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林産試だより2006年1月号 職場紹介 第22回 利用部 化学加工科

職場紹介

第22回 利用部 化学加工科

 化学加工科では,化学処理,熱処理,金属など異種材料との複合化といった手法により,木材の質感を保ちながら色調,意匠性,強度を改善する技術のほか,環境への負荷を抑えた耐久性向上技術や,有用な機能を付加させるための研究を進めています。

 最近の研究内容

(1)化学処理による機能化


写真1 腐朽試験後の気相アセチル化トドマツ材(左)と無処理材(右)の木口断面

・気相アセチル化による木材の耐久性向上の取り組み:アセチル化とは,お酢の成分である酢酸(さくさん)と木材成分とを反応(エステル化)させて結びつけ,耐久性を向上させる処理です。有害な薬剤を使用せず,処理によって色調や質感が変わることもありません。当科ではこの処理をより手軽で安価に行うことを目指して,処理薬剤を気体にして反応させる方法に取り組んでいます(写真1)。


写真2 熱水処理+溶媒置換法によって作られたカラマツWPC

・木材の浸透性改善への取り組み:木材に防腐剤,難燃剤といった種々の薬剤を染み込ませたり反応させたりすることで,木材の性能を補ったり,新しい性能を持たせることができます。しかし,木材の種類によっては液体や気体がとても浸透しにくいものがあります。当科では,部分的な圧縮,熱水処理,溶媒置換など,浸透性を高める様々な技術の開発に取り組んでいます(写真2)。

・カラマツ材の色調に高級感を与える試み:カラマツ材の中にもともと含まれる成分を化学反応によって発色させることにより,年輪など木材の質感を保ったまま,褐色の重厚な色調を与えることができます。光による変色を抑えられるといった効果もあります。家具やクラフト製品への利用が期待されます。

(2)熱処理による機能化

・環境浄化資材開発の取り組み:木材は熱処理条件を適切に制御することにより,吸着等の機能の基になる化学構造,物性の変化が生じます。このように生じた機能を利用することにより,多様な用途が期待できます。薬剤を使用せずに有用な機能を付与できることから,現在特に悪臭(アンモニア等)を吸着する機能に着目し,吸着材の製造技術の開発に取り組むと同時に,吸着材として使用した後の再利用法として,土壌改良材としての利用についても検討しています。

 同様の熱処理によって,市販イオン交換樹脂と同等のイオン交換能を与えたり,樹脂原料や燃料として利用する上で有用な液化(写真4,この場合薬剤処理も必要になります)も可能となります。


写真3 熱処理物の一例


写真4 液化処理後

(3)異種材料との複合化


写真5 木質・金属複合パイプ


写真6 試作例(遊具)

・木材と金属の複合化の取り組み:手すりや遊具などに木材を使うと,見た目や触感の良い製品が作れますが,丈夫なものを作ろうとすると部材は太すぎるものになってしまいます。一方,金属を使用すると,強度的に信頼性の高い製品が作れる反面,気温によっては冷たすぎたり熱すぎたりして不快感を覚えることがあります。そこで,木材と金属の長所をあわせもった材料の開発を試みた結果,両者を(写真5)のように複合化することで金属の高い強度と木材の暖かさを兼ね備えた材料を得ることができました。木材・金属複合パイプを,木材の質感と強度を生かして家具や手すり,遊具(写真6)などの強度が必要な部分に用いたり,中空であることを生かして配管や配線の目隠しに使ったりすることで,従来にないデザインが可能になります。

・木材とプラスチックの複合化の取り組み:木材は使用していくうちにどうしても傷が付いたり汚れたりということが起こります。木材とプラスチックを複合化し,WPC(木材-プラスチック複合体)にすると,このような欠点が改善され,硬さが増し,摩耗しづらく,また汚れにくくなります。さらに,狂いにくいといった長所もあります。見た目は写真2のように木材の質感を保ち,床材,手すりといった用途に利用されています。


写真7 木質熱処理物と機能性セラミックスの複合成形物

・熱処理木材と機能性セラミックスの複合化の取り組み:木材の熱処理によっても,処理条件の適切な制御によって脱臭,調湿等様々な機能を付与できますが,機能性セラミックスを複合化させることにより,さらに有用な機能を付与できる可能性があります。現在,木材の熱処理技術を応用し,機能性セラミックスとの複合化による成形物製造技術の開発に取り組んでいます(写真7)。

 技術支援

 化学加工科では木材の化学処理,熱処理などに関する問い合わせに対して,随時情報提供や技術相談を行っています。また,吸着などの性能評価等に関する依頼試験に対応しているほか,新技術開発等を目的とした共同研究,受託研究も実施しています。

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