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林産試だより2005年7月号 台風被害木から作ったついたてとベンチ
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台風被害木から作ったついたてとベンチ
技術部 加工科 八鍬 明弘


 はじめに

 平成16年9月8日に北海道に上陸した台風18号は,札幌市において,観測史上初めて最大瞬間風速50m/s以上を記録しました。気象庁の風力階級によると,50m/sは風力15に該当し,樹木が根こそぎとなる危険性のある風力10よりも5つも上の階級に該当します。台風18号は山林の樹木だけでなく,身近な樹木にも被害を及ぼしました。
 林産試験場では,今回の台風で被害を受けた2か所の風倒木を利用し,災害復興のシンボルとして,ついたてとベンチを製作したので紹介します。


 北海道大学のポプラ並木の再生

 北海道の観光スポットのひとつである北海道大学のポプラ並木も大きな被害を受けました。この並木の高さ約30mのポプラ51本のうち,今回の台風で19本が倒れてしまいました。
 北海道大学では,早々にポプラ並木を再生することが決定され,損傷の少ない2本の移植を完了し,若木を補植して倒木前の51本に戻す予定です。この再生に当たって「北海道大学ポプラ並木再生支援金」が全国から寄せられ,協力者には倒れたポプラから作製したキーホルダーが配布されました。
 また,このポプラを使って,チェンバロとしてよみがえらせる計画や,オブジェの製作などの利用計画があるそうです。林産試験場では,ついたてとベンチを作り,再生計画に協力しました。

 ポプラから作ったついたてとベンチ

 関係者で打ち合わせた結果,林産試験場ではついたてとベンチを作ることに決まりました。
 北海道大学から長さ160cm,直径約30cmの原木5本が送られてきました。この原木から採材した厚さ40mmと50mmの製材は,出来上がったものは室内で使用することから,仕上り含水率を10%に設定し,約2週間,人工乾燥を行いました。
 ついたては,横からみるとポプラの立木に見えるようにし,正面からみるとポプラ並木の中を散策しているイメージになるように,中央から左右にかけて徐々に板の幅と間隔を広くしました(写真1)。
 ベンチは座板と背板をポプラの葉の形として,葉脈を表現する工夫をしました。当初は,色や年輪の模様の違いを利用して幅はぎした板で葉脈を表現しようとしましたが,乾燥後,比較的明りょうであった色の違いが少なくなったため,あらかじめ,立体的に加工した板を幅はぎしました。その結果,独自性の高い意匠が得られました(写真2)。
写真1 ポプラ並木をモチーフにしたついたて 写真2 ポプラの葉をモチーフにしたベンチ

 これまで,林産試験場ではポプラを利用したことがありませんでした。軽くて加工性が良いという利点がありましたが,反面,今回のポプラには腐れなどが散在しているという欠点がありました。このことから,良質な部材を取り出すのに苦労し,ついたて1基とベンチ1脚分の材料をとった残りはほとんどが廃材となりました。
 なお,できるだけ多くの方の目に触れ,利用していただけることを期待し,ついたては北大交流プラザ「エルムの森」に,ベンチは北海道大学総合博物館内に設置しました。

 知事公館の庭園の再生

 北海道知事公館の敷地は道立近代美術館や道立三岸好太郎美術館が隣接し,庭には広い芝生があり,道民の憩いの場となっています。その庭園には約2,500本の樹木がありましたが,台風18号で約180本の樹木が被害を受けました。北海道では,伐採した丸太を道民に無料で提供したり,被害樹木の診断などを行いました。その後『知事公館・赤レンガ前庭リフレッシュ事業』の中で,林産試験場は,今回の台風被害木を使って知事公館の庭園に設置するベンチを3脚製作しました。


 ニレから作ったベンチ

 ベンチの製作のために,長さが220cm,直径30~50cm程度のニレの原木が5本送られてきました。
 3脚とも,これらの原木から厚さ150mm程度に製材して,かんな掛けしたものを座板と脚部に使用し,背板にはそれよりも若干薄めの製材をかんな掛けして使用し,シンプルな構成として自然の風合いを残すように配慮しました(写真3~5)。
写真3 樹皮をつけたままで自然の風合いを強調したベンチ
写真4 木が横たわる自然のイメージを演出したベンチ 写真5 樹皮をはがし,各所に丸みをつけて実用性を重視したベンチ
 これらのベンチは屋外に設置されるので,今後,変色,割れ,腐れなどが発生すると思われます。末永く使ってもらうためには,1~2年ごとに塗装や修繕などのメンテナンスが必要です。それでも,屋外で使用する木材の劣化を完全に抑えることはできませんので,使う方には,これらも木材の特徴としてとらえていただきたいと考えています。
 これらのベンチは,4月27,28日に開催された『みどりの環境づくりパネル展』で本庁ロビーに展示され,4月29日のみどりの日には「緑の募金街頭活動出発式&赤レンガ庁舎前復旧植樹」で赤レンガ庁舎前でお披露目されました。今は,知事公館庭園で座ってくれる人を待っています。

 おわりに

 私たちに安らぎを与えてくれていた身近な樹木が倒れたり,傷ついたりした姿を目の当たりにすると,いたたまれない気持ちになります。形を変えて,これまで以上に私たちの心を癒してくれることを期待しています。
 
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