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林産試だより2005年7月号 工業所有権等の紹介 木酢液・木タールを用いた土壌被覆材(マルチング材)の開発
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●工業所有権等の紹介

木酢液・木タールを用いた土壌被覆材(マルチング材)の開発
企画指導部 企画課 斎藤 直人


 土壌被覆材とは,雑草の防除をはじめとして地温の安定,病害虫の発生抑制などを目的に,植物の周りに敷設するものを言います(写真1)。通常,安価なチップダスト(パルプチップよりも細かい粉砕物),樹皮,落葉などが,被覆材として使用されます。しかし,樹皮,落葉は軽いので飛散しやすく,腐朽を起こして黒変したり,窒素飢餓を起こして植物の生育に悪い影響を与えたりします。さらに,このような敷設は,美観的にも優れているとは言えません。

 林産試験場では,トドマツ,カラマツなどの間伐材のほか,本州で除伐が進められている竹(モウソウチク)を用いて,その炭化の際に採取する木酢液,竹酢液,木タールと混合する土壌被覆材を開発しました(特許第3026206号)。混合することで芝生の病原菌に対する抑制効果が付与されるとともに,飛散しにくく,耐久性,美観に優れた土壌被覆材となることから,最近使用実績が増えているので紹介します(写真2,3)。

写真1 土壌被覆材の敷設例
写真2 土壌被覆材の敷設前 写真3 土壌被覆材の敷設後

 加熱処理と分解生成物

 木材や竹を炭化する際に,木酢液や木タールなどが分解液として得られます。はじめに,その分解生成物についてお話しします。
 木材は,セルロース,ヘミセルロース,リグニンの三成分を主体に構成されており,それぞれ分解温度が異なります。200~260℃ではヘミセルロースが,260~310℃ではセルロースが,そしてリグニンが310~450℃で主に分解します。その結果,セルロースやヘミセルロースからは水,フルフラール,酢酸,メタノールなど木酢液にかかる成分が,リグニンからはクレゾール,グアイアコールやその重合物(単位物質が化学変化により合わさって大きくなったもの)であるポリフェノールなど木タールにかかる成分が主に生じます。


 木酢液や木タールの効果

 木酢液には酢酸など有機酸が多く含まれるので,その作用として,雑草防除あるいは植物活性効果などが考えられます。一方,木タールにはクレゾールやグアイアコールなどの芳香族炭化水素が含まれることから,その粘結作用,防腐作用が見込まれます。
 そこで,試験的に木酢液,木タールなど分解液を用いて,芝生の病原菌に対する抑制効果を調べたところ,高濃度の分解液を使用した場合に病原菌の菌糸成長を阻止することがわかりました。また,防腐効果についても,加圧注入用の防腐剤であるアルキルアンモニウム化合物(AAC)の20分の1程度の効力が見られました。これには,その強い酸性(pHは2.4)が関係していると考えられるとともに,その酸性成分およびフェノール性成分(弱酸性を示す)に病原菌に対する強い影響が見られました。


 今後の展開

 分解液のデメリットとして,焦げた臭いがする,成分にバラツキが多いなどの課題もありますが,チップダストだけでは4~5年経過すると腐朽したり,非常に細かくなったりするのに対し,木タールによって保護された土壌被覆材はチップ形状を保ち,依然として雑草の防除効果も残存しています。
 現在,増える竹林の処分の一環として,竹の粉砕物と竹酢液を混合する土壌被覆材が,東海地方で実用化されています。雑草防除,景観の維持に効果が認められ,徐々に敷設面積も広がっています。今後道内でも,抜根や流木などの利用されていない木質バイオマスの活用方法として期待されることから,土壌被覆材の量産化に向けた製造方法等をさらに検討していきたいと思います。

 
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