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林産試だより2005年12月号 木材接着剤による接着層の変色
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木材接着剤による接着層の変色

技術部 合板科 平林 靖


 はじめに

 木質材料は変色により価値が低下するため,変色防止は木材を利用する上での大きな課題のひとつです。変色はさまざまな要因で引き起こされますが,接着剤も変色の原因となることがあります。例えば,アルカリ性のフェノール樹脂で接着した合板は,建築現場等で屋外に放置され雨にあたると,表面が赤褐色〜黒色になることがあります。これはアルカリ汚染の一種で,接着層中のアルカリ性成分が雨水に溶解し,木材成分と反応して生じた変色汚染です。

 最近,VOC対策として普及している非ホルムアルデヒド系接着剤の水性ビニルウレタン系接着剤(API)を用いた家具用ミズナラ集成材,そして同じく非ホルムアルデヒド系接着剤の変性酢酸ビニル樹脂系接着剤(Md-PVAc)を用いた集成材について接着層の変色の問い合わせがありました。前者は反応性の高いイソシアネート硬化剤を用いるタイプ,後者は酸性下で硬化するタイプの接着剤です。変色の原因を探るため,API,Md-PVAcの木材に対する変色の関与について調べました。


 水性ビニルウレタン系接着剤(API)

  APIは,ミズナラ,ヤチダモなどの広葉樹材で変色が起きました。そこで,これらの広葉樹材に含有されるタンニンが変色に関わっているものと推察しました。タンニンは植物に含まれる様々な水溶性のポリフェノールの総称です。タンニンの影響を確認するため,タンニンの特徴的な構造を持つタンニンモデル化合物(図1)を接着剤に混合し,その変化を観察しました。

図1 ミズナラ材中のタンニンとモデル化合物

 硬化剤(イソシアネート)のみに,タンニンモデル化合物を混合した場合,色の変化は認められませんでしたが,主剤(ビニル樹脂)のみおよび,主剤+硬化剤の場合,タンニンモデル化合物を混合した際に,著しい色の変化が認められました。タンニンには水分が加わると加水分解し,変色を起こすものがあることから,接着剤の主剤中に含まれる水分が変色に関与しているものと考えられます。
 そこでミズナラの材面に水を塗布し,温度を変えて乾燥し,変色の度合い(変色度)を測定しました(図2)。水を塗布しない材は常温乾燥(□),105℃の乾燥(○)ではほとんど色の変化はありませんでしたが,水塗布材は常温での乾燥(■)ではわずかな変色がありました。また,加熱温度が高く,加熱時間が長くなるにつれて変色度は大きくなる傾向が見られました。

 これらの結果から,APIによる広葉樹の変色はタンニンと接着剤主剤中の水分,そして加熱温度の影響により起こると考えられます。したがって,API等の水性接着剤を用いて,タンニンを含む樹種の接着を行う際,変色を防止するには,高周波等を用いて加熱する場合は,接着加熱温度および加熱時間に十分留意する必要があることが分かりました。

 図2 水性ビニルウレタン系接着剤を用いたときのミズナラ材の水塗布−加熱乾燥による色の変化


 変性酢酸ビニル樹脂系接着剤(Md-PVAc)

  Md-PVAcは耐水性能を高めるためアルミニウム水溶性塩などの硬化剤を添加して利用することがあります。この硬化剤のpHは0.2と強酸性であり,配合後の接着剤のpHは3.0程度になります。

 まず,加熱温度・時間による変色特性を調べるため接着剤をシナノキ材の表面に塗布し,各種条件で加熱した後の変色の度合いを観察しました(写真1)。加熱時の温度が低く,時間も短ければ変色はほとんど見られませんが,加熱温度が高くなり,時間も長くなると変色が大きくなります。

 次に,pHによる変色特性を調べるため,硬化剤を塩化アルミニウムと想定して,pHが2.4〜3.0となる塩化アルミニウム水溶液を調製し,シナノキ材の表面に塗布し,加熱して色の変化をみたところ,pHが低く,加熱時間が長いほど変色が大きくなりました。

 このことから酸硬化剤を使用するMd-PVAcの加熱接着では,酸が変色を引き起こす原因になることが分かりました。今回用いた供試接着剤はpH3.0ですが,硬化剤を多く入れた場合はpHがさらに低下することになり,加熱時に変色する可能性が大きくなります。硬化剤の配合量および加熱時間は,所定の接着強度の得られる最少限度にしなければなりません。

 写真1 シナノキ材における変性酢酸ビニル樹脂系接着剤による加熱変色


 まとめ

 水性ビニルウレタン系接着剤(API),変性酢酸ビニル樹脂系接着剤(Md-PVAc)は共に白色の主剤に硬化剤を混合する二液性の接着剤です。しかしその性状,接着性能は異なり,変色を起こすメカニズムも異なります。

 接着剤を使用する際には仕様書,製品安全データシート(MSDS)等で十分に性質を確認する必要があります。そして,変色しやすい樹種を接着する場合には,適正な接着剤を選択することや,必要な接着力が得られる最少限度の条件で加熱することが大切であるといえます。

 
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