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林産試だより2005年10月号 特集『2005 木製サッシフォーラム』 設計士から見た木製サッシ
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 ●特集『2005 木製サッシフォーラム』

設計士から見た木製サッシ
アルクム計画工房 主宰 染谷 哲行


 はじめに

 私は住宅の設計をしています。設計していると,なぜこれを作ったのかということをふと疑問に思い,自分の頭の中はどうなっているのかと思うことがあります。建築家というのは自分と自分以外のものをどういうふうに融合させるか,という仕事だからかもしれません。今日は,海外での旅行や,仕事での経験を中心にお話をして,設計士の頭の中はこうなっている,ということを木製サッシに関連させながらお話ししたいと思います。


 西洋建築

 写真1はパンテオンというローマの遺跡で,今から1900年くらい前にできた建物です。これは直径43mの球を内包するドームになっています。そして天井部には直径9mの円形の窓(穴)がついています。
 これを最初にお見せするのは,私にとって理想の窓である要素をいくつか持っているからです。どこがすばらしいかというと,まずは構造です。球の頂点は構造的に難しいのですが,そこに直径9mくらいの穴を設置することによってうまく解決しています。
 また,デザイン的には,この大きな穴から光が入って全体を照らしながらも,スポットライトのような効果を持たせています。そしてそれは刻々と位置を変えていき,時間の推移が見て取れるところがすばらしいと感じています。
 ただし,雨が降ったときはここから雨が入ってきます。これは現在の建物だとクレームになりますが,自然そのものを感じ取ることができる窓でもあるのです。
 また1900年間という長い年月をメンテナンスフリーで維持している点も,私にとっては理想的です。
 写真2はバチカン市国にある,サンピエトロ寺院です。これは非常に大きな建物ですが,こういう壮大な建物も窓があって初めて内部空間が意識できるのだと思います。
 写真3はパリのセーヌ川のほとりにあるマンションです。こういう建物の外観でも窓というものが表情を作っていることがわかります。
 写真4はベルギーのブリュッセルの建物ですが,これも窓によって非常に楽しさあふれる表情が作り出されていると思います。
 あるとき,ブリュッセルのある事務所のリニューアルを手伝ったことがありました。そのとき実感したのは,我々が普段感じている西洋の伝統的な格好よさというのは,実際には厳しい条例や,長持ちするとか,交換可能といったことに基づいたものである,ということでした。これは,観光で訪れているだけではわからないことで,仕事を通して初めて感じ取り,理解した良い経験です。

写真1 パンテオン

写真2 サンピエトロ寺院

写真3 セーヌ川ほとりのマンション

写真4 ブリュッセルの屋根並

 エジプト~アジアの建築

 古代の遺産であるピラミッドが存在するエジプトで感じたのは,砂漠という不毛な環境が,「永遠」という概念を作り出したのではないか,ということです(写真5)。そしてこの概念があって初めて,5000年という月日を経て,なお我々の目の前に存在するという結果につながっているように思いました。

 一方,カンボジアは高温多湿な環境であるため,エジプトとは違った価値観を感じ取ることができました。写真6のように樹木が建物を守っているのか壊しているのかわからない状態のものがあります。このように,自然と一体となるということが非常にアジアらしいと感じます。


写真5 エジプトのピラミッド

写真6 アンコールワット

 写真7は香港ですが,雨後のたけのこのようにビルがひしめいています。そして,ひとたび路地に入ると写真8のような雑踏になっていて非常にエネルギーを感じます。また,写真9は香港の高層アパートですが,緑の壁を使うことでリズムを生み出しています。ただし,決してそこの人々の生活を隠したり規制したりすることはありません。この点も西洋と違ったアジアの特徴と言えるのではないでしょうか。


写真7 香港の高層ビル群

写真8 香港の雑踏

写真9 香港の高層アパート

 日本の建築

 これまで世界を回ってきましたが,一方で日本という国はどういう国なのか,という疑問がでてきます。これは,島国だったということが大きく影響していると思いますが,なかなか説明のしにくい国が日本,とも言えるのではないでしょうか。
 日本の自然とのかかわりとは,ある程度放っておいた(もしくは放っておいたようにみせた)状態の,自然と融合する美しさというものを感じます(写真10)。
 また,機能を追及し,それを超えた美しさというのもあります。それは特に日本庭園などに見て取れますが,例えば写真11のような金沢兼六園の雪吊りなども,枝が雪の重みで折れないようにという,機能を超越した美しさを感じます。

写真10 自然と融合する美しさ

写真11 兼六園の雪吊
 写真12は古い日本の家屋の雨戸です。雨戸を活用して光を取り入れる機能を満たしつつ,外側,つまり町の美しさを保っています。これは障子についても同様です。障子の役割は外と中を仕切ることですが,外の気配を感じながら仕切るという点が日本的だと思います(写真13)。西洋の窓も同様の機能を持っていますが,このことを意識的にやるのが西洋で,無意識的に取り入れるのが日本だと言うことができるのではないでしょうか。
 写真14はスペインのアルハンブラ宮殿の木の格子です。日本の障子と同じような機能を果たしていると思いますが,やはり雰囲気が違います。このように,光をどう生かすか,という視点でも西と東で違いがあるのです。
 そのため,西洋と日本との違いを我々がどのようにくみとりながら設計し,建築していくのか,ということを意識しておきたいと常々思っています。

写真12 雨戸の外観

写真13 障子の内観

写真14 アルハンブラ宮殿

 自作を通して

 写真15は学生の頃に友人5人と協力して設計した真鶴(神奈川県)の別荘です。3つの建物を斜面に置き,間にできたすき間に玄関などを配置しました。ここは周りがみかん畑なので,このような大きな窓を設置してもプライバシーなどの不都合なことはなく,夏になるとみかんがなっているのがきれいに見えます。
 写真16は北海道で初めて設計した,西洋のお城のような建物です。これもブロックのような建物を2つ設置しました。その間をガラスブロックでつないで,大きな開口部にしました。
 写真17は15年くらい前に設計した自分の家です。これも1階をブロックにして2・3階を木造にしました。ブロックだとどうしても開口部が狭くなってしまうので,そこを構造的に色々工夫して広い開口部を設けました。
 写真18は東北の八甲田にある温泉で,木造の新館です。露天風呂は天井を高くして硫黄のにおいをこもらせないようにしました。また,太い材料を使用し,森林浴をしているような感じに設計しました。

写真15 真鶴の別荘

写真16 小樽のブロック住宅

写真17 私の家

写真18 八甲田の温泉
 写真19は中富良野で設計した「花人の舎」です。この建物は内部を楽しんでもらおうと思い,あえて大きな窓は作りませんでした。
 また,同じ中富良野のプライベートなゲストハウスを設計しました(写真20)。景色のいい場所,そして斜面をいかに活用するかということを工夫しました。斜面を活かすためにスキップフロアとし,建物の一番下まで90cm間隔にずらして斜面に適合させました。そして,広い空間には写真21のような広い窓を,小さな空間には小さな窓を設け,それぞれの空間を楽しめるように工夫しました。
 写真22は上富良野にある日本画家のアトリエです。これは,1階はRC造,2・3階は鉄骨造で外断熱工法の建物です。窓は木製サッシを使用し大きな開口部を作りました。2階のレストランは,十勝岳連峰が見渡せるように,間口を12m取りましたが,上の部分は格子にして強度を保ちました。

写真19 花人の舎

写真20 中富良野のゲストハウス

写真21 ゲストハウス内観

写真22 上富良野・後藤美術館
 写真23は札幌の住宅で,ここも傾斜があるので床を下げながら地下を作り対応しました。これにも木製サッシを使い風景と一致するようにしました。周りの木をなるべく切らないで,という要望だったので,木が建物に非常に近い位置にあります。このことが逆に森の中にいるような感じを演出しています。
 写真24はニセコのギャラリー付きの別荘です。別荘ですがギャラリー付きなのでプライベートな雰囲気にはあえてしませんでした。1階は,RC造でL字型として,2階は木造としました。開口部は大きく設定し,木製サッシを使い,壁をなくしました(写真25)。
 写真26は最近の札幌の街中に作った住宅です。これは町へのアピールとして,赤い木製サッシでカラフルにしました。
 このように,私の設計の中でも場面場面に応じて木製サッシを使っています。今後も,もっと北海道のブランドとしての木製サッシをアピールしながら,活用していきたいと考えています。

写真23 中ノ沢の住宅

写真24 ニセコのギャラリー付別荘

写真25 別荘内観

写真26 札幌市街の住宅
(文責:林産試験場 性能部 牧野 真人)
 
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