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林産試だより2005年10月号 特集『2005 木製サッシフォーラム』 木製サッシと防犯
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 ●特集『2005 木製サッシフォーラム』

木製サッシと防犯
(株)セキュリティハウス・センター 統括営業本部 課長 島田 隆之


 はじめに

 今日は「木製サッシと防犯」ということで話をさせていただきます。この仕事を始めた20年くらい前には,防犯という意識が非常に薄く,「うちは盗られるものはない」と門前払いをくわされることが多くありました。しかし,最近は社会情勢の変化に伴い,防犯意識が非常に高まってきています。今日は犯罪の現状についてお話しし,どのような対策が有効なのか,また今後窓にどういった防犯機能が求められていくのか,ということをお話ししたいと思います。

 犯罪の状況

 図1は全国の刑法犯発生・検挙状況の推移を,図2は住宅対象侵入盗の認知・検挙状況を示しています。両方とも平成14年からは横ばいになっているのが特徴です。
 刑法犯は200万件を超えて300万件で推移していますが,昭和48年の刑法犯が130万件弱だったことから考えると2倍以上となっており,非常に増えています。この原因の一つが外国人犯罪で,今までの日本では考えられないような犯罪が増えてきています。
 図中の線は検挙率です。これは発生件数と反比例して減ってきています。過半数がつかまらないということがどんどん新たな事件を招いているのです。
図1 全国の刑法犯発生・検挙状況の推移 図2 住宅対象侵入盗の認知・検挙件数

 図3は侵入手口の割合を示しています。マンションでは「ピッキング(針金などを鍵穴に差込み錠をこじあけること)」が一番大きな割合を占めていますが,一戸建て住宅では「ガラス破り」が一番多く,約7割も占めています。これは,掃き出し窓(庭などに面し,ホコリなどを掃き出せる大型の窓)などのガラスの一部分を破り,クレセント(窓の閉め金具)を回すという手口です。

 また,注意したいのが「無締り」です。風呂場の窓など鍵がかかってないことがよくあるため,狙われやすいのです。この「無締り」には,うっかり閉め忘れた場合と,施錠する習慣がないという場合があります。

 これについて例えば,ある地方都市では泥棒に入られた家のうち6割が施錠していなかったというデータもあります。施錠する習慣がなかった昔の家では,近所の目があったために防犯性が保たれていたところが多くありました。しかし,生活習慣は昔のままなのに,近所付き合いが希薄になっているという状況が犯罪を誘発する原因になっているとも言えます。

 なお,最近よく報道されている「ピッキング」に関しては一戸建ての場合は0.4%と低くなっています。

図3 マンションおよび一戸建てにおける侵入手口

 ピッキング防止法

 泥棒が持っているような道具を持っているだけで逮捕できる,というピッキング防止法が平成15年に施行されました。これは図4の左のようにピッキングをする道具や,右のサムターン(ドアの内側から鍵をかけるための親指回転つまみ)を引っ掛けてまわす道具などから,15cm以上のドライバーや,24cm以上のバールなどを持っていても逮捕することができます。

 ただし,これはあくまでも正当な理由がない場合です。なお,ピッキング自体は減ってきていることが統計的に示されています。

図4 住宅侵入に用いる道具(左:ピッキング,右:サムターン回し)

 犯罪にかける時間

 図5は逮捕者への調査結果ですが,犯行にかける時間は,約7割が10分以内となっており非常に短い時間で犯行に及ぶことがわかります。また,非常ベルに対する認識も高く,音がなりそうな感じがするところは用心します。威嚇されるようなものには神経質になるのが特徴です。

 一方,侵入をあきらめる時間は5分以内というのが7割近くを占め,できるだけ時間をかけさせることが犯罪防止には重要だということがわかります。

図5 逮捕者への調査結果(左:犯行にかける時間,中:侵入をあきらめる時間,右:非常ベルに対する認識)

 北海道の犯罪状況

 北海道の状況は,侵入盗が多いというのが特徴ですが,平成15年では旭川では路上強盗が多くなっています(図6,7)。
図6 北海道における重要窃盗犯の手口別発生件数 図7 旭川市における路上強盗の発生件数

 犯罪を抑止できる街づくり

 以前,犯罪学者の方が,「日本はこれまで『犯罪原因論』といって,犯罪の原因を除去することに主眼を置いていた。」と話をされました。つまり,犯罪者を捕まえた後矯正していくという考えです。しかし,「これからは『犯罪機会論』,つまり犯罪の機会を減らしていくことが重要だ。」といったことが叫ばれているそうです。これは欧米で20年くらい前から導入されてきた考えです。

 例えばイギリスでは,監視カメラが町のいたるところに設置されています。これにはデメリットもあり見直し論もありますが,町全体を監視しなくてはいけない世の中になってきていることの現れです。
 日本でも歌舞伎町などでは街頭に監視カメラが設置され,パトロールの人が巡回しています。


 犯罪を抑止する建物

 犯罪を抑止する上では,次の2点が重要です。一つは,建物に関して侵入をしにくくすることで犯罪の機会を減らすこと,もう一つは,地域の啓蒙活動をして,近所の監視をするようなコミュニティをつくっていくことです。
 このような背景から,平成14年11月に警察庁,国土交通省,経済産業省の関係省庁と民間の建物部品関連業界団体は,「防犯性能の高い建物部品の開発・普及に関する官民合同会議」を設置し,建物の強化に際して,実際の手口を用いて侵入に5分以上を要する建物部品の開発と認証試験の実施を行っています。このように,建物自体を実際の侵入に耐える構造にしていく,というのが今後進んでいく方向性です。ただ,市場にすでに出来上がっている建物に関しては,侵入に対して弱い状況です。

 なお,具体的に求められる機能とは次のとおりです。
・扉:バールによる「こじ破り」に強い構造
・錠前:「ピッキング・サムターン廻し」などに強い構造
・サッシ:「補助錠」を装備,「サッシ戸はずし」の対策
・ガラス:「打ち破り」「焼き破り」等の対策,防犯ガラスの使用
このような防犯性の高い部品が,今後普及していくと思われます。

 また,行政の対応としては防犯設備士という資格を持った者を活用し,防犯性の高い地域づくりを進めているところや,函館市のように,行政と民間団体が共同して防犯に関する情報を発信しているところもあります。


 防犯性の高い家

 泥棒が好きな家,つまり防犯性の低い家の特徴を列挙すると,次のとおりです(図8)。
・郵便物でいっぱいの郵便受け
・夜になっても洗濯物が干しっぱなしになっている
・植木鉢の下に鍵が置いてある
・「いついつまで休みます」といった張り紙

 また,長期不在の場合,新聞をとめることがありますが,そういった情報が漏れていないとは限りません。実際に,東京では新聞配達員に泥棒に入られたという事件も発生しています。さらに,泥棒が引っ越し作業員としてアルバイトをしていることがあったり,金庫の置き場や貴重品の隠し場所といった情報を窃盗団に売っている場合もあります。
 他には図8に示したように,面格子が簡単に外れるものや,網入りガラスだからといって過信するのは危険です。
 なお,「見通し」も非常に重要です。塀で囲むことは入りにくいと思われがちですが,見通しの効かない塀などは一度入ってしまえば外から見えないから逆に危険です。

 一方,泥棒の嫌いな家,つまり防犯性の高い家を図9に示します。
 図に示したようなセンサー,低い生垣や中が見通せるフェンスなど,外から見通せる必要があります。

図8 泥棒の好きな家 図9 泥棒の嫌いな家

 以上まとめると,防犯性を高めるには,以下の4要素が重要になります。
1.建物の侵入口を強化する
   5分以上の攻撃に耐えるドア・錠前・窓
2.建物に近づきにくくする
   柵・門扉・塀により意思表示
   センサーなどによる抑止・威嚇
3.見通しを良くする
   誰かに見られているという抑止効果
   塀や柵はすき間があり,外から見通せるものが効果的
4.地域のコミュニティ
   お互い顔見知り,挨拶が交わされる
   近所同士仲がよいことは抑止効果あり
   共用ゴミ置き場の汚い所は狙われる(お互いのことに関心がない証拠)

 最近では子供が留守番をしていることが不安という意見があり,セキュリティが重視されています。例えば「安全安心」を売りにした幼稚園もできてきており,現にここは利用者が増えてきているようです。

 以上お話してきたことから,今後はサッシにも破壊や防犯に対する強さが求められてくるでしょう。そしてこれが今後の最低条件になる可能性もあります。
 もはや警備会社のホームセキュリティシステムに入っているからといって安全という時代ではありません。警備員が急いでも間に合わないときもあります。重要なのは入るのをやめようと思わせるような家作りです。
 今後は防犯性ということにサッシも大きく貢献していくことになるでしょう。

(文責:林産試験場 性能部 牧野 真人)
 
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