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林産試だより2006年3月号 NC木工旋盤の開発

 

NC木工旋盤の開発

技術部 機械科 橋本 裕之

 はじめに

 木材を回転させながら刃物をあてて加工する機械に木工旋盤(せんばん,“木工ろくろ”とも呼ばれる)があります。その刃物を通常の固定式バイトから高速回転するチップソーに替えると加工時間が短くなるだけでなく,より細く,より長い形状に加工できるようになります。さらに,刃物の動きをパソコンで制御するとNC(Numerical Control:数値制御)加工機と呼ばれる自動装置になります。これが林産試験場で開発したNC木工旋盤です。

 加工例

 NC木工旋盤による2つの加工例を写真1に示します。  右側の“木の卵”は,外径25mm長さ37mmで1個当たりの加工時間は約30秒です。広葉樹でも針葉樹でも加工時間に差はありません。
 加工に先立ち,卵形をデザインするソフトウエアを作製し,形状を検討しました(図1)。卵形は楕円形を変形させたもので,変形の程度により球に近い形や細長い形になります。卵らしさを感じるような形状データを求めました。
 もうひとつの“木のランプ”は直径27mm高さ45mm,加工時間は約3分です。直線と円弧を組み合わせてデザインしました。薄い傘の外周部分の厚みは約0.5mm,一番細い部分では直径6mmです。


写真1 加工例(左:木のランプ,右:木の卵)  図1 自作ソフトウェアによる卵形のデザインの様子

 NC木工旋盤の仕様

 開発したNC木工旋盤の全景を写真2に,構成を図2に,仕様を表1に示します。C軸上で回転する材料は,X軸とZ軸からなる平面内を自由に運動するチップソーによって加工されます。


写真2 NC木工旋盤の全景


 なぜ加工時間が短いのか?

 加工が速いのは,刃物にチップソーを用い,その駆動に市販のハンドグラインダーのモーターを用いて高速回転(12,000rpm)を与えているからです。高速回転によって一刃あたりの切り込み量が少なくなり切削抵抗を減らすことができます。切削抵抗が減ると一度に大量に削り取ることが可能になるので刃物を何度も往復させて少しずつ削る必要がなく短時間で加工ができます。本装置では1回のパス(刃物の送り動作・軌跡)で形状が出来上がります。

 どれくらい細い加工ができるのか?


写真3 細い加工例

 細く加工したサンプルを写真3に示します。これは30mm角の棒から直径1mm長さ10mmの棒を削り出したものです。加工方法は,チップソーを材料端において直径1mmの位置に固定したまま横に10mm移動させただけです。加工時間は数秒でした。同じ加工をバイトで行うと材料に大きなねじれの力が作用して折れてしまうため,このような形状を削り出すには細心の注意を払いながらほんのわずかずつ加工しなければなりません。

 生産性は?

 C軸を中空にしたので長尺の棒材を差し込んで連続的な生産ができます。また,棒材の固定には二ツ爪チャックを用いているので材料は角棒のままで構いません。
 C軸内には,シャープペンシルのようなノック式の送り機構を備えており,エアーシリンダーの往復動だけで材料を送ることができます。
 従って,角材のままC軸に挿入すれば材料が無くなるまで同じ加工を繰り返すことができます。市販されている棒材のストック装置と組み合わせることで無人稼動が可能になると思われます。
 角棒の残りが約200mmになるまで加工が可能なのでチップソーの厚みを考慮すると長さ1mの角棒から長さ45mmの木のランプを17個生産することができます。

 デザイン用と加工制御用のソフトウエアは何を使うか?

 現在のところ加工制御プログラムはN88BASICで記述したものを使用しています。市販のCAD/CAM(Computer Aided Design/Computer Aided Manufacturing)ソフトやCNC(Computer Numerical Control)ソフトを利用することは可能ですのでお問い合わせください。

 複雑なソフトを使わない方法はあるのか?

 CAD/CAMソフトなどを使わずにイメージした形状を簡単に加工したいという要望もあります。例えば方眼紙に描かれた形状をスキャナーでパソコンに取り込み,画像処理を行って加工データを作成する方法などが考えられます。このようなソフトウエアの開発に協力してくださる企業がありましたらお知らせください。

 装置の価格はいかほどか?

 開発装置の仕様では部品費だけで100〜200万円ほどです。加工品のサイズによっては,より大きな装置が必要となるためやや高くなりますが,小さなサイズでは安くできると思われます。一例として参考にしてください。

 おわりに

 チップソーを用いたNC木工旋盤は切削抵抗が非常に小さいことと,本体価格が抑えられたことから,従来では考えられなかったような低コストと短時間での加工が可能になると思います。本装置が木材産業の発展に少しでも寄与できれば幸いです。

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