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林産試だより2006年1月号 特集「ペレット」 フレコンを利用したおが粉の天然乾燥について

●特集『ペレット』

フレコンを利用したおが粉の天然乾燥について

技術部 製材乾燥科 土橋 英亮

 はじめに

 おが粉は,家畜敷料のほかに,最近では燃料ペレットの原料としての用途も拡大しています。これらの用途のおが粉に望まれる条件の一つとして,乾燥していることが挙げられます。

 家畜敷料の用途では,家畜糞尿からより多くの水分を吸収する必要があることから,できるだけ乾燥しているおが粉が好まれます。しかし,一般の農家は,より安価な敷料を求めています。このため,乾燥コストをおが粉の価格に上乗せすることができず,人工的な乾燥は行われていません。一方,燃料ペレットとしての用途では,おが粉の含水率を10%程度まで下げなければペレットの成形ができないため,人工乾燥が不可欠です。

 燃料ペレットは,環境税が導入されている北欧などと比較すると,カロリー当たりの価格が化石燃料より割高であるため,日本ではその普及が進まないという課題があります。そこで当場では,燃料ペレットの原料であるおが粉の乾燥コストを下げるための予備乾燥として,フレキシブルコンテナ(以下は,通称であるフレコンと表記します)を利用したおが粉の天然乾燥について検討しましたので紹介します。

 北海道は,本州と異なり,冷涼ですが乾燥しており,郊外ではペレット原料を置く広い場所も確保しやすいことから,天然乾燥に適しています。この天然乾燥が有効であれば,燃料ペレット製造における乾燥経費の節約や,家畜敷料として用いる場合の吸水性能の向上が期待できます。

 ところで,おが粉等の含水率を測定するには,任意に設定温度を変えられる恒温乾燥器を用いて,温度を105℃に設定し,試料を全乾状態にする必要があります。しかし,比較的高価なため,この目的のためだけに導入するのは難しいのが現状です。そこで,身近にある家庭用の電子レンジを利用した含水率の測定方法についても検討しましたので,併せて紹介します。

 なお,本文の含水率表記には木材で一般的に用いられる乾量基準((試験体重量-全乾重量)/全乾重量)を用いていますので,湿量基準((試験体重量-全乾重量)/試験体重量)に比べると数値が大きい値として示されます。

 フレコンを利用したおが粉の天然乾燥

 天然乾燥の方法として,ブルーシートにおが粉を薄く広げて乾燥する方法があります。この方法をとれば,天気さえ良ければ1日で,含水率をかなり下げることができます。しかし,この方法では,シートを敷く,おが粉を運ぶ,広げる,天地替えをする,おが粉を回収する,雨が降ればシートで覆うなどの作業と,広い場所が必要であり,ごく少量のおが粉を処理する以外では実用的ではありません。


写真1 フレコン設置状況

 本実験では,通気性があり,フォークリフト等を使用すれば容易に移動可能な,容積約1m3のフレコンの中におが粉を入れたまま,天日で乾燥する方法について検討しました。比較のために,パルプチップについても同様の方法で検討しました。この方法によれば,一度,屋根付きの建屋に設置すれば,乾燥後の移動以外ほとんど人手は不要となります。写真1にその設置状況を示しました。設置場所は,当場の乾燥棟の雨の当たらないひさしの下です。この建物は,開口部が西向きであり,直射日光があたるのは午後2時以降です。測定は,平成15年5月16日から同年の11月20日までの189日間行いました。おが粉並びにチップの含水率は,フレコンに収容した状態で,1週間に一度重量を測定して求めました。

 なお,今回使用したおが粉の含水率は,55.5%です。北海道内の日高・十勝・根室・網走支庁管内の家畜敷料を供給している事業体で測定した製材おが粉と,おが粉製造機で生産されたおが粉の含水率の平均値は,61.0%であり,本実験の試料の値は,これより若干低い程度でした。


図1 含水率の変化

  図1に,おが粉とパルプチップの含水率の変化を示しました。含水率の変化は,実験を開始した5月16日から153日後の10月16日にはほぼ認められなくなりました。この間,含水率55.5%のおが粉は28.0%に,含水率46.4%のチップは21.8%とそれぞれ含水率が27.5と24.6ポイント低下しました。

 燃料ペレットの生産においては,原料の含水率は10%程度であることが求められますが,本実験の結果から,従来の燃料を利用した乾燥の負担を,単純計算では約60%{100×(55.5-28)/(55.5-10)=60.4}程度軽減できることが分かりました(ただし実際には,乾燥に要するエネルギーが低含水率域では大きくなることに加え,規模や乾燥方法・外気温等の諸条件により軽減効果は変わります)。なお,この測定を行った平成15年は極端な冷夏であり,平年並みであれば,60%以上の削減が期待できます。

 電子レンジを用いたおが粉の含水率の測定方法

 上部内径21cm,下部内径11cm,深さ3cm,内容積約300mLの皿に,あらかじめ全乾重量を求めた後,含水率を後述する条件に調整したおが粉を入れ,定格高周波出力500W,内容積10Lの家庭用電子レンジを用いて乾燥しました。前に述べた恒温乾燥器では,温度を105℃に設定し,乾燥時間を長くしても,これ以上温度があがらない仕組みになっています。従って,含水率によらず,試料は一晩放置し,翌日取り出して重量を測定するのが普通です。しかし,電子レンジを使用した場合の乾燥では,温度の設定ができないので,おが粉の温度は時間と共に上昇し,最終的には,炭化や発火が起こる可能性があります。従って,電子レンジを用いた乾燥では,レンジから頻繁におが粉を取り出し,乾燥終了時を見極める必要があります。


図2 電子レンジ加熱による重量変化

 そこで,乾燥時間1分ごとにレンジからおが粉を取り出し,その重量変化を測定しました。1分間当たりの,乾燥による重量の変化は,最初は試料を暖めるためエネルギーが使用されるため低いですが,その後上昇します。この値は,含水率が高いほど高くなります。その後,試料中の水分がなくなるため,乾燥による重量減少が1分あたり,1gを切るようになります。このときの重量が全乾重量です。この重量はあらかじめ求めておいた全乾重量とほぼ同じでした。この時間を過ぎて乾燥を続けますと,微少な重量減が続き,炭化が始まってしまいます。ただし,含水率が低かったり,試料の量が少なかったりすると,1分ごとの重量減少が1g以上にならない場合があります。このような時は,試料の量を増やして測定してください。

本実験では,一番乾燥が早いと考えられる含水率22.9%・乾燥重量20gから,乾燥が一番遅いと考えられる含水率150%・乾燥重量40gまで,13条件の試験を行いました。乾燥時間は6分から16分の間となりました。乾燥の経過の一例を図2に示しました。

 おわりに


写真2 フレコンを段積みした様子

 最後に,フレコンによる天然乾燥に必要な建物の大きさを試算してみました。今回の実験では,約1m3入りのフレコンに乾燥重量で約150kgのおが粉を収容しました。現在,北海道内で燃料ペレットを年間300t生産可能な小規模の工場が稼働中です。この工場の原料すべてをフレコンによる天然乾燥で予備的に処理する場合,フレコンで約2,000袋となります。フレコン1袋の床占有面積は,左右に10cmの余裕を見て約1.2m四方ですので,2000袋を一面に広げると2,880m2の面積が必要となります。写真2は,米の貯蔵施設で見られたフレコンの利用例で,このようなフレームに段積みすれば,床占有面積を少なくすることができます。例えば,3段に積んだ場合,約1000m2の建物が必要となります。地域の遊休な倉庫などの活用を図ることが有効です。また,フレコンの材質は,ポリプロピレンであり,日光に長時間曝すと劣化するため,太陽の直射はできるだけ避ける必要があります。ただし,今回の測定では,直射日光に当たるのは,午後2時以降であり,使用したフレコンに顕著な劣化は観察されませんでした。

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