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林産試だより2005年10月号 特集『2005 木製サッシフォーラム』 最近のサッシ新技術
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 ●特集『2005 木製サッシフォーラム』

最近のサッシ新技術
性能部 性能開発科 牧野 真人


 はじめに

 毎年行っている木製サッシフォーラムも今年でちょうど10年目を迎えました。そこで今回は,もう一度木製サッシの良さを見つめ直そうということをテーマに,木材の基本的な特徴や,今後求められていく木製サッシについてお話ししたいと思います。


 木の良さ

・軽くて強い
 木の良さの1つに,軽くて強いということがあります。図1は引っ張り強度を比重で割ったもの,つまり重さあたりの強度を示していますが,木は非常に強い材料であるということがお分かりいただけるかと思います。

・湿度調整する
 木の良さの2つめには,調湿作用があるということがあげられます。図2は内装にビニールシートを用いた場合と,合板を用いた場合の湿度の変化を示しています。ビニールシートを用いた場合は,湿度は外気と同じように変動します。
 一方,合板を用いた場合には湿度は一定に保たれています。このように,木材には吸湿したり放湿したりといった調湿作用があります。

図1 各種材料の比強度 図2 住宅内の湿度変化

・熱を伝えにくい
 熱を伝えにくい,というのも木材の特徴です。図3は各種材料の熱伝導率を示したものですが,アルミや鉄といった金属に比べ木材は非常に熱を伝えにくいことがわかります。単純に木とアルミとを比較した場合,1300倍以上もの差があります。ちなみに,樹脂サッシの材料であるポリ塩化ビニルと木材はどちらも熱伝導率は低いことがわかります。

 今言ったことをサーモグラフィーの写真で示したのが図4です。これは温度の分布を色分けしたものです。上2枚の写真が初期状態,下2枚の写真がそれぞれの材料に一定時間手を押し当てて離した直後の写真です。右の材料が木で,左の材料がアルミです。

図3 各種材料の熱伝導率 図4 木材とアルミの熱的性質の違い

 木の方は,手の温度が変わっていない,つまり熱がほとんど奪われていないことがわかります。また,木に手形が残っていることから,周りに熱が拡散していないことを示しています。
 一方アルミの方は,手の熱がかなり奪われていることがわかります。また,アルミの方に手形は残っておらず,材料全体に熱が拡散し,放熱してしまっていることを示しています。


 木の香り

 木の香りは良いにおいだと感じる方が多いかと思いますが,そのような香りをかいだ時,人はリラックスした状態になっています。図5は,精油,つまり植物由来の揮発性の芳香物質をかいだときの血圧の低下を調べた実験結果の抜粋です。通常の血圧に対して,それぞれの香りをかいだときの変化を%で表しています。これによると,木材の香りをかいだ時血圧が低下しており,リラックスしていることがわかります。

図5 香りによる血圧の低下

 環境に優しい

 次にエネルギー的な視点から見てみると,図6に示すように,木材は製造に必要なエネルギーが少ない材料です。現在,大気中の二酸化炭素の増加による温暖化が問題になっていますが,製造時のエネルギーが少ないということは,排出する二酸化炭素が少なく,自然環境に優しいということができます。

 また,炭素を貯蔵できるという点も重要な特徴です。表1は同じ大きさの窓を作ったときに放出されるエネルギーを,炭素収支の形で示したものです。木材は重量にしておよそ半分が炭素から成っています。この炭素は樹木が大気中の二酸化炭素を吸い込んだものなのです。ですから木材を使うと,その分の二酸化炭素が木材中に貯蔵されている状態にあることになります。

図6 各種材料の製造エネルギー 表1 木製サッシとアルミサッシの製造時の炭素収支
 このように,製造に必要なエネルギーが少ないということと,炭素を貯蔵できるということが,木材が自然環境に優しいといわれるゆえんです。

 目指すべき社会

 最後に,木を使うことの本質的に重要な点について説明します。図7は現在の社会と目指すべき社会の概念図ですが,現在はエネルギーや身近な材料などをかなり石油に頼ってしまっているのが現状です。
 石油は炭素が凝縮され地下にうまっているものなので,これを使うことによって,大気中の二酸化炭素濃度はどんどん上ってきてしまっています。
 一方,木材は空気中の二酸化炭素からできていますから,現在石油に頼っている部分をなるべく木材に置き換えて,空気中に新たに放出される二酸化炭素を減らしていこう,というのが目指すべき社会です。木材を使うことはわれわれ人間にとっても地球全体にとっても望ましいことなのです。
図7 現在の社会と目指すべき社会の概念図

 木製サッシのよさ

・断熱性が高い
 木製サッシのよさとしては,まず断熱性が高いことがあげられます。図8は,それぞれの材料における窓全体の熱貫流率の一例を示しています。熱貫流率というのは熱の通りやすさということで,数値が低いほど断熱性が高いことを示しています。ここではガラスを同じ条件にした場合,それぞれの枠の材料によってどれだけ断熱性能に違いがあるのか,ということを示しています。これを見ますと,アルミに比べ,木製サッシと樹脂サッシは断熱性が高いことがわかります。
図8 各種サッシの熱貫流率
・結露しにくい
 木製サッシのよさの2点目に,結露しにくいということがあげられます。図9は室内側を20℃,室外側を-20℃,湿度60%の条件で枠への結露の有無を調べた結果です。結露しないために必要なのは断熱性能ですが,ほぼ断熱性能が同じ木製サッシと樹脂サッシで結露の有無に差が見られるのは,木材には調湿作用があるためです。
図9 木製サッシと樹脂サッシの結露の状態
・加工しやすい
 加工しやすく,デザイン性に富むという点も木製サッシの利点です(写真1~3)。
 例えば,写真3のような普通の規格にない窓を作る場合,アルミや樹脂ですと,工場のラインや,金型から作り直さなくてはならず,膨大な費用がかかります。一方木製の場合,比較的容易に変形が可能なので,こういった規格外のデザインに対応しやすいという利点があります。
写真1 木と暮らしの情報館 写真2 層雲峡で使われている木製サッシ 写真3 洞爺村で使われている木製サッシ

 最近の木製サッシの動向

・世界の木製サッシの需要
 世界のサッシの需要,特に欧米の窓に注目してみると,木製サッシの需要が非常に高いことがわかります(図10)。これは木材が他の材料に比べ手に入りやすいことや,環境への意識の高まりなどが要因の一つとしてあるようです。
 一方,日本では木製サッシの割合は数%程度で,9割以上がアルミサッシです。この原因の一つに,昔の日本の木製サッシは気密性が極めて悪かったため,気密性の高いアルミサッシに一気に置き換わってしまったことがあげられます。ただ,今の木製サッシの気密性はアルミサッシと変わりませんからご安心ください。
 日本で木製サッシの需要がなかなか伸びない原因は,価格が高いということと,耐久性やメンテナンスの問題にあるようです。

・日本の木製サッシの需要
 図11は日本の木製サッシの需要を示しています。ここで注目すべきは大手住宅メーカーが,本格的に木製サッシに進出していることです。住宅も作っている大手国産サッシーメーカーが木製サッシを本格的に取り組みだしたことから,今後は木製サッシがより普及していき,価格がもっと抑えられる可能性があります。
図10 日本と諸外国の窓の内訳 図11 日本の木製サッシの内訳

 今後求められる窓とその技術

・消費者が求める窓
 図12は新築もしくはリフォームした方へのアンケート結果です。この結果から理想的な窓は「掃除をしなくてよい窓」,「防犯性の高い窓」,「結露しない窓」となっています。

・結露しない窓
 窓の結露のことを考える上では,ガラス面と枠とを別々に考えることが必要です。
 ガラスに関しては,最近では複層ガラスが主流になっていますが,この中でも色々種類があります。それぞれの断熱性能を図13に示します。このように,ガラスの性能はどんどん上がってきており,壁に求められる断熱性能に近づいています。
 また,枠については,断熱性の高い木製と樹脂製が有利です。さらに,先ほどもお話ししましたが,木は調湿作用があるため,樹脂よりも結露しにくいです。

図12 あればいいなと思う窓ベスト5 図13 各種ガラスの熱貫流率
・掃除がしやすい窓
 次に掃除のしやすい窓,特に窓の外側の掃除がしやすい窓について話します。
 日本の住宅に使われている窓は,「引き違い」や「外開き」という開閉方式の窓が主流です(図14)。これらの窓は外側の掃除がやりにくいという欠点があります。一方,「回転窓」や,「ドレーキップ窓」は,窓の外側を容易に掃除することができます。
 他には,光触媒によって自動的に窓ガラスの汚れを落とす技術も開発され,実際に商品化されてきています。
図14 様々な開閉様式

 最近の木製サッシ

 最近の木製サッシでは,室外側の木の部分にアルミをかぶせ,耐候性を持たせた窓が開発され,普及してきています(写真4)。
 これは木が直接外部にさらされているわけではないので,塗装などのメンテナンスが不要です。また,室外側と室内側でまったく違ったデザインにすることができます。
写真4 外側がアルミで覆われた木製サッシ

 今後求められていくサッシとは

 現在,北海道では,北海道にふさわしい住宅の推進を図るべく,次世代北方型住宅基準というものを作成しました。ここでは4つの視点,つまり「安心・健康」「長寿命」「環境との共生」「地域らしさ」を満たす住宅を推奨していきます。
 木製サッシは,自然環境への負荷が少なく,また地域材を使っていくことによって地域らしさというものも作っていくことが可能です。

 今後は,「断熱性」や「結露しにくい」などこれまで窓に求められてきた性能だけでなく,「環境との共生」や「地域らしさ」といった木製サッシの新たな魅力をアピールしていきたいと思っています。

 
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