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きのこ狩り
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野生きのこのシーズンが本格化してきました。野生ものは,栽培されたきのことは風味,色,鮮度などが異なります。更に健康ブームや本物志向と相まって“きのこ狩り”は愛好家だけのものではなくなりました。きのこには,タンパク質や炭水化物を含み,低カロリーでコレステロールを低下させる活性成分があることなども解明されてきました。栽培されているきのこも含めて,もっときのこを楽しみましょう。 野生きのこは,カラマツなどの針葉樹林や広葉樹林,伐採跡地,庭先,草地などで,生育条件が整えば成長し,人の目に留まります。しかしそのきのこが食べられるかをしろうと判断することには疑問符が付きます。安心して食べるためには,昔からの迷信を信じないで,専門家などに鑑定を依頼してからにしましょう。 それでは具体的にきのこを探索に行きましょう。 ■カラマツ林でカラマツ林には,特徴的な姿で間違うことがないラクヨウ(ハナイグチ)が群生します(写真1,2)。大変美味しいきのこですが,年々発生量が少なくなっています。これは,若齢なカラマツが少なくなって発生に適した環境が少なくなったことが一因と考えられます。しかし意外な所に発生していることもあります。林道や作業路の法面を探してみましょう。きっと見落とされていて1回分のみそ汁程度は採れると思います。 夏から秋にかけて,カラマツなどの切り株や根元に発生する美しいハナビラタケがあります(写真3)。名前のとおり白い花びら状の薄片で,大きいものは直径50cmにもなるようです。このきのこも大変美味しく酢みそ和えなどいろいろな料理方法があります。そのほかには,全体が白く小さく点々と生えるオトメノカサ(秋),黄色くかわいいキヌメリガサ(秋遅く)などの菌根菌や,お酒と相性の良くないホテイシメジ(秋)などがみられます。 |
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![]() 写真1 ラクヨウの発生しているカラマツ林 |
![]() 写真2 ラクヨウ(ハナイグチ) |
![]() 写真3 試験場に持ち込まれたハナビラタケ |
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■エゾマツ,トドマツ林で次に目につく林は,常緑針葉樹のトドマツやエゾマツでしょう(写真4)。マツタケによく似た大きなモミタケ(夏~秋)が林内の地上に群生,単生,輪生しているかもしれません。9~10月に発生するチャナメツムタケは,傘にヌメリがありナメコに匹敵する美味しさで,汁物にすると旨みが浸み出て美味しく食べられます。似たきのこが少なく安心して食べられるハツタケ(夏~秋)も林床に発生します。このきのこは,傘の裏側に傷を付けると乳液を分泌して青緑のシミが残ります。そのほか,出始めは鮮やかな紫色の傘に特徴があるムラサキシメジ(秋)の輪生が出迎えてくれることがあります。 |
![]() 写真4 トドマツ林 |
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■広葉樹林でミズナラやシラカンバ,ニレなどの広葉樹林ものぞいてみましょう。春にはきっと黄色いタモギタケやヒラタケ(春と秋)に出会えるでしょう。タモギタケは,ニオイに虫が寄ってくるため傘が開くとすぐに食害されている場合が多いようです。その場合は,塩水に浸けて虫出しをして食べて下さい。 きのこの御三家に数えられるマイタケ(秋,写真5)やシイタケも探してみましょう。マイタケは,ミズナラ以外にブナ,クリ,サクラなどにも発生することがあるようです。シイタケは,春と秋の2回発生しますが春の方が発生率は高いようです。倒木には,傘にヌメリがあり柄の下が黒いエノキタケ(雪の下,初冬)がひっそり生えていることがあります。ムキタケ(秋,写真6)は,ミズナラなどの倒木に重なり合って生えています。ツキヨタケ(食毒)と混生することがまれにあるようです。気を付けましょう。ナメコ(秋,写真7)もいろいろな樹種の切株などに群生します。傘のヌメリは,ヤマイモやサトイモの粘りと同じ成分が含まれていて,血液がサラサラになる効果があると言われています。 |
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![]() 写真5 野生に近い露地栽培のマイタケ |
![]() 写真6 ムキタケ |
![]() 写真7 ナメコ |
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■身近な場所で公園や庭先などにもきのこが発生します。シャキシャキ歯ごたえが良くおいしいハタケシメジ(夏~秋,写真8)が顔を出していることがあります。ホンシメジにも匹敵するおいしさも魅力です。ワラビと一緒にヨーロッパで人気のアミガサタケ(初春)が発生していることがあります。傘に網目状の突起が付いている特徴があります。ゆでて干して食べるとより味にコクがでるようです。 昨年多く発生したナラタケ(春~秋)は,なじみのあるきのこで昔から食べられており,集材土場跡などにも発生します。6~10月までと次々に現れて楽しむことができますが,これはナラタケと呼ばれるきのこには,ヤワナラタケ,ホテイナラタケなどの種類があって,発生時期が異なるためです。 |
![]() 写真8 ハタケシメジ |
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■ご注意を最後に,夢中になりすぎて山で迷わないようしましょう。道内の自治体のなかには,捜索費用の一部を当人に請求することになったところもあるようです。また毒きのこにも注意して下さい。ムキタケとツキヨタケ,ハタケジメジとクサウラベニタケ,クリタケとニガクリタケ,チャナメツムタケとカキシメジなどは似ていて間違いやすいきのこです(後者は食毒)。道内では,ツキヨタケ,クサウラベニタケ,テングタケによる中毒例が多く報告されています。死亡例のあるタマゴタケモドキ(樹種を選ばずに発生する北方系のきのこ)やクロトマヤタケは要注意。食用とされている野生きのこでも食べ過ぎは中毒を引き起こすことがあるのでほどほどが肝要です。 |
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