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林産試だより2005年12月号 再利用可能な伝統工法 −落とし込み板壁−
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再利用可能な伝統工法 −落とし込み板壁−

性能部 性能開発科 平間 昭光


 はじめに

 木材を使った建築材料には,防腐剤や接着剤が含まれるものやプラスチックや金属などの異種材料との複合建材なども数多く使用され,再利用する上で大きな支障となっています。そのため,木材のリサイクル率は低く(図1),不法投棄される量も少なくありません。今後の資源循環型社会形成をより促進するためには,リユース・リサイクルを考慮し,接着剤などの化学物質を使用しない木質資材の開発が重要です。

図1 建設廃棄物の品目別リサイクル率
(国土交通省資料)


 伝統的な木造構法

 接着剤を使用しない木質系パネルを使用する構法として,すでに板倉構法(落とし込み板壁)が実用化されています。これは,溝加工を施した柱の間に本実板を落とし込み,本実板同士をダボでつなぎ合わせたものです。なお,耐力壁(地震や風による水平力に抵抗するための壁)としての性能はダボ穴やパネル寸法の精度によって変わるため,柱材の溝や本実板のダボ穴の加工には高い精度が必要となります。


 伝統工法の改良

 そこで,林産試験場では,加工・施工を簡略化する仕様を検討し,軸組耐力壁の面内せん断試験により強度性能の評価を行いました(写真1)。また,従来の板倉構法では板を横方向にして使うことからデザインが単調なため,縦あるいは斜め方向に板を使ったものも併せて検討しました。

1)仕様(図2):ダボで本実板をつなぎ合わせたパネル(幅910×高さ1820mm)を,受け材をねじ止めした2本の柱の間に挟んだものを用いました。

2)材料:本実板は厚さ30×幅100mmのカラマツ,ダボは径10mmのナラ,軸組材はトドマツとし,受け材のカラマツの固定には4.0×75mmの木ねじを使用しました。

写真1 せん断試験の様子

図2 落とし込み板壁の仕様


 落とし込み板壁の性能

 せん断試験の結果(図3),落とし込み板壁は,大きく変形(せん断変形角1/15rad)しても荷重は低下せず,合板を釘打ちした大壁に比べて非常にねばり強い性能が認められました。また,落とし込み板壁の構成による比較では,横方向に使った場合と比べると,縦方向の場合は壁倍率は同じでしたが初期剛性は2割増となり,斜めの場合は初期剛性と壁倍率とも2割増,上下対称に斜め張りした場合は初期剛性と壁倍率とも7割増程度の性能が得られました。


図3 落とし込み板壁の性能

 このように構造などに改良を加えることで,落とし込み板壁の強度の向上が図れることが確認できました。また,落とし込み板壁を住宅内装材として用いることで,化学物質を使用しない建材として,環境に配慮した住宅造りが期待できます。

 
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