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林産試だより2005年4月号 木製学童用机天板の使用環境と使用感について
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木製学童用机天板の使用環境と使用感について

技術部 製材乾燥科 伊藤 洋一


 はじめに

 学校の教室という空間は,窓の占める面積が大きく,室外環境の影響を非常に受けやすい場所です。多くの場合,カーテンが付いていますが開け放たれている時間が長く,特に夏休みや冬休みなどの期間はあまり人の出入りもないというような特徴があります。
 このような場合,考慮しなければならないのは教室内の温湿度です。冬季の旭川においても,教室内は夏季と同じような温湿度環境になる場合があります。木材は,温度と湿度の影響を受けて膨張・収縮する材料です。しかし,温湿度に留意して使えば,他の材料より良いパフォーマンスを発揮します。

 そこで,教室内において木材の良さを最大限に引き出すための参考データとするため,旭川市内にある小学校の皆さんに協力していただき,平成10~16年にかけて教室内の温湿度や木製学童用机天板に生ずる割れの測定を行いました。今回はその結果と,測定を通じて児童や先生方,PTAの皆さんからいただいた御意見について紹介したいと思います。


 学童用机のタイプ

 ここでお話しする学童用机は,北海道上川支庁「かみかわ地域道民円卓会議」からの提案により開発されたもので,旭川木材青壮年協議会がデザインし,製造したものです。同協議会では,設立当時から「教育現場に木材を!」との働きかけを関係者に対して行ってきており,この製品にはその願いが込められています。商品名は「アル木メデスク」(幅440×長さ640×厚さ12mm)(写真1)で,ヤチダモの集成材で製作されています。コンセプトは,木のある優しい教育環境づくりです。毎日使う机の天板を木製にすることにより,木材が直接子供たちの手に触れる機会を増やそうとするものです。また,子供たちが1年から6年まで同じ天板を使用することで,「ひとつのものを大切に使う」という教育的効果もねらっています。そして,素材としては北海道にゆかりの深い木材であるヤチダモを採用しています。
 「アル木メデスク」は,後年,異なるデザインのものも開発されていますが,今回お話しするのは最も初期型のものについてです。この天板は従来使ってきたスチール製の机に覆い被せて使用するタイプです(写真2)。天板は,21mm幅の板を集成することにより製造されています。


写真1 木製学童用机天板「アル木メデスク」

写真2 机天板(裏面)と金具取付部

 使用環境について

 この小学校の場合,校庭を取り囲むように校舎があり,1年から6年の教室は方角の違いはありますが,すべて校庭に面して配置されていました。そして,時間帯は異なりますが,すべての教室で直射日光が教室内に差し込む環境にありました。教室の窓にカーテンが引かれていない場合は,時間帯や季節による違いはありますが,教室内総面積の約1/5~1/2の部分に日光が当たります。したがって,そのような位置にある机天板は,日光により熱せられることになります。また,夏休みの場合,教室のドアは閉められていることが多いため,子供たちの出入りがある平常時より教室内の温度は高く(25~35℃),湿度は低くなる(25~45%)傾向にありました。

 また,冬季には教室内はスチーム式のヒーターによる暖房を行っていますが,夏季の場合と同様に教室のドアが閉まっている場合には,温度は30℃弱まで上昇し,湿度は25%まで低下することがあります(冬休み中でも暖房の試運転が必要なため,始業式の2~3日前より教室に暖房が入る)。この時,写真3のようにヒーターと机との距離が近いと,天板は温湿度変化の影響を大きく受けることになります(ヒーターはすべて壁際または窓際にあるが,その位置は教室により少しずつ異なる)。


写真3 天板とヒーターの位置例

 天板の経時変化と対策

 平成10年に旭川市内の小学校に入学したすべての児童は,1年生の3学期から卒業するまで原則として同じ机天板を使い続けたことになります。調査を行ったこの小学校の場合,約120枚のうち,最も多い時期でのべ34枚の天板に幅0.1mm以上の割れが入り,そのうち日射側に割れが入ったのは28枚でした。また,新たな割れは冬季に発生することが多いことから,天板は直射日光とヒーターからの温風との影響を同時に受けていたものと思われました。
 これらへの最も効果的な対策は,換気であると考えられます。ドアを開け放した状態の教室では,約5℃の温度低下と約5%の湿度上昇がありますので,木材の収縮が抑制され,割れの軽減が期待できます。このことは,わずかの手間で済むことなので,改善するための方法として提案できる点です。


 木製天板の使用感について

 実際に使っている子供たちに多かった意見は,
①(机表面が)冷たくないのが良い
②肌触りが良い
その一方で,
③机が重たい
④割れやすい
などの意見もありました。

 また,先生方やPTAの皆さんからの意見としては,
⑤ひとつのものを長い間使い続けることは,ものを大切にすることを子供たちに教える意味で,教育的に良い
⑥(現在の学校には,コンクリートやガラスなど無機材料で造られているものが多いので,)木材などの天然素材をできる限り多く使う方が,健康面や精神面においても子供たちに良い影響を与える
⑦天板を固定するボルトが紛失しやすい
などの意見がありました。

 机が重たくなることは,従来の机に覆い被せるという構造上,最も解決が難しい問題点だと思います。これが影響するのは,放課後の教室掃除の時です。掃除は毎日の作業なので,体の小さい子供にとっては,机移動の際の負荷は多少大きいと言えるかもしれません(1年生の教室掃除は,6年生が行う慣習になっていました)。

 割れやすいという意見は,理科室や音楽室などの教室の机と比べての意見のようです。確かにこれらの机はスチール製なので変形もしないし,割れません。一方で,わんぱくな子供の木製机天板には端から端まで割れの入ったものもあります。中には2回ほど担任の先生や用務員の方が修理した天板もあるようです。しかし,割れが入ったことで,その子供の机に対する扱い方は少し改善されたようです。無理な力を加えれば壊れる。そして,壊れたら先生や用務員の方々にお願いして修理してもらわなければならないということが理解されたのではないかと思います。「割れる」ということは,短所でもあり長所でもあると感じました。

 ⑦については,子供の成長に合わせて机のサイズが大きくなる時など,手軽に取り外せる構造になっていることと,子供たちがイタズラしてボルトを外してしまうことに原因があります。
 また,この他の意見として,(木製天板の使用を通じて)旭川の地場産業の振興にできる範囲で協力していきたいというものもありました。全体的に好意的な意見が多かったように思います。


 おわりに

 先に述べましたが,今回お話ししたのは最も初期型の木製机天板です。天板の加工方法やデザイン面においても改良の余地がたくさんあります。また,すでに机のフレーム構造を改良することにより,強度性能をおとさずに軽量化を図ったタイプのものなども販売されています。今後,卒業した子供たちと同じように,次世代へステップアップさせていきたいと考えています。
 最後になりましたが,今回の調査では調査対象とした小学校の先生方および用務員の方々にたいへんお世話になりました。また,旭川木材青壮年協議会の皆様に御協力をいただきました。この場をお借りして感謝の意を表します。

 
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