状
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<海外研修報告> カナダ,アメリカにおける乾燥材生産の現状

技術部 製材乾燥科 伊藤洋一


 はじめに

 北海道自主企画外国派遣研修により10月12日~21日(10日間)の日程で,バンクーバー(カナダ)とマディソン(アメリカ)に行ってきました。今回の研修では,これまであまり開発されていない方式の木材の人工乾燥法や,現在日本で普及している乾燥装置の改良方法および今後製造される人工乾燥装置へ付加することができる技術について,調査を行いました。また,乾燥材利用の事例についても調査しました。この調査では,次の研究機関,民間企業を訪問しました(①~③はカナダ,④はアメリカに在ります)。
①UBC(ブリティッシュ・コロンビア大学)(写真1
②Forintek(カナダ林産試験場)(写真2
③インターナショナル・フォレスト・プロダクツ株式会社エイコーン工場(写真3
④FPL(アメリカ国立林産試験場)(写真4


写真1 大学内で使用されている構造用集成材
(UBC, ブリティッシュ・コロンビア大学)

写真2 実験用減圧加熱式人工乾燥装置
(Forintek, カナダ林産試験場)

写真3 乾燥材(奥)と未乾燥材(手前)の梱包
(インターナショナル・フォレスト・プロダクツ株式会社エイコーン工場)

写真4 人工乾燥自動制御システム
(FPL, アメリカ国立林産試験場)

 カナダ,アメリカにおける木材乾燥

 カナダとアメリカの乾燥材生産において共通して言えることは,割れや狂い等で多少使えない部分が出ても,その部分は他の用途に利用し,大量生産することでそれらの無駄を補うという考え方にあると思います。したがって,正角材においては基本的な桟積み方法は,心持ち材も心去り材も区別することなく,一緒に積む方式を採用しています。
 ただし,人工乾燥後の仕上がり状態には特にこだわりを持っており,面取りを含めたプレーナー加工は必須と考えているようです。また,減圧加熱式(加熱方法は蒸気,電気,またはその併用等さまざま)の乾燥装置を採用していることが少なくなく,乾燥時間は日本で採用されている標準的な蒸気式人工乾燥より長くかかる場合が多いのですが,より低い温度帯(60~90℃)での乾燥が可能であることから,乾燥材の変色を抑えることができます。

 更に,写真3のように,乾燥材に対しては完全梱包(底面は除く)しており,輸送中の含水率変化をできるだけ抑えるよう配慮しています。また,未乾燥のまま出荷する製材に対しても,木口面と上面については風雨をしのげるように覆っており,日本の製材に対する扱い方とは随分違うようです。

 また,乾燥装置には水を使わずに湿度を計測することができる温湿度センサーを採用していました。水が不要であることの一番大きなメリットは,定期的に水を管理する手間が省けることです。例えば,土曜と日曜が休日の会社であっても,木材乾燥の担当者は乾燥装置の湿球水の点検のために出社する必要があります。しかし,このセンサーはその手間が不要なので,労力と時間外手当の削減に大きく貢献していると思われました。将来的に,このタイプのセンサーの信頼性が上がり,かつ価格が下がれば,日本で使用されている型式の乾燥装置にも導入していくことができるでしょう。


 2×4工法の住宅見学

 今回は上記訪問先のほかに,実際に乾燥材を使って住宅を建てている現場(写真5),完成後の住宅(写真6)にも行ってきました。案内していただいたのは,現地で20年以上木造住宅建築に携わっている「ベストホームズ3000」の三好社長(通称マイクさん)です。マイクさんは日本生まれですが,カナダへ移住して25年以上になるベテランの建築家です。彼が手がけた家のひとつに,がけの上の建築現場にヘリコプターを使って資材を運搬(写真7,8)して建てた家があります。地元の新聞には,「クリフ・ハンガー・ホーム」(絶壁に立つ家)という見出しの記事が載りました。


写真5 2×4工法住宅の建築現場
(カナダ,バンクーバー郊外)

写真6 2×4工法による一般的な住宅
(カナダ,バンクーバー郊外)

写真7 ヘリコプターによる建材運搬
(写真提供:ベストホームズ3000)

写真8 ヘリコプターによる通し柱の釣り込み
(写真提供:ベストホームズ3000)

 また,マイクさんはカナダの首相が来日したときに案内役として同行したこともあり,カナダと日本の住宅の長短所をよく知っています。
 マイクさんは,「カナダ式の2×4工法住宅は,将来必ず日本で普及する」と予言しています。確かに,在来構法に比べて2×4工法の住宅は,熟練した大工さんがいなくても建てることが可能なパネル化やプレカット化がしやすいというメリットを持っています。

 しかし,カナダでは次のような独特の住宅建築時の決まりごとがあります。
①新築時の延床面積の約6倍まで増築が可能である
②新築時の(各自治体から派遣される検査官による)立ち入り検査が15~20回あり,そのすべてに合格しなければ,売買契約が成立しない仕組みになっている

 このように日本とは異なるシステムになっていることも考え合わせる必要はあります。
 現地では含水率変化による狂いが大きい樹種として認知されているヘムファー(ベイツガ)が使われていますが,これをカラマツに置き換えることは可能との印象も受けました。
 現在,日本における新築木造住宅戸数に占める2×4工法住宅の割合は16.3%(北海道では21.4%)ですが,年々増加する傾向にあります。将来,カナダ式の住宅が日本でも増えていくかもしれません。

 北海道における在来構法のシェアは減少傾向にあり,平成6年度において86.2%でしたが,15年度は75.0%となっています。もう一度乾燥材の良さを見直すことでユーザーにアピールし,国産材を選択してもらえるよう努力することが重要であると感じました。


 おわりに

 今回の研修では,東京大学大学院の信田助教授,カナダツガ・パートナー協会,カナダ林産業審議会,バンクーバー在留邦人の皆様など,たくさんの方に御協力をいただきました。この場をお借りして感謝の意を表します。

 
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