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林産試だより2005年12月号 「3層・4層構成集成柱材」と「内装用針葉樹合板」の実用化にむけた取り組み
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「3層・4層構成集成柱材」と「内装用針葉樹合板」の実用化にむけた取り組み

企画指導部 経営科 高山 光子


 はじめに

 針葉樹人工林の健全な育成にとって間伐材など人工林材の需要拡大は急務となっています。林産試験場でもこれまで様々な研究開発に取り組んできました。その中で今回,「3層・4層構成集成柱材」と「内装用針葉樹合板」を対象として,集成材メーカーや工務店への意向調査や製造試験などを行い,積極的に実用化をすすめるための検討を行いました。


 3層・4層構成集成柱材

 構造用集成材の普及が進み,一般住宅の柱にも集成材が使用されるようになりました。現在見られる集成柱はラミナを5枚積層した5層構成のものが主流です。集成材が使用され始めたころには3層構成のものも使用されていたようですが,一部輸入品に曲がりや反りのある粗悪品が見られたため,市場から姿を消した経緯があります。

 しかし,曲がりや反りは製品の含水率変化によって発生すると考えられ,適正に乾燥されたラミナを使用すれば,積層数を3層にしても曲がりや反りの問題は生じないと考えられます。さらに,積層数を減らすことによって,製造上の手間が省ける,接着剤の使用量が減るなどのメリットが期待できます。そのようなことから,過去に林産試験場では強度試験や製造コストの試算を行い,3層構成の集成柱でも強度性能に問題はなく,コスト的にも輸入製品に太刀打ちできることを明らかにしています1,2)。そこで,今回,普及のすすまない3層構成の集成柱材の実用化に改めて取り組むこととしました。

 まず,集成材工場への聞き取り調査を行ったところ,「市場が受け入れない」というのが共通した認識であり,工場によっては,市場が受け入れるなら製造したいとの意向があることがわかりました。また,問題点として,JASでは3層構成の場合同じ等級区分のラミナのみ積層する同一等級集成材しか認められていないこと,原板が厚くなることによる原板価格や乾燥コストの上昇への懸念などが挙げられました。

 一方,使用する工務店側へアンケート調査を行ったところ,5層以外でも特に拒否感はなく,条件次第では使用してみたいとの回答が大半を占めました。しかし,同時に,曲がりや反りへの不安が残るとの回答も過半数にのぼり,実際に使用してもらうためには,試験データなどを示してこれらの不安を解消することが必要であることがわかりました。

 これらの調査結果を踏まえ,集成柱材の製造試験を行うとともに,製造した柱について乾湿繰り返しによる寸法・形状の経時変化の測定試験を行いました。なお,3層構成に加え,通常のJAS認定工場が取得している異等級構成の認定で製造できる4層構成も対象とすることとしました(写真1)。

 一連の試験を通して,不安のもたれている寸法・形状の経時変化については,適正に乾燥されたラミナを使用すれば3層や4層構成でも従来の5層構成と大きな違いはないことが確認できました。また,原木からの原板歩留まりは3層用でやや低くなりましたが4層用と5層用では違いがないこと,集成材製造における作業量は層数の減少に従い減少し,特に縦継ぎ工程で大きく作業時間が短縮されることなどがわかりました。

 製造費用については,原板乾燥を除いた集成材製造にかかる製品1本あたりの主要な費用は,作業時間の短縮と接着剤使用量の減少などから5層と比較して3層で2割程度,4層で1割程度減少すると試算されました。また,原板1m3あたりの乾燥にかかるエネルギー費用(電気代,灯油代)は3層用で2〜3割強,4層用で1〜2割弱増加すると試算されました。これらの試算値はある一定の製造ラインと製造条件を想定して算出したものであり,乾燥設備や機械設備の能力,製造条件の違いによって試算値は変化します。したがって,実際に製造費用が全体としてどの程度削減できるかは,各工場の所有する設備能力や製造条件をもとに検討する必要があります。

 写真1 製造したトドマツ(上)とカラマツ(下)の集成柱材(左側から5層,4層,3層)

 これらの調査および試験の結果をとりまとめ,集成材工場向けの資料を作成しました。今後はこの資料を活用して集成材工場への普及をすすめるとともに,建築側に対しては寸法・形状変化に対する不安の解消や製品の紹介をとおして実用化をすすめていきます。


 内装用針葉樹合板

 現在,針葉樹合板の用途は構造用や型枠用がほとんどであり,今後は内装用などの新たな用途開発が望まれています。一方,カラマツ,トドマツ人工林からは中大径材の生産量の増加が見込まれており,これらの原木の有用な用途の一つとして内装用合板があります。針葉樹材を内装用合板として利用する場合,従来の広葉樹材とは異なり,節が抜けやすい,単板の表面が粗い,針葉樹特有の節や木目が消費者に好まれるかなどの問題が考えられます。そこで林産試験場では,抜け節状況の把握と抜け節防止方法の検討,表面性状の把握と化粧性の検討,官能試験による視覚的評価などを行い,内装用針葉樹合板を開発しました(写真2)。


左から,スライス単板(ミスマッチタイプ),
スライス単板(スリップマッチタイプ),
ロータリー単板
左から,スライス単板(ミスマッチタイプ),
スライス単板(スリップマッチタイプ),
ロータリー単板

写真2 試作した内装用針葉樹合板
(上:カラマツ,下:トドマツ)

 今回内装用針葉樹合板の実用化をすすめるにあたり,建築側の反応を把握するため,工務店に対するアンケート調査を行いました。その結果,内装用針葉樹合板を使用してみたいとの回答は条件付きも含めると9割にのぼり,建築側のニーズに合った製品であることがわかりました。また,節については,並び方に配慮すれば特に製品への拒否感はないことがわかりましたが,抜け節については約6割が無くすべきとの回答でした。一方,希望価格については1枚2,000円未満との回答が9割以上を占め,針葉樹合板に対する従来の「安価な量産品」とのイメージが強いことがわかり,「内装仕上げ材」としての針葉樹合板像を浸透させていく必要があると考えられました。

 なお現在,内装用針葉樹合板については,企業との共同開発が行われ,実際に製品が販売されています。


 おわりに

 すぐには実用化されなかった研究開発でも,社会情勢の変化やニーズの変化により実用化の条件が整ってくることが考えられます。このために実施した「3層・4層構成集成柱材」と「内装用針葉樹合板」を対象とした,実用化をすすめるための取り組みを紹介してきました。今回の取り組みを通して,研究開発にあたっては,JISなどの関係する規格に関する性能試験だけでなく,例えば,集成管柱の寸法・形状変化など,製品の使用者や製造者が必要とする細かな情報を把握し,それらについても具体的なデータを提供できるよう十分な検討をしておくことが必要であることが改めて確認されました。


 参考資料

1)工藤 修:林産試だより,5月号,10-11(1998).

2)石河周平:林産試だより,5月号,11-15(1998).

 
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