Q:住宅家具からのVOC(揮発性有機化合物)の測定について,林産試験場で可能な内容を教えてください。
A:材料や製品から発生するVOCを測定する方法の一つとして,チャンバー法があります。これは,測定したい物をステンレスなどの容器に入れてフタをし,その中でVOCを放散させて濃度を測るという方法です。林産試験場では,小形チャンバー(容量:20L)と,実大の家具を入れられる大形チャンバー(容量:2.7m3)の二つを運用しています。以下に,それぞれの試験の詳細を説明します。
○小形チャンバー法
・この方法はどんな試験ですか?
主に家具に使用する材料単体や,対象となる家具などから切り出した部材を使ってVOCを測定します。2003年からJIS化されています。
・どんな物質が測定できますか?
ホルムアルデヒド・トルエン・キシレン・スチレン・エチルベンゼン・p-ジクロロベンゼンが測定できます。測定物質によって試験料金が異なります。
・測定期間はどれくらいですか?
1日を基本としていますが,塗料や接着剤のように,乾燥によってVOCが減少する材料などについては7日までの延長試験を行っています。また,これに加えて準備や分析に若干の日数がかかります。
・試験体の大きさはどれくらいですか?
16cm角のボード状の材料(厚さは2cm程度まで)が基本となっています。
・得られる数値はどういう数値ですか?
チャンバー内の濃度(mg/m3)とそれから計算される単位面積あたりの放散速度(mg/m2h)です。
・チャンバー内の濃度を室内の濃度と考えて良いですか?
小形チャンバーの大きさと材料の面積の関係は,実際の住宅のなかに家具を入れた状態よりも,かなり材料の比率が大きくなっています。そのため,濃度が高くなっており,実験結果を厚生労働省の濃度指針値と直接比較するべきではありません。ホルムアルデヒドに関しては,建築基準法において放散速度による材料区分が示されているので,評価の参考になるでしょう。その他のVOCについては明確な評価方法が定められていません。
○大形チャンバー法
・この方法はどんな試験ですか?
家具を製品のまま測定することを目的として開発されたものです。近いうちにJIS化が行われる予定であり,試験場では,そのJIS案に極力あわせる形でチャンバーを作製しています。
・どんな物質が測定できますか?
今のところ,ホルムアルデヒドとアセトアルデヒドの2物質です。その他のVOCに関する測定は検討中です。
・測定期間はどれくらいですか?
だいたい1週間程度を基本としています。
・試験体の大きさはどれくらいですか?
最大で高さ160cm,幅100cm,奥行き60cm程度までの大きさの家具を想定しています。
・得られる数値はどういう数値ですか?
チャンバー内の濃度(mg/m3)と,それから計算される単位個数あたり(家具一つあたり)の放散速度(mg/unit・h)です。表面積が容易にわかる試験体であれば,小形チャンバー法と同様に単位面積あたりの放散速度も算出可能です。
・チャンバー内の濃度を室内の濃度と考えて良いですか?
チャンバーの大きさが実大の部屋に比べて非常に小さく試験体の大きさもまちまちなため,この濃度で評価はできません。そのため,林産試験場では条件を変えた複数回の試験結果から室内濃度を予測する評価方法を検討しています。
そのほか,木質材料・接着剤・塗料などのJAS・JIS等級区分に応じたデシケータ試験も行っております。詳細についてはお問い合わせください。
(性能部 性能開発科 朝倉靖弘)
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