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林産試だより2006年2月号 特集「景観に配慮した木製道路施設」 木製防雪柵の耐用年数について

●特集『景観に配慮した木製道路施設』

木製防雪柵の耐用年数について

性能部 構造性能科 野田 康信

 はじめに


写真1 開発した木製防雪柵

 防雪柵は,雪国において冬期間の交通安全に欠かせない道路施設です。近年になって景観への配慮の観点から,道路施設への木材利用が期待されていますが,防雪柵についてはほとんどが鋼製であり,木製のものはあまりありません。

 これを受けて林産試験場では林業試験場と防雪柵メーカーと共に木製防雪柵の開発を行いました(写真1)。防雪性能については本号に掲載の「木製防雪柵とは」で紹介していますので,ここでは耐久性能についての取り組みを紹介します。

 木材の耐久性

 木材を屋外で使用する場合,「何年もつのか?」と問われることがあります。実際に屋外で使用されている木製の柵などには,離れたところからは健全に見えても,近づいて見ると部分的に腐っていたりするものがあります。しかし,それらの状態を見ただけでは構造物として大丈夫なのかどうかの判断は難しいものです。

 一般的に木材の耐用年数は被害度評価法による結果がよく用いられます。この評価法は木材の劣化(腐朽)状態を目視によって6段階(表1)で判定するもので,一般的に被害度が2と3の間,すなわち被害度2.5の状態に達した年数を耐用年数としています。この評価法によれば,カラマツの心材の耐用年数は5年から6.5年とされています1)。しかし,この評価法は強度的な考察が欠けている点に気をつけなくてはなりません。つまり部材が被害度2.5になる年数を耐用年数と設定しているに過ぎず,部材の強度が十分に残っていることを示したものではないという点です。これでは,構造物として組み上がったものが腐朽した場合には,強度が十分に残っているかを判断することができません。

表1 被害度の評価基準

 木製防雪柵の耐久性

 本来ならば木製防雪柵の耐用年数は,防雪性能を確保できているか否か,すなわち風雪圧に耐えるだけの強度が残存しているか否かで判断するのが,実情に即しているといえます。

 そのためには,最も腐朽の進行が早いとされる箇所(一般的には地際の部材)だけでなく,すべての部材と接合部について腐朽した場合の強度を調べる必要があります。しかし,経過年数と強度の関係についての報告は地際の部材を対象としたものでも少なく,接合部になるとほとんどありません。

 したがって,通常は防腐処理(加圧注入処理)をして使用することになるのですが,この防腐処理についても,10年経過後に被害度2.5に達していないという報告2)があるのみで,こちらも強度的な考察がされているものではありません。

 以上の理由から現状では,「この木製防雪柵は何年持つのか?」という質問には,「防腐処理をすれば10年以上は見込めると思われます。」と答えざるを得ませんが,これでは無処理で使いたいという要望には,到底応えることができません。

 強度的に耐久性を推定する取り組み

 経過年数と強度の関係は,実際に屋外に設置して経時観察することで,もっとも信頼のおけるデータが得られますが,十数年にわたる歳月を要してしまいます。また,構造物から強度測定用試験体を回収するとなると,構造物を解体する必要があり,大がかりな作業を伴います。

 そこで林産試験場は,設置年が判明している道内の木製土木構造物を調査して得られた被害度と経過年数の関係ならびに,野外に長期間暴露した丸太材の被害度と残存強度の関係から,経過年数と残存強度の関係をとりまとめて,マニュアル「耐久性を考慮した木製土木構造物の設計」3)を作成しました。

 しかし,この設計手法では接合部の強度を丸太材の強度低下から推定しているため,腐朽した接合部の強度を実測して確かめる必要があります。そのためには長期間暴露して腐朽試験体を作成するか,実際に施工したものから回収しなくてはなりません。いずれにしろ,十数年にわたる歳月を必要としてしまいます。

 そこで今回,実験室において強制腐朽処理をした接合部試験体を用いて,腐朽の程度と強度の関係を得る試みを行いました。

 接合部における耐久性の予測

 写真2は防雪柵の接合部を想定した試験体です。この試験では,腐朽パターンをボルト頭側から進行すると仮定して,他の部位から腐朽が進行しないように木口および裏側はエポキシ樹脂で封印しています。

 写真3は防腐処理を行わない状態で8か月間強制腐朽処理をした後の様子です。腐朽菌が試験体の全体を覆っていました。これらの試験体のボルト周辺には激しい腐朽が生じており,局所的に見れば被害度3ないし4と判定される状態でした。


写真2 防雪柵の接合部を想定した試験体    写真3 強制腐朽処理の様子


写真4 めり込み試験の様子

 この試験体を写真4のように防雪柵で実際に使用する座金を用いてめり込み試験を行い,接合部の強度を測定しました。この強度試験によって被害度と強度の関係を求めたところ,被害度4の状態でも防雪柵の接合部として設計上必要な接合強度を有していました。すなわち,今回の腐朽パターンについては,接合部が被害度2.5を超えた状態になっても,防雪柵としての機能を果たすことがわかりました。

 おわりに

 腐朽の進行は設置環境や部材の配置によって左右されますので,他の腐朽パターン(木口からの腐朽など)についても検討しなくてはなりません。それらのデータと併せて,防雪柵の耐用年数の予測を行う予定です。

 今後は,防雪柵のように屋外で木材を構造材として利用したいという要望が増えていくことが予想され,そのたびに耐用年数が問われると考えられます。そのためには接合形態別に腐朽した場合の強度データが必要になりますので,早急に強制腐朽を用いた推定手法を確立し,「何年もつのか?」という疑問に対して明確に答えられるように研究を進めたいと思います。

 参考資料

1) (社)日本木材保存協会:“木材保存学入門”,39 (1992).

2) 日本木材防腐工業組合:“加圧式保存処理木材の手引き”(2004).

3) 森 満範:耐久性を考慮した木製土木構造物の設計について,林産試だより,12月号(2004).

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