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林産試だより2005年11月号 特集『林産試験場と行政との連携による業界振興』 間伐材の高温乾燥による建築用構造材への利用開発
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 ●特集『林産試験場と行政との連携による業界振興』

間伐材の高温乾燥による建築用構造材への利用開発

技術部 製材乾燥科 中嶌 厚


 はじめに

 平成10~11年度の木材産業技術高度化促進事業の中で,新住宅システム開発協同組合(芦別市)において,道産針葉樹人工林材(トドマツ等)を建築用構造材として利用するため,高温乾燥技術を用いた乾燥材生産に関する実証化事業が行われました。これは,人工林間伐材の用途開発が急務であることから,需要がある程度見込めて収益性の高い柱などの構造材に絞って高品質な乾燥材の生産に取り組んだものです。


 乾燥の諸問題

 以前は柱などの構造材は,生材あるいは簡易な天然乾燥を行う程度で用いられましたが,現在では含水率を12~20%程度に人工乾燥してから使用することが求められるようになりました。高気密高断熱住宅が増えるとともに,建築工期が短くなったことなどから,乾燥が十分でない製材を使うと,収縮によって内装のすき間や亀裂,ドア・引き戸の開閉困難などのトラブルが生じやすくなり,住宅品質・性能を低下させてしまうことが背景にあります。

 一方,人工林資源の大部分は育成途上にあり,この過程で間伐が行われることから,中小径材の利用は避けられません。これらを住宅の柱・梁などに利用しようとすれば,必然として製材は樹心を含むことになります。これらは「心持ち材」と呼ばれ,以下のことから利用する上で工夫が必要となります。

(1)樹心近くに形成される未成熟材部はその周りの成熟材部(心去り材)に比べ,強度的性質等が劣る。

(2)樹心近くでは繊維細胞が樹軸方向に対し傾斜配列しており,乾燥過程で「ねじれ」を生じさせる。

(3)中心の心材が乾燥しにくく表層との間に大きな水分傾斜ができ,これと接線方向の収縮量が半径方向のそれより大きいことが相まって,乾燥の際に材表層の引張応力が大きくなり割れやすい。

 すなわち,心持ち材は心去り材に比べ乾燥によって狂い(ねじれ)や割れが顕著となる傾向があり,品質低下が大きな問題となります。


 高温乾燥による試み

 そこで林産試験場では,木材に熱を与えることによって容易に変形する性質に着目し,100℃以上の高温を用いる乾燥によって,利用が難しいとされる心持ち材の品質向上を目指しました。対象樹種は,カラマツに比較して表面割れが発生しやすいことが分かったトドマツを中心に行いました。その結果,カラマツには及びませんでしたが,従来の中温による乾燥に比べ表面割れの大幅な抑制が可能となり,また狂いについても桟積み上部から荷重をかけながら乾燥することで許容値以下に仕上げることができました。


 開発技術の実証化

 開発した高温乾燥技術は,当該組合が保有する高温乾燥装置により実証化が図られました(写真1)。乾燥材は一定期間養生された後,狂いを除くため「すり直し機」で挽き直され要求寸法に仕上げます。また,グレーディングマシンを用いて性能表示(ヤング係数と含水率)が行われます。

 実証化試験においてトドマツ心持ち正角材が構造材として利用できた割合は約8~9割でした。装置内の風速むらや温度むら,あるいは水食い部を多く含むトドマツに割れが目立ったことなどが不良品発生の原因として考えられました。特に装置内の風速・温度むらは,桟積みした製材の間隔などの影響を受けやすいことから,適正な桟積み条件を再考しました。

写真1 高温乾燥による実証化試験


 おわりに

 構造材に用いるトドマツ心持ち材は,他の針葉樹と比べて割れやすく,乾燥には細心の注意が必要です。製材後は速やかに高温乾燥すること,適切な桟積み方法と処理時間のほか,できれば重量の計測により水食いの顕著な製材を分別すべきことなどは,実証化事業を進める過程で明らかとなった要件です。

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