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林産試だより2005年11月号 特集『林産試験場と行政との連携による業界振興』 木製防火戸の開発
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 ●特集『林産試験場と行政との連携による業界振興』

木製防火戸の開発

きのこ部 主任研究員 菊地 伸一


 はじめに

 全国では毎年およそ6万件の火災が発生し,2千人の死者と9千人の負傷者が生じています。全火災の約6割は建物の火災が占め,建物火災の中では住宅の火災が最も多く,建物火災による死者の9割を占めています。住宅火災における焼死者数を低減させるため,平成16年に消防法が改正され,平成18年6月以降新築する住宅には住宅用火災警報器の設置が義務づけられました。このような消防法の規制と共に,建物の火災安全性を高めるもう一つの柱として,建築基準法では火災に強い部材や構造体の使用を義務づけており,火炎や熱の通り道となりやすいドアや窓については,防火戸(防火ドア,防火窓の総称)が規格化されています。


 木製防火引き戸を開発した経緯

 平成2年に防火戸の構成材料として木材の使用が認められて以来,林産試験場では様々な形状・仕様のドア・窓についての防火試験を行ってきました。それは,

(1)防火戸には乙種と甲種の2種類があり,求められる性能が異なることから,それぞれの規格を満たす基本的な仕様を明らかにする必要があったこと,

(2)防火戸の形状や構成材料,仕様が異なると防火性能が変化するため,それぞれ個別に性能を確認する必要があったこと,

などによります。そして,その成果として,難燃パーティクルボードを利用した防火ドアや道産広葉樹を用いた防火窓等が認定されてきました。

 久保木工(株)は基準法改正後の比較的早い時期に防火ドア1件,防火窓2件の認定を取得し,平成9年までに防火規制を受ける建物に50件程度の採用実績を積み重ねていました。しかし,同年に木製防火ドアの認定数が100件以上にまで増加し,先行当時の希少性が失われつつある状況にありました。

 当時,認定されていた木製防火ドアの多くは開き戸で,引き戸はロックウール主体の心材に化粧難燃合板を張り付けたフラットな構成のものがあるだけでした。引き戸には車椅子からでも楽に開閉することができ,開き戸のように扉の回転半径内に障害となるものを置けないなどの制約がない等の特徴があり,福祉的用途と狭いスペースでの活用が期待できることから,製品開発に値すると判断しました。


 事業での取り組みと成果

 平成9~10年の木材産業技術高度化促進事業において,久保木工(株)と共同で2種類の新しい木製の防火ドアを開発しました。引き戸の防火性能を向上させるため,次のような防火処理を取り入れました。

(1)かまちに難燃LVLを使用し,炭化・収縮による扉の変形を防止する。

(2)扉と袖部との重なり幅を広くするとともに,発泡材の発泡圧を利用して加熱時の変形を抑える。

(3)鋼製自閉装置の収納部を覆う木材に,密度の大きい緻密なアサダ材を使用し燃焼を遅延させる。

 このような防火処理が効果を発揮することを林産試験場で確認試験後,実大サイズの耐火試験(写真)を経て,表面材に厚さ15mmのアサダ材を使用し,開口幅が開き戸よりも広い木製防火引き戸の認定を得ました。併せて,本事業では表面材に厚さ15mmのアサダ材を使用し,目地を深くして立体感を強調した開き戸タイプの木製防火ドアも開発し,認定を得ています。

 これらの防火ドアは,現在も防火規制を受ける建物に採用されています。

写真 引き戸の耐火試験
左:加熱中,右:加熱終了後の加熱面


注:平成10年の建築基準法改正に伴い,現在では防火戸は特定防火設備または防火設備と名称変更されていますが,ここでは当時の事業名と整合性を取るため旧名称のままで記載しています。

 
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