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林産試だより2005年9月号 道産きのこの流通実態
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道産きのこの流通実態
きのこ部 生産技術科 米山 彰造


 はじめに

 平成15年の北海道におけるきのこの生産量は1万7千トンほどで全国でも上位にあり,地域経済の安定と就労の場の確保に大きな役割を果たしています。しかし,近年食生活の多様化に伴い,新鮮さ・美味しさに関する消費者の選別意識は高まっており,産地間競争は激化し,経営環境は厳しさを増しています。

 鮮度が良く美味しいなどの理由から消費者の地産地消型の食品に対する購買意欲は高くなっていますが,きのこ類では,鮮度や美味しさに関する基準が明確に示されていません。そこで,道産きのこの差別化の観点から,消費者が求めるきのこの鮮度や美味しさ(食味)に関する基準について検討するため,まず,きのこの収穫・出荷から店頭までの流通実態を調査することとし,きのこが消費者の手元に届くまでの過程を追跡してみました。

 なお,きのこは乾燥・加工されて流通するものもありますが,文中のきのこは生鮮きのこについて示しています。


 調査対象とした組織と道産きのこの流れ

 きのこ類は青果物の一部として扱われており,その流通経路は卸売市場を経由する卸売市場流通(太線矢印)と市場外流通(点線矢印)とに大きく分けられます(図1)。

図1 北海道における生鮮きのこの流通経路

 今回の調査では一般的な卸売市場流通を想定し,生産者組織3,農業協同組合1,卸売市場2,食品卸(生産者・生産者組織からきのこを買い付け小売店に販売する業態)1,小売店8の計15か所において調査を実施しました。調査項目としてはきのこの鮮度や美味しさに関連づけて,流通期間,保管温度,包装条件について聞き取り調査しました。

 卸売市場流通は生産者・生産者組織→(農業協同組合)→卸売業者→仲卸業者→小売店→消費者という経路をたどっていて,消費者が購入するまでの段階が多くなるため流通期間が長くなることが予想されます。

 一方,市場外流通では卸売市場を経由しない分,流通過程が短くなっており,消費者はより新鮮なきのこを手に入れることができます。市場外流通の代表的なものは生産者からスーパーや生協に販売される直販や産直流通,生産者あるいは生産者組織による直売所や宅配便,インターネットを通じた直接販売(直売)の形態が見られ,近年は市場外流通の比率が増加する傾向にあります。


 流通期間

 図1に示したように卸売市場流通の場合,生産者施設で収穫されてから店頭に並ぶまでにいくつかの流通組織を経由することになります。これに対し直売や直販の場合,最短では早朝収穫されたきのこがその日のうちに店頭に並び,消費者にとっては鮮度の良いきのこを購入することができます。もちろんこれは道内消費者が道産きのこを購入した場合に限られます。

 調査した結果,道産きのこが産地から店頭に並ぶのは,収穫後平均3~4日後でした。ただし,流通組織間での時間調整等により,例外的に平均より長くなる,あるいは短くなる事例もありました。

 一方,道外産として代表的な長野県産や中国産の輸入シイタケ等は東京の市場に一度入荷し,その後道内市場経由で店頭に並ぶまで最低3日を要します。このため輸入品や道外品は道内産に比べ鮮度変化が進んでいると推察されました。

 次に小売店に入荷後,店頭に陳列されている期間,すなわち消費者が購入するまでの期間(回転率)は平均1~2日でした。したがって消費者が購入する時点では,収穫後平均5日経過したきのこが多いと考えられました。


 保管温度と運送手段

 きのこの出荷はトラック輸送が主体ですが,東京,大阪方面へ輸送される場合には,トラック輸送のほか,コンテナ輸送やまれに航空便が使用されることがあります。

 トラック輸送には5~10℃の保冷車,15℃程度の簡易保冷車,常温車の3つのタイプがあります。表1に示したように季節や輸送距離によって使い分けされています。また,輸送時間帯を夜間に集中させ,特に夏季間においても温度上昇をできるだけ避けるようにしています。出荷品は市場に到着後,サンプル程度の量だけセリ場に置かれますが,大部分は冷蔵庫に保管された後,購入先(小売店)に輸送されます。

 小売店では,冷蔵ショーケース中で,平均5~8℃(最高12℃)に管理されています。しかし,特売品として展示される時などは,暑い夏以外,常温の棚に陳列されています(表1)。常温棚に陳列されたきのこは主にシイタケ,ブナシメジ,エノキタケ,マイタケなどが見られました。

表1 出荷品の輸送・保管状況

 包装

 きのこの包装は,トレーとラップの組み合わせ(写真1)のほか,最近ではトレーを使わないピロ包装(写真2)と呼ばれる方式が増えています。特に,包装資材はきのこの日持ち(鮮度保持)が考慮され通気性,透湿性,伸縮性等の機能が要求されているほか,最近では環境負荷の低減を目的とした素材の開発が行われています。生産者や小売店からは日持ちを意識して従来の塩化ビニルラップが支持されていますが,ポリエチレンやポリプロピレン(ピロ包装)系の包装も環境負荷の低減の面から増える傾向にあります。


写真1 トレーとラップによる包装

写真2 ピロ包装

 おわりに

 流通実態調査では,流通経路,流通期間,保管・輸送条件,包装条件等に関する実態が把握できました。それぞれ生産者,流通組織の選択によって多様な状況にありますが,全体を通してみると,収穫したきのこは鮮度が良く,美味しい状態で,多くの消費者の手元に届くように思われました。

 最近では,きのこの生産技術の進歩により,これまで人工栽培が出来なかったきのこも店頭に並ぶようになりました。消費者側から見ればマイタケ,シイタケ等の従来型のきのこに対しては「美味しさ」,「体によい」などについて,購入する時の選択の眼が厳しくなっています。今後は,今回調査した流通実態をもとに,消費者が意識している鮮度や美味しさ等のきのこの品質について検討し,消費者にわかりやすく明示できるような基準を明らかにしたいと考えています。


 謝辞

 本調査にあたり,ご指導ご助言いただいた旭川大学佐々木悟副学長に深くお礼申し上げます。
 
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