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林産試だより2005年3月号 特集「自然災害と木材」着氷被害を受けたカラマツは利用できるのか?-日高町での事例を通じて-
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着氷被害を受けたカラマツは利用できるのか?
-日高町での事例を通じて-

林産試験場 着氷被害木 材質検討チーム


 はじめに

 『着氷被害』。聞きなれない言葉ですが,雨が氷点下になっても凍らない過冷却状態で降り,樹木などに付着氷結するなどして,この重みによって起こる幹折れや枝折れ,幹曲がり等の林業被害のことです。
 林産試験場では着氷被害を受けたカラマツ材について調査を行い,強度的には実用上の問題が無いことを明らかにしましたので,その事例を紹介します。


 着氷被害の状況

 2004年2月22日から24日にかけて北海道を通過した低気圧によって,全道各地に暴風雪がもたらされ,日高地方も強い風と雪に襲われました。特に日高町を中心とした局所的な地域では,樹木の着氷被害が発生しました。被害は主に,カラマツ人工林とシラカンバ類の天然林で発生し,人工林の被害面積の8割以上がカラマツ林でした(写真1)。


写真1 着氷被害を受けたカラマツ林

 被害への対策と林産試験場の役割

 このような林業被害に対して,日高町を中心として,沙流川森林組合,日高支庁経済部林務課,日高森づくりセンター,林産試験場で構成する日高町着氷被害対策協議会が設置されました。林産試験場は,被害を受けたカラマツ人工林から生産された木材が一般材として利用できるのか,という観点から被害木の調査を行い,同協議会に情報を提供しました。

 被害によって材になんらかの損傷があった場合でも,パルプ材として粉砕して利用されるならば問題ありません。しかし,パルプ材とした場合には,一般材向けに比べ価値が大幅に低下してしまいますので,被害木が健全材と同等の性能を持っているのであれば,一般材と同様に利用されることが望まれます。


 調査の実施

○調査の進め方

 着氷被害を受けたカラマツから製材した材が一般材として利用可能であるかどうかを調べるにあたって,現地調査・素材調査・材面の観察・強度試験を行い,これらを総合して判断することとしました。

○試験木の採取と採取林分における被害の状況

 試験木を採取するにあたって,着氷被害をパターン別に分けて考えることにしました。着氷被害には,大きく分けて折損と曲がりがありました。そこで,折損を先折れと中折れ,曲がりを大と小の計4つの被害パターン(写真2)に分類して,試験木を採取することにしました。なお,今回の着氷被害では,風倒被害で見られるような根返りは見られませんでした。
 試験材は,日高町字富岡のカラマツ民有林から採取しました。当該林分の林齢は32年,径級は14~32cmで,林分の55%で着氷被害が発生し,その内訳は折損が8割,曲がりが2割でした。
 試験材は,4つの被害形態ごとに各2本選定し,それぞれについて根元から材長3.7mの素材を3玉(中折れについては折損部を中心にして上下2玉)採取しました。

写真2 被害形態 先折れ写真2 被害形態 中折れ写真2 被害形態 曲がり大写真2 被害形態 曲がり小
写真2 被害形態
左から:先折れ,中折れ,:曲がり大,曲がり小

○素材調査

 被害木から採取した素材と通常の素材に違いがあるかどうかを調べるために素材調査を行いました。
 素材調査として,素材の曲がりや節を調査するとともに,材料の曲がりにくさをあらわす動的ヤング係数をタッピング法という簡便な方法によって求めました。また,曲がり木に関しては立木の写真を画像解析し,伐採前の素材の曲がりを推定しました(立木の曲がりの推定については,林産試だより2004年12月,「木の曲がりを測る―雪害木調査の中で―」を参照してください)。
 採取した試験木の詳細と素材調査の結果を表1に示します。曲がり木の矢高については,伐採前の画像解析による推定値との比較になりますが,伐採後には大幅に減少しました。
 また,着氷被害による動的ヤング係数の低下は見られませんでした。

表1 採取試験木と素材調査の結果

○材面の観察

 素材調査を行った後に,被害木を厚さ40mmに製材し,その材面に着氷被害による欠点があるかどうかを目視で調べました。
 折損したり,曲がったりした木を利用する際に,材面の観察で最も注意しなければいけないことは「もめ」の有無です。「もめ」とは,樹幹が強風や雪氷の重さで無理に曲げられ,その結果,曲がりの内側の細胞が損傷し,目視で確認できるような状態に至ったものをいいます(写真3)。「もめ」が生じると著しく強度が低下するため,構造用製材としての利用には注意が必要になります。
 着氷被害木の材面を観察した結果,折損木・曲がり木いずれにおいても「もめ」は確認されませんでした。しかし,折損木の一部においては白色班と呼ばれる白い斑点状の模様が確認されました(写真4)。過去の知見によれば,白色班とは高含水率の辺材から水分がしぼり出されるなどして,材中の水分状態が変化することにより白い斑点状に見えるものをいい,強度には大きな影響を与えない,とされています。

写真3 トドマツの「もめ」 写真4 白色班(○で囲んだ部分)

○材の強度試験

 着氷被害を受けたことにより,材の強度が低下しているかどうかを調べるために,集成材用のラミナのサイズで強度試験を行いました(写真5)。
 強度試験の結果を図1に示します。カラマツ構造用製材の等級である甲種構造材1級の基準強度をほぼ満たし,それを満たさない一部の試験材においても2級の基準強度を満たしました。この結果から,被害僕は通常のカラマツ製材と同等の強度性能を持っていることが明らかになりました。

写真5 強度試験風景

○調査結果のまとめ

 調査結果をまとめると,次のようになります。
・着氷被害木には「もめ」は観察されなかった。折損木の一部で白色班が観察された。
・今回調査・試験した結果では,折損木,曲がり木ともに建築用材としての利用が可能であると判断された。

 カラマツと気象災害

 今回は着氷被害という気象災害でしたが,一般的な森林への気象災害としては風害や雪害などがあります。
 カラマツについては,過去に風害および雪害を受けた材の利用に関する調査が行われています。その結果は,いずれも実用上の問題が無いというものです。これは,スギやトドマツ・エゾマツなどと異なるカラマツの特徴であると考えられます。


 おわりに

 着氷被害を受けたカラマツの利用に関する調査の事例を紹介しました。気象災害は無いに越したことはありませんが,残念ながら発生します。近頃は異常気象などと呼ばれ,森林に対する気象災害が頻発しているように感じます。従って,災害に強い森林を育てることと併せて,災害が起こったときにどのように対応すればよいのかという視点からも森林を管理していく必要があります。
 今回の調査結果が危機管理の一環として,今後の森林管理に生かされるものと期待しています。

 謝辞

 本研究を行うに当たり,日高町着氷被害対策協議会のメンバーである,日高町,沙流川森林組合,日高支庁経済部林務課,日高森づくりセンターのご協力をいただいたことにお礼申し上げます。

 参考資料

1) 山本宏:林産試だより,11月号,1-3(1981).
2) 飯田信男ほか5名:林産試月報,364号,1-8(1082).
3) 中田欣作ほか4名:林産試月報,366号,7-11(1982).
4) 森泉周:林産試だより,8月号,15-18(1985).
5) 丹所俊博:林産試だより,9月号,3-5(2003).
6) 近藤佳秀:林産試だより,12月号,5-7(2004).

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